一般的な船釣りよりも深い場所で大物や高級魚を狙う中深海ジギング。前回の基礎編に続き、今回は中深海および深海といった非常に深いレンジに生息するジギングの対象魚について、具体的な攻略法を解説する。
(林 誠)
<ライトキンキ編>
手軽に狙えるライトキンキ
まずはライトキンキについて。この釣りは、高級魚のキンキをスローピッチジャークで手軽に狙う釣りである。通常キンキは400m以深にいるが、6月中旬〜8月下旬は水深250m前後まで浮上するので、格段に釣りやすくなる。それほど水深が深くないため、スローピッチジャークのブリ用タックルが流用でき、ライン交換するだけでチャレンジ可能だ。一方、ややハードルが高いのが深海ジギングである。スーパーディープと呼ばれる水深400〜900mを狙う釣りだ。主なターゲットは、水深400〜500mでアブラガレイやキンキ、メヌケ、水深500〜700mでメヌケやアブラボウズなど。過去には8kg超えのメヌケや57kg超えのアブラボウズも上がっている。特に〝深海の主〟と呼ばれるアブラボウズを生で見て、ぜひその姿に圧倒されてほしい。
中深海&深海ジギングの4大ターゲット
【アブラガレイ】
東北以北の太平洋やオホーツク海の水深200〜500m付近の海底に生息。頭や口が大きく、歯も鋭い典型的なフィッシュイーター。寿司のエンガワの代用品として供されることも。最大1mほどまで成長する。
【キンキ】
別名キチジ、メンメ。オホーツク海や日本海の水深150〜1200mの大陸棚に生息。日本海にはいない。全般に小型は浅場に、大型は深場にいて、季節により浅場と深場を移動する。脂乗りが良く非常に美味な高級魚。
【メヌケ】
太平洋の千葉県以北、北海道〜島根県の日本海の水深200〜1000mに生息。最大60cm以上になる。漁獲すると水圧の関係で眼が飛び出る(眼抜け)のが名前の由来。バラメヌケやコウジンメヌケなど種類がある。
【アブラボウズ】
「深海の主」と称される大型魚。最大で1.5mを超える。三重県以北の太平洋の水深約400〜1000mに生息し、日本海にはほとんどいない。身に脂が多いのが名前の由来。成熟するにつれ濃い灰色に変わる。
外道をいかにかわすかがライトキンキの醍醐味
それではライトキンキについて解説する。キンキのいる水深250m付近には、アブラガレイやカラスハモなどが生息している。これらをかわして本命を釣り上げるのが、この釣りの醍醐味(だいごみ)だ。ジグは水深や潮流を考慮して選ぶが、軽すぎるとジグが今どれくらいの水深にあるのか把握できないだけでなく、アクションさせても潮の影響でほとんど動かず、オマツリもしやすくなる。この釣りは2枚潮、3枚潮が当たり前で糸ふけが出やすく、いかにして糸ふけ減らしジグをアクションさせるのかが決め手になる。そういった意味でも、軽すぎるジグはNGだ。
ポイント到着後、まずは水深と同じ重さのジグ(250mなら250g)を試してみよう。着底の感触がフワフワするようであれば、2枚潮、3枚潮でラインスラックが出ている状態なので、もう少し重いジグに替えるといい。基本的には底から約3m上までの間を丹念に探るのが定石。ラインは1〜1.5号を最低600m、できれば1200m巻いておきたい。これは前回の基礎編でも述べたとおり、高切れしたときの対策でもある。
基本的なロッド操作について
どんな水深でも基本的には底付近をゆっくり誘う。底から離しすぎたり、強くロッドをリフトすると、キンキより先にアブラガレイが食い付くので注意したい。キンキの誘いは「優しくゆっくり」が基本と覚えておこう。最も多く当たりが出るのは、ロッドを上げきった時や、フォールしきった時。とはいえ、常にこういったタイミングで当たる訳でもないので、あらゆる状況でも合わせられるよう集中しておきたい。基本操作は、着底後に糸ふけを確実に取るためにまず20〜30m巻き取り、そこから再度着底。釣りはここからがスタートになる。糸ふけを取らずに釣り始めると、当たりが取れないなど不都合が多いので、糸ふけは確実に取っておきたい。中深海ジギングのロッド操作は以下の通り。
❶サオ先を水面ギリギリまで下げる。
❷リールハンドルを3時の位置にセット。
❸ロッドを持ち上げると同時に左肘でロッドのバットエンドを抑え込むように下げる。
❹ロッドティップを最も高い位置まで上げて止める。
❺ゆっくりロッドを下げ、水平付近で止めて当たりの有無を確かめる。
❻当たりがなければハンドルを1/2〜1/4回転巻き、再び❶から一連の動作を繰り返す。
