新緑芽吹くこの時期は、マイナスイオンあふれる渓流でヤマベと戯れるのにぴったり。初心者でも釣果を得やすいエサ釣りと、ゲーム性の高いルアーによるヤマベ攻略法を解説する。

ヤマベとは

サクラマスが降海せず、河川で一生を過ごす河川残留型のこと。天然魚は関東以北の太平洋、日本海、オホーツク海側の河川に生息。標準和名はヤマメだが、道内ではヤマベと呼ぶのが一般的。測線上に青紫の楕円の斑紋、パーマークが並ぶのが特徴で、「渓流の女王」と称される。河川残留型の大半は雄で、雌はふ化から1年半の河川生活をへて海へ下り、1年後の春に大きく成長しサクラマスとなって生まれ育った川へ戻る。道内では9月から10月にかけて産卵する。

釣果優先ならこれ
エサ釣り

エサ釣りは通常、延べザオを使用する。リールを使わないタックルは軽量で、初心者も扱いやすい。仕舞寸法が短く、コンパクトに収納できるので持ち運びも楽だ。リールでやりとりできないぶん、想定外の大物が掛かった場合はベテランでも対処が難しい側面も。

ブドウムシにヒットした良型のヤマベ
川を遡行しながらヤマベを狙うエサ釣り師

タックルと仕掛け

サオは3.6mが扱いやすい。長さの調節ができるズームザオがベター。素材はグラス製とカーボン製があるが、コスパはグラス製が優位。魚の食い込みを重視するならサオ先は柔らかい方がいいが、初心者には当たりが取りやすく操作性がいい硬めがお薦めだ。

ハリはハリス付きのヤマベバリ5〜7号など。なるべく小型を避けたい、あるいはエサの付けやすさを優先するなら7号が適切。

ミチ糸に付ける目印は、目立つオレンジや黄色など蛍光色が多く、セルロイド製とナイロン毛糸がある。オモリは中または2Bを2個程度。さらに軽いオモリをいくつか用意し、水勢や水深によって追加調整する。

エサ

主なエサはイタドリ、ブドウムシ、ミミズ、サシ、イクラの5種。イクラは低水温の開幕時に実績があり、ミミズは雨後や降雨時に適している。ブドウムシとイタドリは水生昆虫の活性が上がると食いが良くなる。

その日の状況により、場合によっては時間帯で食いのいいエサが変わることもあるので、エサは最低2、3種類を用意したい。

エサの付け方は、「通し刺し」「縫い刺し」「ちょん掛け」の3つが代表的。エサの種類ごとに適した付け方があるが、慣れないうちはすべて「ちょん掛け」でいい。食いが渋いときや大物狙いのときは、エサを2匹掛けたり、異なるエサを相掛けする方法もある。

ヤマベ釣りはエサの種類が豊富にある

テクニック

魚が潜んでいそうなポイントを見つけたら、やや斜め下流側に立ち、ポイントの少し上流へ仕掛けを投入する。するとエサが下流へ流れるので、動きに合わせてサオを下流側へスーッと動かす。サオは動かさず、上半身を固定したまま上体をひねって仕掛けを流してもいい。

このとき、糸にテンションをかけ過ぎるとエサが浮き上がり、逆に緩め過ぎると川底に引っ掛かるので、糸は“張らず緩めず”の状態を保つのがこつだ。

当たりは、糸が急にピンと張り詰めたり、目印がグイグイと水中へ刺さるのですぐに分かる。当たりがあったらサオ先を鋭く上方へ跳ね上げ、サオの弾力を生かしながら焦らずにゆっくりと魚を寄せる。

大きな魚が掛かったときはサオだけで応戦せず、魚の動きに合わせて釣り人も動いた方がいい。移動時は川底の岩や深みに気を付け、転倒しないように十分注意したい。

【ワンポイント】
エサを1種類に絞るならブドウムシがお薦めだ。なぜなら、ブドウムシは時期や水温、気温、天候、川水の濁り、活性の高さなど条件を問わず安定して釣れるから。手も汚れず、エサ付けもしやすい。

渓流釣りでは水中を流れるエサを目視しながら釣ることもあるが、そんなとき、白っぽいブドウムシは目立つので便利。エサが見えなくなったら、それは魚がエサをくわえた証拠なので即合わせよう。

ヤマベは、常に保冷剤で冷えたクーラーボックスに入れておけば2、3日は保存できる。余ったブドウムシは冷蔵庫に入れておけば1、2カ月程度持つ

エサ釣りお薦め釣り場

【 青葉公園付近が釣りやすい 千歳川

千歳市支笏湖を水源とする透明度の高い清流で、ヤマベをはじめニジマス、ブラウン、イワナ、アメマス、ウグイが生息する。8月21日〜10月31日は本流の根志越橋〜インディアン水車の間はすべての魚類が採捕禁止なので注意すること。

