<阿寒川編>

想定のあるなしで変わるキャッチ率

釧路市阿寒川の有料区間の釣りは11月1日から禁漁となるが、原始の森を流れる清流のフライフィッシングで今シーズン最後のマッチ・ザ・ハッチを楽しむのは悪くない選択だ。

秋は6、7月のハイシーズンに比べるとハッチ(羽化)する虫が少なく、サイズも小さいので、フックサイズ#16〜#18の水面に浮くドライフライがメインになる。暖かな日中に、川面で小さなカゲロウやトビケラといった水生昆虫が飛んでいたら、緩やかな流れを観察してみよう。するとそういった虫に対し、トラウトがライズを繰り返していることがあるはずだ。

しかし、すぐにライズ目がけてフライを投げるのはNG。どのようにファイトし、どこでランディングするのかをあらかじめ想定しておけば、ファイトがよりスームズになり、キャッチの確率も大幅に増す。ランディングまでのファイトを想定しておくことは、釣りの重要なテクニックの1つなのである。

阿寒川は放流魚も多く、初心者でも50cmオーバーのニジマスが釣れる可能性が高いが、なめてかかるとラインを切られてしまうことも珍しくない。有料区間ではキャッチアンドリリースが義務付けられており、最終的にはすべてリリースしなければならないが、きちんと釣り上げてリリースしたいものである。

紅葉で色づく阿寒川。事前の想定がキャッチ率を上げる
放流魚でも強い引きを見せる阿寒川のニジマス

 

アウトリガーか、ルースニングか

阿寒川を釣る上で特別な攻略法というものは特にない。だが放流魚の場合、マッチザハッチを意識する必要はなく、基本的にはエッグフライやMSCのフライなど、管理釣り場で使われるパターンがお薦めだ。ただし、どれだけたくさんの水生昆虫がハッチしていても、放流魚は活性が上がりにくい特徴があるのでやっかいだ。

大型連休前は、トラウトが多く放流される傾向があるので、初心者に釣らせるにはそういったタイミングを狙うといいだろう。フライロッドは8〜9ftの#5前後が適切。長過ぎるリーダーはトラブルの元になるので、全長10ft以内にとどめよう。ティペットは細くても4X以上を使用したい。

放流魚はある程度時間が経過しないとドライフライに反応しないので、ルースニングや、アウトリガーでフライを沈めて釣るのが無難だ。アウトリガーは底を取りやすく、慣れると良く釣れるが、根掛かりが多くキャスティングの難易度も高い。

初心者や子どもはエッグフライのルースニングから始め、反応が無ければフライをMACに変更。それでも駄目ならカラーパターンを替えてみよう。大抵の場合、この方法でトラウトをキャッチすることができる。

秋の阿寒川で有効なエッグフライ

 

ターゲットが好む流れにフライをのせる

阿寒川のニジマスは放流魚だけではなく、自然産卵で生まれた天然魚も多い。そんな魚を釣り上げるには、まず流れの緩やかなよどみを探し、ハッチ後の虫の死骸や抜け殻がないか探してみる。天然のニジマスは虫に依存して生きている。虫の有無でどんな釣りが可能になるのかが決まるのだ。

条件が良ければコカゲロウなどのハッチに出会えるかもしれないが、そんなチャンスは決して多くはなく、大抵の場合、フライを沈める釣りからスタートする。沈めて釣るときは、根掛かりによる時間のロスなどを考えると、ルースニングが適切だろう。

阿寒川の水生昆虫は種類・数ともに豊富で、セレクティブなトラウトは少ない。筆者の場合は、3X9ftのリーダーに4Xのティペットを1ヒロ(約1.5m)付け足し、#12〜#16程度のヘヤーズイヤーやMSC、フェザントテールのフライを結ぶ。ビーズヘッドのウエートが付いたフライはそのまま使い、ノンウエートのフライはガン玉Bを1つ付け、流れにのせてドリフトさせる。

ここで重要なのは、ニジマスの好む流速を選んで流す、ということ。対象魚に合った流れの筋にフライ流すのは、渓流釣りの重要なこつの1つである。ヤマベは流れの速い流心脇にいたりするが、小型のニジマスは瀬にいることが多く、良型になるとそれほど流れの速くない倒木の下や、対岸のバンクに居着くことが多いので覚えておきたい。

ニジマスが好む流速の流れにフライを流せば、きっと何らかの反応があるはず

 

ライズフォームから推測する捕食ゾーン

渓流を釣り歩いているときに、もしもライズを見つけることができたら、ライズリングの大きさや魚の出方といったライズフォームで、捕食ゾーンが水面なのか水面直下なのかを見極めよう。

ただこの時季にハッチする虫は小さく、ライズフォームは必然的に小さくなる。音もなくライズリングが広がるケースもあり、そういった状況で捕食ゾーンを読むのは難しい。

ではどうすればいいのか? 筆者の場合は、それが産卵後の成虫が多く流れる午前中であれば、虫が羽を広げた状態で水面を流れる姿を演出できるスペントパターンのドライフライを使う。