この操作方法は、中深海や深海で重たいジグを操る際に身体的な負担を減らせるので、ぜひ身に付けたい。この動作を繰り返しても当たりがないときは、底から30〜50m巻き上げて再度ジグを着底させる。巻き上げ量は、1回のしゃくりでハンドル1/8〜1回転まで。食いが悪いときは1/8回転、食いが立っているときは1回転巻く。ロッドを下げるときにリールを巻くのは、ジグが落ち過ぎるのを防ぐため。
テンションを緩める深海独特のフッキングとは
アクションの種類としては、「小さく細かくしゃくる」「止める」「大きくゆっくり上下させる」の3つが基本。これらを組み合わせて魚の食い気を誘う。
少しねちねちした釣りになるが、ジグがリフトしたときや、弾ませるように動かしたときに食ってくることがあるので、アクションの組み合わせは重要だ。そして最も重要と思われるのが、水深が深くなればなるほど難しくなる〝合わせ方〟である。
中深海の釣りでは、ロッドを立ててフッキングしてもテンションが掛かりにくく、リールを巻いてフッキングさせる方が確実だ。一方、深海の場合は、また違った合わせ方が要求される。仮に水深500mの底付近で当たりがあったとき、普通に合わせてもフックまでテンションは伝わらない。では一体どうすればいいのか?
中深海では「ロッドを立てて合わせる」のではなく、逆に「ロッドを下げてテンションを抜く」のが正解だ。水深が深くなればなるほどジグは重い物を使用するが、ロッドを下げてジグを落とし込み、ジグ自体の重さを利用してフッキングさせるのである。後はリールを巻いて糸を回収する。
深海ジギングにおけるフックの正しい選び方
ハリもこの釣りに合ったものを選択することが重要になる。筆者が愛用しているのはゼスタ社のWクロウディープチューンや、シャウト社のTCスパーク、オーナーばり社のカルティバジガーライトシワリなど。
キンキなどの魚は回転しながら浮上してくるので、フックはベアリング付きにするか、自作する場合もベアリングやローリングサルカンを付けよう。
ジグは重くなればなるほど大型化するので、フックのアシストラインは長い方がマッチし、アクションも安定する。アシストラインは長いほど、ジグの着底とフックの着底に時間差が生じるので根掛かりが避けやすくなる。
ただしフロントとテールのフックが絡まない程度の長さにとどめる方が無難だ。フックサイズは対象魚に合った物をフロントとテールに付ける。
アピール力のあるロング系、オールマイティな平型
ジグはアピール力のあるロング系やセミロング系、オールマイティに使え水平姿勢になりやすい平型ジグに分けられる。朝イチはアピール力のあるロング系で様子をみて、食いが渋ければ平型ジグを試したい。
カラーはいろいろ種類があって悩ましいが、基本的にはグローカラーや発光量、グローの配置パターン(以下、グローパターン)で決める。私が1投目に使うのは大抵、ディープライナー社SPYVゼブラグローだ。これで反応がなければ全面発光のオールグローに替え、最後はヌードスポット(グロー)イワシに変更する。
概して筆者は徐々にグロー部分を減らしていくパターンが多い。それでも反応がなければ、ジグの形状を変え、前述のように再びグローパターンを変えていく。
グローパターンを変えるのは、深海では「発光」が捕食に強く影響しているから。キンキなどの深海魚は腹腔膜が黒く覆われおり、発光機能を有するベイトを捕食してもお腹が光らないようになっている。お腹が光ると、大型の捕食者に狙われる可能性が高くなるのだ。
深海では、グローパターンは非常に重要な鍵を握っており、これさえマッチすれば必ず反応があると言ってもいい。つまるところ、ライトキンキは「ジグの形状」「グローパターン」「ロッド操作」「リールの回転数」を組み合わせ、その日のヒットパターンを探る釣りだともいえる。
<深海ジギング編>
深海ジギングで “違和感” を感じ取る必要性
ここからは、ライトキンキよりもさらに深い深海ジギングについて。
9月以降のキンキは水深450m付近を狙うが、この水深にいるキンキは型が良く、11月後半には40cm級、1kg超えが出る。
タックルはライトキンキ用が流用可能だが、最大1mほどになるアブラガレイも来るので、メインラインやショックリーダーは1ランク上げた方がいい。
釣り方は基本的に中深海ジギングと同じ。ただ水深が深くなるぶん、ライトキンキのような「ココッ」という当たりで合わせるというよりも、リフト&フォール時の重みの違いだったり、ロッドティップの戻り方の変化といった“違和感”で合わせるケースが多くなる。