流路延長108kmと長い同川の中でも、比較的足場が良く、ウエーダーなしでも釣りが楽しめるのが千歳市内を走る高速道路(道央自動車道)周辺から青葉公園までの間だ。

ボサ下に魚が着いていることが多いので丹念に探ろう。1カ所で3、4回流して反応がなければポイントを移動しよう。

なお、千歳川は流れが速く水勢も強いので、川の横断や過度な立ち込みは危険。無理のない範囲で釣りを楽しもう。

足場のいい高速道路下

ゲーム性の高さを楽しむ
ルアーフィッシング

釣果はエサ釣りにおよばないが、少し離れた位置からキャストするので魚に警戒されにくく、ゲーム性が高い。水深が浅い場所や急流はやや苦手。キャスティングには少し慣れも必要。

ルアーフィッシングでヤマベを狙うアングラー
スピナーにヒットした20㌢超えのヤマベ

タックル

スピニング用の6フィート前後のライトアクションロッドが向く。ティップ(サオ先)は硬めの方がキャストしやすく、コントロール性も高い。メインラインはナイロン1号が適切。初心者は少し太めの1.5号にすると、糸よれが軽減でき快適に釣りができる。

ルアー

渓流で使用するルアーは、大別するとスプーン、ミノープラグ、スピナーの3種がある。スプーンは文字通りスプーンのような形をした金属板で、水の抵抗を受けてゆらゆら泳ぐ。小魚を模したミノープラグは、バルサ製やプラスチック製などがあり、フォルムや大きさ、比重の違いなどさまざまなタイプがある。スピナーは、水の抵抗を受けるとブレードが回転してフラッシングし、アピール性が高い。

渓流でのスプーンとスピナーの適正ウエートは3〜5g。銀ベースに赤や橙、青の他、赤金、金、黒も用意したい。ミノーは5cm前後を中心に、表層をきびきびと泳ぐフローティングや、沈みやすく中層や底層が狙いやすいシンキングを用意。カラーは赤銀、赤銀、橙、ピンクなど。ヤマメ、イワシ、サバなどのリアルカラーもいい。

テクニック

渓流では、魚は上流に頭を向けて泳いでいるので、下流側への警戒心は薄い。そのため斜め上流へルアーを投げるアップクロスキャストは、釣り人の存在を気付かれにくい。

大切なのはリーリングスピードで、川の流れよりも若干速くルアーを引くのがこつ。ルアーを引くのが遅いとルアーが流れにもまれて本来のアクションを発揮できず、逆に速過ぎると魚がルアーを追い切れない。

通常、ルアーを沈めたいときはサオ先を下げ、浮かせたいときは上げる。水深が浅かったり、流れが速い場合は、サオ先を下げると根掛かりするので、サオ先は上向きに構えよう。

【ワンポイント】
渓流でスプーンをしっかり泳がせるのはある程度慣れないと難しく、高価なミノーは根掛かりでのロストが怖い。そこでお薦めなのがスピナーだ。

キャストしてリールを巻けば自然とブレードが回転すりので、特にテクニックは必要なない。、初級者でも魚が釣れやすく、価格も手ごろだ。

一般的なスピナーにはトリプルフックが付いているが、ハリ数が多いと根掛かりしやすいので、ニッパーなどでフックを切り外し、スプリットリングを介してアシストライン付きのシングルフックに替えよう。

こうすることで根掛かりを激減させられる。その際、装着されていたトリプルフックよりも若干大きめを選択するとバランスが崩れにくい。

ルアーお薦め釣り場

【 道南有数のヤマベの名川 せたな町馬場川

魚種はヤマベ主体にアメマス、イワナ、ウグイなど。河口から300mも上がればヤマベが釣れる道南有数の名川だ。数はそれほど期待できないが、比較的良型が釣れることで知られる。

開けた場所が多く、落ち込みや深み、瀬、出合いなど渓相が変化に富み、ルアーで狙うと楽しいフィールドだ。

ルアーは3g、5gの銀系スピナーを中心にスプーンも使用する。深みではヤマメカラーや赤金5㌢程度のシンキングミノーで狙う。

深みには40cm超えのアメマスが着いていることもある。不動橋近くの魚道付きえん堤周辺は魚の着きがいい。上流へ上がると川幅が急に狭くなるので、下流域や中流域が狙い目だ。クマに注意。

下流からヤマベが狙える馬場川