ハッチ前やハッチ直後の虫が多い午後なら、カゲロウの亜成虫を模したドライフライのCDCダンや、水面直下や中層を探るのに適しているウエットフライを流すことが多い。

ライズフォームで捕食ゾーンを読む。読めなければドライフライで水面を流し、ウエットフライで水面直下や中層を流す

 

<阿寒湖編>

トラウトの活性を上げるトリガーとは

阿寒川の禁漁開始から遅れること約1か月、釧路市阿寒湖は12月1日から禁漁期間に入る。10月後半の同湖は、澄み切った空気とマイナスイオンを存分に浴びながら思いきり釣りが楽しめる秋のハイシーズンだ。

この時季の魚は活性が上がりにくいが、ちょっとした気温変化やワカサギ漁により活性が変化するのが特徴だ。この時季は霜が降りるほど冷え込むこともあり、水温は5、6度のことも。こうなると冷水を好むトラウトは適水温を求めて深場に落ちる。しかし、水温が上がるとエサを求めて浅瀬へと移動する個体もいる。浅瀬に出て来たトラウトの活性を上げるトリガーとなっているのが、ワカサギであり、虫なのだ。特に前者はワカサギ漁が密接に関係している。

個人的な推測ではあるが、ワカサギ漁は群れの通り道に網を仕掛け、引き揚げている。一度の網揚げで何千匹ものワカサギが捕獲されるが、その際、かなりの量のワカサギが網からこぼれ落ちるのだ。絶命し湖面を漂うそういったワカサギは、トラウトにとって苦労せずにありつけるごちそうとなる。こんなチャンスをトラウトが見逃すはずも無く、漁が始まるとその周辺をトラウトがうろつき、ワカサギを偏食しはじめる。この状況を利用した釣りがワカサギのドライフライによる釣り、通称ドラワカだ。

澄んだ空の10月後半は秋の阿寒湖のハイシーズン

 

ドライワカサギのキャストを助ける手立て

#8前後のサーモンフックにフロート材を巻き付けたドラワカは、軽量だが空気抵抗が大きく、ロングキャストには向かない。この大きなフライを快適にキャストするには、9フィート、#6以上のスイッチロッド(シングルハンドとダブルハンドの兼用ロッド)が適している。

空気抵抗の大きなフライをしっかりターンオーバーさせるには、リーダーはターンオーバー性の高い0X以上が向く。ティペットは無くてもいい。ドラワカで釣れるトラウトは平均して大きく、アメマスもニジマスもほとんどが50cmオーバーで、コンディションも良好だ。

アメマスとニジマスのボイルにはそれぞれ特徴があり、アメマスは単発で、何度もフライを確認するような用心深さが感じられる。フライに襲い掛かると同時に潜るので、大きな水しぶきが上がり興奮するが、目の前でUターンすることもしばしば。

一方、ニジマスのボイルは移動速度が速く、直線的で躊躇がない。まるでイルカが悠々と泳ぐかのように、遠くから背びれを見せて迫り、あっという間に去っていく。捕食対象もランダムで予測しにくく、アメマスとは違った難しさがある。

空気抵抗の翁ドラワカをキャストするには9ft、#6以上のスイッチロッドがお勧め

 

弱ったワカサギを演出するリトリーブが鍵

この時季の同湖では、50cmを超すトラウトが水面を漂うワカサギに狂喜乱舞する光景が見どころの一つ。そのためどうしても水面に注目しがちだが、水中ではその何倍ものワカサギが捕食されている。確実に釣るなら、ルースニングでワカサギのフライを流れにのせるのが得策だ。

ルースニングのこつは2つ。1つはトラブルなくキャストできるフライパターンであること。もう1つは、マーカーの付いたシステムを、ボイルするトラウトまで届けられるキャスティング能力だ。ルースニングは、単にドラワカを湖面に浮かべるよりも大きな魚が釣れる確率が高い。

水に沈むシンキングラインを使う場合は、弱ったワカサギを演出するリトリーブを心がける。たまにリトリーブを止めた方が反応がいいこともある。ワカサギ漁に寄ってくるトラウトは、弱ったり死んだワカサギを捕食しているので、逃げ惑うようなアクションには反応を示さないことが多い。

秋の釣りは足早に通り過ぎる。太古の昔から変わらぬ美しい原始の森を流れる清流や、紅葉に染まった美しい湖で、阿寒生まれのニジマスの力強さをぜひ味わってもらいたい。

ルースニングでアメマスがダブルヒット
ボートフィッシングサービスは良型を釣る上で非常に有効だ

 

ルールはしっかり守ろう

阿寒川と阿寒湖では、リリース後の生存率調査などに基づき、バーブレスのシングルフック使用が義務付けられている。しっかりルールを守り、秋の阿寒を心ゆくまで楽しもう。