長かった冬が終わりに近づくと、大物アメマスを夢見るアングラーが十勝川下流域に集う。ただ広大なフィールドはポイントを絞るのが難しく、雪解け増水期と重なることもあり、トロフィーサイズを手にするハードルは高い。地元のベテラン、白土高利さんに十勝川下流域の攻略のヒントを聞いた。
(白戸 高利)

筆者PROFILE
バリバス・パズデザインのフィールドテスター。スミス・ハルシオンシステムではフィールドスタッフを務める。

 

道東の大河、モンスターが潜む十勝川

十勝川は十勝岳を水源とする一級河川で、全国第6位、道内第2位の流域面積を誇る。十勝岳の源から多くの支流と交わり、十勝ダムなどいくつかのダムを経由して太平洋へ注いでいる。北海道を代表するそんな大河には、広大な川で成長したモンスター級のトラウトが数多く生息する。広々とした下流域でフルキャストする解放感は「たまらない」の一語。いつどんな魚がヒットするか分からない緊張感も感動を大きくする。十勝川水系には数多くの魚種が生息しており、アメマスは無論、レインボートラウトやブラウントラウト、ヤマメ、オショロコマ、そして日本最大の淡水魚であるイトウもいる(※淡水域でサケやサクラマスを釣るのは違法なのでご注意を)。

 

スプーンの長所と狙い方

ルアーの狙い方はさまざまで、好みのルアーによっても異なるが、基本的にはミノーやスプーンが中心。スプーンを使用するメリットは大きく分けて、①低価格、②飛距離、③手返しの速さ、の3つある。  ルアーは消耗品としては高価といえ、新品が1投目で根掛かりするとテンションは激落ち。1日に何個もルアーを紛失すると、精神的にも経済的にも痛い。しかしスプーンは多くの釣具店で取扱っていて入手しやすく、ミノーなどに比べると価格もリーズナブル。重さや形状、カラーバリエーションも豊富なので、ローテーションしながら狙うと効果的だ。水深があり、重く複雑な流れの本流域で使うとルアーが浮き上がってしまうことがあるが、そんなときにスプーンで川底を探るならリーフタイプがお薦め。名前の通り葉っぱのような形状をした細身のボディーと波打つようなカーブが特徴で、細身のボディーはキャスト時の空気抵抗が少なく、ロングキャストが可能。沈下スピードも速くて浮き上がりにくく、本流域の重たい流れに最適だ。「アメマスは底を釣れ」と言われるほど底に定位していることが多いので、これで川底を転がすようにしながら、小さくリフト&フォールを繰り返そう。カラーは、アメマスが好むピンク系やチャート系が必須だ。

(左上から)SMITHピュア9.5g、13g、18g
(右上から)SMITHヘブン9g、13g、16g
(右上から)SMITHバッハスペシャルJAPANバージョン10g、18g、24g。(左上から)SMITHニアキス9g、12g

 

すれた魚に効くスピナー

多くのアングラーが訪れると、魚がすれてしまい「いるけれど釣れない」というケースはよくあるパターン。そこで使いたいのがスピナーだ。筆者はこれで湖や海でも釣果を上げている。早春は雪代の影響で濁りのある日が多いが、スピナーのブレードが回転すると水中でフラッシングして音も鳴り、アピール力が高い。釣り方は簡単で、ただ投げて巻くだけ。初心者にも扱いやすく、一定のスピードで巻くことで威力を発揮するので、その点に〝全集中〟してバイトを待とう。  川底を狙う選択肢としてバイブレーションも忘れてはならないルアーの1つ。名前通りブルブル振動しながら底を泳ぐが、空気抵抗を受けやすくロングキャストには不向き。使うポイントを見極めて使用したい。

 

広大な十勝川下流域に適したタックルとは

ロッドは8フィート台のロングロッドがお薦め。リールはスピニングもベイトもHG(ハイギア)をお薦めするのは、流れが重く、ラインが引きずられてルアーの動きに悪影響が出る前に、素早く糸フケを回収する必要があるから。早春は突然強風が吹き荒れることもあるが、そんなときに重宝するのが、ベイトリールのDC(デジタルコントロール)ブレーキだ。これが装備されていると、強風化でも安定したキャストが可能になる。

ラインはPEまたはナイロンを状況によって選ぶ。具体的には、晴天で暖かく、風が弱いときはPEを使用する。PEはロングキャスト可能で、伸びが少ないのでラインやロッドを通して水中の状況を把握しやすい。ただ悪天候や低気温で風の強いときは、ラインが凍ってブレイクの危険が高まるので注意しよう。ショックリーダーに求められる性能は、氷点下の気温、低水温といった厳しい条件下でもしなやかさを保ち、ヒットした魚の動きに対する追従性があること。結節部分で硬化切れしないのも大切だ。また低気温でガイドやラインが凍結すると、ガイドとの摩擦でラインが傷むので、まめなメンテナンスも重要。フッ素コート剤でコーティングすると、ラインブレークの危険性を軽減できる。ナイロンラインにも効果的なのでぜひお試しを。

十勝川下流域ポイント紹介

【十勝川河口域】
河口は海と川を行き来する魚の出入口で、見逃せない超1級ポイントだ。海から遡上したばかりのグリーンバックの魚体が美しいアメマスなど、魚が汽水域に集まるのは太陽光で植物プランクトンが増え、格好のエサ場となるから。海水に酸素が多く含まれていることでベイトや甲殻類も集まり、それを狙って大型魚も姿を現す。

【茂岩橋周辺】
周辺はアメマスが好むストラクチャーや地形の変化に富む。特に橋脚下は多くのストラクチャーがあり、格好の着き場だ。ただしアクセスしやすいポイントなのでアングラーが多く、魚に対するプレッシャーは相当高い。

【浦幌十勝川】
自然のままの左岸に比べ、右岸は護岸化されている河口付近  浦幌町を流れる一級河川で、十勝川河口付近の派川(本流から枝分かれしてそのまま海へ流れ出る川)である。かつては十勝川本流だったが、河川改修によって本流から分離され、浦幌十勝川に改名された。十勝川河口域から車で数10分の距離なので、十勝川で魚の反応が悪いときや、雪代で釣りにならないときの逃げ場としても利用できる。お薦めは河口域。

自然のままの左岸に比べ、右岸は護岸化されている河口付近

 

本流ウエーディングでの注意点

本流は水勢が強く、足元から急に深くなる場所もあるため、不用意なウエーディングは禁物だ。ディープウエーディングで少しでもポイントに近づきたい気持ちは分かるが、早春は直径数mもある巨大な氷の塊が上流から音もなく流れて来ることがあるので、常に周囲に注意を払おう。

 

十勝川釣行にお薦めのお立ち寄りスポット

ハルニレの木

2本の木が一体化した樹齢約140年のハルニレの大木が、十勝川下流左岸にある。雨の日も風の日も離れることなく寄り添う2本の木は、「永遠の愛を誓い合った恋人のよう」と評されるカップルに人気の撮影スポットだ。春夏秋冬それぞれの表情が味わい深い。

2本の木が一体化した珍しい「ハルニレの木」

朝日堂

豊頃町市街地にある老舗人気菓子店。甘さ控えめのクリームが絶品のアメリカンドーナツは長く町民に愛され、観光客にも人気。店主は大の釣り好き。
●中川郡豊頃町茂岩本町30
●☎015-574-2402
●水曜〜日曜午前9時〜午後8時(毎週月曜、火曜定休だが祝日の場合は営業)

クリームがたっぷり入った朝日堂の名物「アメリカンドーナツ」