気を付けたいのが、潮の流れで膨らんだラインスラックの影響でテンションが掛かり、それをジグの重みだと勘違いしてしまうケース。こうなるとジグを一生懸命動かしているつもりでも、実際にはほとんど動いていなかったりする。
これはジグのウエートが合っていないことに起因するので、水深に適した重さのジグを使うのが正解だ。その上で“違和感”を感じ取れるようになれば、釣果はおのずと付いてくる。
ラインは細過ぎるよりも太めを選ぶ
メヌケ類やアブラボウズが対象となる深海釣りでは、根掛かりに十分注意したい。なにしろ水深500mよりも深い海の底で根掛かりによってラインが切れると、ジグを付け替えるだけで相当な時間のロスになる。ただでさえチャンスの少ない深海ジギングでは、そういった時間の浪費が致命傷になりかねない。
新ひだか町東静内沖や豊頃町大津沖で狙うメヌケやアブラボウズに関していえば、水深500〜700mであれば潮も速過ぎず、900g前後のジグで着底は可能。ただジグは幅広いウエートを用意しておけば釣果に結びつきやすい。
深海ではアブラボウズがいつ掛かってもいいように、メインラインは3号を使っている。ジグのウエートを重くしてラインスラックを減らせば、ラインが太くなったことで潮に流されやすくなる欠点をある程度カバーできる。他にジグを重くした方がいい状況としては、「ボトムタッチの感触が明確でない」「周りの人とラインが絡む」といったケースが挙げられる。
しっかり動かしてアピールする深海の釣り
深海は外道が少なく、ジグをしっかり動かしてアピールすることができる。そのためアブラボウズやメヌケは、しっかりジャークしてアピールし、フォールで食わせるセオリー通りのアクションが適切だ。
前述した通り、メインラインは太めの3号を使い、セミロング系やロング系に属するディープライナー社のSPYやSPYN、SPYVといったジグ(800g〜1kg)をガンガン動かしてアピールする釣り方がお薦めだ。
アブラボウズはカラスハモやソデイカなどを捕食しており、ロング系のジグでもシルエットが大き過ぎるということはない。前述のジグ3種はそれぞれフォール中の動きが異なり、アブラボウズにはSPYNが、メヌケ類にはフォールの動きがマッチするSPYVの実績が高い。
それでも中には平型のジグにばかり反応する日もある。平型ジグは横を向きやすく、フォールもヒラヒラ落ちる感じで、ロング系ジグとはひと味違った切れ込むフォールが特徴だ。
基本的に使うのはグロー入りのジグだが、グローパターンも釣果に影響を及ぼす。特にメヌケ類はソデイカや夜光虫、ハダカイワシやクモヒトデ(※いずれも発光機能を有する)などを捕食しており、グローカラーは非常に有効だ。ゼブラグローのジグや、ハダカイワシを模したディープライナー社のヌードスポットサーディンは、メヌケ類に対する実績が高い。
フックはフロントとテールに2つずつ付けてもOK。フックは大きい物を選ぼう。中深海同様、ローリングサルカン付きか、ショックリーダーとジグの間にベアリング付きスイベルを挟むといい。
バイト誘発の鍵を握るフォールの動き
次はジグのアクションについて。やり方は主に2つある。
1つは、水平までロッドを高く上げた後、ロッドを下げる際にラインが水中に引き込まれるスピードに合わせてラインを巻き取る方法。もう1つは、ラインが引き込まれる速度よりも早くロッドを下げ、フリーフォール状態を作って一瞬ジグを「フッ」と横倒しにし、バイトを誘発させる方法だ。
メヌケはフォールに対する反応が良く、フォールの時間を長く取ると釣果につながりやすい。より長くフォールさせるには、ロッドを上げた分以上にロッドを下げるといい。
全般に言えるのは、食いが悪いときはなるべくアクションを控えた方がいいということ。具体的には、フォール時はジグを暴れさせず、スーッと落とすことを心がけながら、フォール幅を毎回ジグ2個分、3個分と変えるやり方だ。こうすると控えめなアクションの中にも変化を与えることができる。最初は底から1~2mの間を丁寧に探り、徐々にタナを上げていく。
他の方法としては、(確実に糸ふけを取ることを前提にした上で)反発力の強いロッドで重いジグを使用する手法がある。相対的に重いジグは横倒しになりやすい。横倒しの時間が長ければ、その分だけアピール力は上昇する。
難点は、ジグが重くなるほど巻き上げが大変になること。どの方法を選ぶにしろ、ウエートやグローパターンの異なるジグを幅広く用意しておけば、さまざまな状況に適応しやすいのは確かである。