日本海ではアブラコ、ホッケ、ソイ、カジカ、クロガシラといったいわゆる五目釣りが楽しめる。狙いやすく、大物もゲットできる「投げ釣り」を中心に、五目が釣れるメカニズムや、狙いの釣り場などを紹介。
(本紙取材班)

 

はじめに

釣り場を移動することなく、釣り座を構えた場所で5種の魚をゲットできたら、こんなに楽しい釣りはないだろう。しかも、すべての魚が35cm以上の良型なら、何の不満もないはずである。そんな釣りが楽しめるのがこれからの季節だ。ベストは11月上旬および中旬。後で触れるが、ホッケの岸寄り直前が最も釣れる確率が高い。

 

効率がいい秋の五目釣り

春の五目釣りは、投げるポイントを変えたり、場所を移動したり、釣り方を変えるなど、5種をそろえるのに結構手間がかかる。これに対して秋は面倒な手間がかからない。

投げザオを3本ほど、角度や飛距離を変えて打ち込むだけで5種がそろってしまう。魚には「食べ分け」「住み分け」のルールがあり、本来なら狭いエリアに5魚種が同時に集結するのはかなり難しい。それが起こるというのは一体どういうことなのか。まずはその理由をつまびらかにしたい。

 

秋に五目釣りができるワケ

春は冬季の低水温からゆっくりと時間をかけて海水温が上昇する。3月下旬の「春分の日」を境に、昼が夜よりも長くなって日照時間が増え、気温も徐々に上昇していく。

これに伴い沿岸部の水温も緩やかに上昇する。そういった変化の中で、まず始めにホッケやクロガシラ(マコガレイ含む)が岸寄りし、次にソイ、アブラコが現われ、最後にカジカが顔を見せるというプロセスをたどる。

ところが秋は9月下旬の秋分の日以降、夜の時間がどんどん長くなり、気温も夜を中心に冷え込んでいくため、水温も急激に下降する。そのスピードは速く、春先が1カ月に2.5度のペースで上昇するのに対し、秋は約2倍の5度も下がる。

魚にはエサを食べる適性水温があるが、その期間は春に比べ半分にも満たない。もたもたしていると、活発にエサ取りができないほどの低水温になってしまう。

しかも困ったことに、秋は春に比べてエサの量が1/3〜1/4程度とかなり少ない。冬季に備え十分な栄養補給が必要なのにエサ取りする期間が短く、かつ量も少ないとなると、行儀よく順番待ちなどしていられない。

かくして多少の時間差はあるものの、同じポイントに5魚種が集結するという、釣り人にとってはありがたい現象が起こるわけである。

 

エサの量が少ない秋

なぜ春に比べ、秋はエサの量が少ないのか。エサの量を決定づけているのは、植物プランクトンの発生量だ。食物連鎖を低位から順に表わすと、おおよそ次のようになる。

植物プランクトン
  ↓
動物プランクトン(オキアミ類、エビ・カニなど甲殻類の子ども)
  ↓
稚魚や甲殻類の大人
  ↓
中〜大型魚

つまり植物プランクトンは、海にいるあらゆる動物を養うための基(もと)になる重要な食料ということになる。ちなみにホッケの場合、40cmに成長するのに必要な植物プランクトンの総量は1匹あたり約1トンと言われている。

植物プランクトンは、夏季はほとんど増殖しない。これは植物プランクトンの細胞を造るために必要な炭素がこの時季、海中にほとんど含まれていないからである。

炭素は二酸化炭素として海水に溶け込んでいるものを、太陽光のエネルギーを使って酸素を切り離し、単体として用いるが(これを「光合成」という)、海水温が高いと海中に溶け込んでいる二酸化炭素がどんどん大気中に放出されてしまうため、増殖しようにも絶対量が少なく増殖できない。

魚の活動に必要な酸素も、高水温によって次々と海中から出ていってしまう。そのため夏季、水深の浅い磯ではエサがない酸欠状態となり、魚影が消えてしまうのである。

これが秋になると、状況が一変する。気温の低下により水温が下降していくと、それに伴って海水が大気中から酸素や二酸化炭素を吸収するようになる。

こうして植物プランクトンが増殖する条件が整うが、残念なのは夜の時間が長く、日中の時間が短いため、春に比べて十分な光合成を行える時間が少ないこと。その違いが春と秋の植物プランクトンの発生量の差、ひいてはエサ全体の総量の差となって現われる。

 

狙うべき場所と釣れる条件

ではどのような場所を選ぶのがいいのか。狙い目なのは、藻場がある所や川水が流れ出している場所である。

藻場には根魚のアブラコやソイ、クロガシラが寄り、河口にはカジカが寄る。ホッケは藻場を中心に岸寄りするので、このような条件がそろっている場所は、チャンスが大いに広がる。条件としては、河口近くなら波1枚程度、藻場がある所では波1、2枚程度が良い。

時間帯は朝夕のまづめを挟んだ前後の時間帯。1日のうちでは午後3~10時ごろと午前3〜10時くらいまでが良く、その両方もしくは片方を狙っていくことが重要となる。

まづめ時を狙ってサオを出すといい

 

