釣りは老若男女問わず誰もが気軽に楽しめるレジャーです。でも、だからこそ「他人に迷惑をかけない」「譲り合う」といった、他者を尊重する気持ちが大切。ただその人その人によって迷惑にならない尺度が異なったり、マナー違反に対する捉え方に差があるのも事実です。こういった認識の違いがモラルの差となって表れ、相手に不快感を抱かせてしまうケースが少なくありません。まさに今、釣り場ではそういった各人のモラルが試されていると言えるのではないでしょうか。
わざわざ隣のつり革につかまる人の心理
例えば地下鉄や電車に乗っているとき、空席を見つけられなかったあなたはつり革につかまっています。すると、とある駅で乗り込んできた乗客が、それほど混雑していないにもかかわらず、なぜかすぐ隣のつり革につかまりました。相手の息づかいが感じられるくらいの距離感にあなたは心なしか不快感を覚え、そそくさと1つ隣のつり革へ移動する—。きっと誰でも1度や2度、こんな経験があるのではないでしょうか。こういったケースに遭遇したとき、人はたいてい不快な、あるいは不安の感情を抱かずにはいられません。それはなぜか。 見知らぬ人にパーソナルスペースを侵されたからです。
パーソナルスペースってなに?
パーソナルスペースとは、不快感や不安感を感じない他人との距離のこと。米文化人類学者のエドワード・T・ホールの定義はおおまかに以下の通りです。
密接距離…ごく親しい人にしか許されない距離。おおよそ0〜45cm
個体距離…相手の表情が読み取れる距離。おおよそ45cm〜1.2m
社会距離…相手に手が届きづらいが容易に会話ができる距離。おおむね1.2〜3.5m(※)
公衆距離…複数の相手が見渡せる距離。3.5m以上
この定義に従えば、見知らぬ他人に対しては「社会的距離」を保っておけば問題ないと思われます。ですが、これをそのまま釣りに当てはめることはできません。なにしろ釣りは大抵4〜5mほどある長いサオを扱うので、釣りにおけるパーソナルスペースは必然的にもう少し大きくならざるを得ません。では釣りで最低限保ちたい距離感、釣りのパーソナルスペースとは一体どのくらいなのでしょうか。
自分が「嫌だな」と感じるか否かが目安
釣りのパーソナルスペースは定義付けが難しい問題です。なぜなら不快と感じるパーソナルスペースは人によって差があるからです。パーソナルスペースの大きさや形は男女によって、あるいは民族や社会文化の違いなどでも差があると言われています。そこで基準になりそうなのが、自分自身がな「嫌だな」と感じるかどうか。自分が不快に感じる距離感なら、相手もそう感じているかもしれません。もちろん特定の釣り場や釣り物によっては、肩が触れ合うほどの間隔でサオを出すのが当たり前の場合もあるでしょう。そういったケースでは、ローカルルールに従うのが無難です。しかしそれら一部の特殊なケースを除けば、自分が不快に感じるのかどうかを目安にしておけば、相手に対しても不快な思いをさせずに済む可能性が高いのではないでしょうか。もちろん先行者がいるときは、入釣時にあいさつして、気持ちよくサオを振りたいものです。