タックルと仕掛け

仕掛けはカレイ仕掛けとイカゴロ仕掛けの2種類を用意する。一般的な胴突き2本バリ仕掛けも悪くはないが、クロガシラ狙いには不向きのため、長い下バリが底をはうカレイ仕掛けは必須だ。

実は、カレイ仕掛けはこの時季最も釣果が期待でき、他魚種もよくヒットする。この時季は上〜中層よりも底層の方が水温が低く、魚の多くは海底でエサを取るため、底バリに掛かることが多い。

なお、カレイ仕掛けにコマセネットなどを装着すると、魚を集めやすく、当たりが出るのも早いので効果的だ。  エサは、イカゴロ仕掛けの上バリはカツオやサンマの切り身、下バリはイカゴロで。カレイ仕掛けの上バリはカツオやサンマの切り身の他、エビやホッキ貝の切り身、下バリは生イソメや塩イソメなど虫類を付ける。

 

注意事

五目釣りで鍵を握るのはホッケの動向である。秋のホッケは、その年や海域によって多少の差が出るが、11月10日前後が岸寄りの目安になる。いきなり本格化することも多く、特に大きな群れが岸寄りするとホッケ一色となり、五目を狙うどころではなくなる。このため秋の五目釣りはホッケの岸寄り直前がベスト。ホッケは群れからはぐれて行動している個体を夜釣りで2、3匹ゲットできれば“御の字”という意識で望むといい。

 

五目釣りオススメ釣り場

神恵内漁港本港地区(神恵内村)

大きなワンドの北端に位置する。ワンドの最奥には水量豊富な古宇川が流れ出し、同港は海水と淡水が入り混じった汽水域となっている。このため陸上からのミネラルが豊富で、海底には数多くの藻場が形成されており、魚の寄り付きが良い。

お薦めは西防波堤の先端部付近。白灯台の下から突堤までの間が狙い目だ。ちょい投げから中投で藻場の周囲を狙う。高さ5mほどの胸壁があるため、西交じりの風が避けられるのが利点。北寄りの風が吹くと好漁になりやすい。

神恵内漁港本港地区西防波堤先端

厚瀬(あっちゃせ)漁港(島牧村)

北側の本目岬、南側の厚瀬崎に囲まれた港。海底の根は全般に荒く、藻場も多い。西防波堤の左側には小川も流れ込む。

お薦めは北防波堤先端にある白灯台前。広角度で打ち込めるのが利点で、沖方向へ投げるとソイ、アブラコ、厚瀬崎との間でクロガシラやカジカ、ホッケなどが来る。ただし投げる角度や距離によって、根がかりするので要注意。難点は胸壁がなく、風が強いと吹きさらしになる点。南交じりの風が狙い目となっている。

厚瀬漁港厚瀬地区北防波堤

 

狩場漁港虻羅地区(せたな町)

北側に虻羅トンネル前の大岩場、南側には南北に600mほど延びた稲荷岬がある。

海底は漁港の北側が荒根で、南側は砂地にバラ根。漁港内は砂地の海底にバラ根が連なっており、ところどころ根掛かりする。

お薦めは南防波堤先端から曲がり角にかけて(約80mの長さ)。防波堤の真下に奥行き20mほどのケーソンが沈んでいるため、20m以上投げて海底を狙う。南交じりの風のときが狙い目だ。

狩場漁港虻羅地区南防波堤先端

太田漁港(せたな町

漁港の内外とも荒根が連なっているが、南防波堤の左側に砥歌川の河口があり、漁港を中心に海水と淡水が混じり合った汽水域を形成していて藻場が多い。

お薦めポイントは、西防波堤先端付近。防波の延長線(やや港内寄り)と港内側を狙う。延長線上は沈み根が多く、根掛かりが激しいが、アブラコやソイなどが釣れる。

港内側は砂地にバラ根となっていて根掛かりは少なく、カジカやクロガシラ、ホッケなどが狙える。ただし、防波堤の真下から奥行き7mほどの海底にケーソンが沈んでいるため、7m以上投げる必要がある。北交じりの風のときが狙い目となっている。

太田漁港西防波堤先端

関内漁港(八雲町)

大きなワンドの右側に位置する。ワンド中央の一番奥まった所に水量豊富な関内川の河口があり、同港は海水と淡水が入り混じった汽水域を形成している。海底はワンド内が藻場、漁港の外海側が岩場に連結した荒根となっている。

お薦めは南防波堤の先端付近で、防波堤の延長線上でソイ、アブラコ、ホッケが、港内側でクロガシラやカジカが釣れる。防波堤の真下から奥行き7mほど海底にケーソンが沈んでいるため、7m以上の飛距離で狙う。難点は胸壁が無く、風が強いと吹きさらしになること。西交じりの風のときが狙い目となっている。

関内漁港南防波堤先端

 

おわりに

秋は天候の急変が多い。風向きや風の強さが変わったり、突然雨や雪が降ってきたりする。釣行前はもちろんのこと、実釣中もスマホなどを活用して、天気の動きをチェックし、安全第一で釣りを楽しんでほしい。