秋から冬にかけて釣れるヤリイカ、秋のヤリイカはやる気満々で釣るのはそう難しくない一方、産卵で岸寄りする春のヤリイカは全くの別物と考えていい。変わりやすい秋空に翻弄されるが狙いやすい秋のヤリイカと、穏やかな条件でも気難しく難易度が高い春のヤリイカ、性格もシーズンも異なるこれらのヤリイカを攻略するためには、どんなタックルで、どんな釣り方が適切なのか、攻略のヒントを考えてみたい。

 

釣りやすい秋、難敵に変わる春

秋のヤリイカ(秋イカ)は非産卵期なので活発にベイトを追い、数を上げやすい。一方、春に釣れるヤリイカ、春イカはヒット率がぐんと落ちる。

春は産卵期で、産卵のための体力を維持する程度の摂餌しかしないため、余計な体力を消耗してまで捕食行動を起こさないからだ。そのため狙うレンジが外れていたり、エギのアクションが速いと、ほとんどヒットに恵まれない。

イワシやチカなどのベイトを追いかけて接岸する秋イカは、日中よりも夕まづめ以降が釣りやすい。漁港などでは常夜灯の明かりに寄って来たベイトがたまりやすく、その結果イカも集まりやすくなるからだ。

水深が深かったり、常夜灯が無い場所では、投光器をつけて狙うのも有効。しかし水深の浅い場所では、投光器が必要以上に明るいと海底まで照らしてしまい、イカの隠れる場所が無くなるので注意したい。

明かりのない場所では投光器を使うのも手だが、水深の浅いフィールドはかえって逆効果になることも
常夜灯がある場所は光に集まったベイトに誘われてイカも集まる

秋にベイトを追う「秋イカ」

 

潮が速いときは強めのダートが奏功する

夜の秋イカはベイトを追って表層付近を回遊することが少なくない。そのため漁港では表層から1m付近までを探ると効率がいい。しかし投光器を使用するとイカが中層や海底付近へ潜るため、エギも中層以下に沈めた方がいいだろう。磯場や深場の場合は、潮の流れの境目を狙うとヒットの確率が上がる。ここで注意したいのがエギのアクションだ。

磯場などでは潮が速いことがある。通常のルアーフィッシングでは潮が効いていた場合、過度なアクションになるのを避けるため、あえてゆっくりリールを巻いたりするが、エギの場合は棒引きになってしまう恐れがあるので、逆に手首のスナップを利かせて強めにダートさせなければならない。このとき、ティップスピードを上げるため意図的にラインスラックをつくるといい。逆に潮が効いていない場合はアクションを抑え、ダート幅が広がらないようにすると効果的である。

 

群れが見えたときの対処法とは

漁港など街灯のある場所は、回遊するヤリイカの群れを目視できるケースが少なくない。そんなときエギで群れを直撃すると、着水音に驚いて群れが散り、警戒心を高めてしまうので絶対に避けたいところ。キャップライトで照らすのも同様にNGだ。

そんなときは群れの進行方向の数m先にエギを投げ、カーブフォールで沈めつつ、前に進むようなダートアクションで興味を引くといい。シェイクを入れ、その後のカーブフォールでエギを抱かせるのも有効だ。その際、通常より少し長めにフォールさせるのがこつである。

目視できる群れの進行方向が急に変わることがあるが、投げ直すために急いでエギを回収するのはやめた方がいい。急いで回収するとエギから出る強い波動や、タックルから発生する振動が糸を通して伝わり、イカが警戒してしまうのだ。

以前、防波堤で荷物を岸壁にぞんざいに置いたときの、イカが水面から飛び出したことがあった。このときは「偶然かな?」とも思ったが、今は「振動が伝わって驚いたのかもしれない」と考えるようになった。なにしろ水中では、音(振動)の伝わる速さが空気中よりも約4.5倍も速いのだ。イカを釣るときは、なるべく余計な振動を与えなことが重要である。

 

1匹で終わらせないマル秘テクニック

経験上、秋イカは前に進むようなエギのダートアクションに反応しやすい。秋は大きな群れで回遊することが多いが、ヒットしたときはヤリイカが水面に出ないようゆっくりリールを巻くと、他のヤリイカも一緒に付いてくることが多い。

うまく群れごと寄せることができたら、掛かっている獲物を取り込んですぐに3~5m先へエギを投入。すぐにアクションを加えるとヤリイカが連発でヒットするので効率がいい。遠投で釣れた場合も、ゆっくりリールを巻いて寄せれば、イカが群れで付いてくる。これは数を上げる上で欠かせないテクニックの1つである。

磯場や水深が深い場所ではトップ(水面)もポイントの1つだが、潮が効いている場所を狙うとより効果的だ。潮が効いているかどうかを確かめるには、まずエギを投げてフェザリングしながらフリーフォールさせる。そこでラインの出方が速くなったり、逆に遅くなったりしたら、そこが潮の流れの境目だと判断できる。

境目が判別できたら、後は潮が効いている(潮が速い)方を探ればいい。慣れるとフリーフォール時にフェザーリングしなくても、ラインがガイドを通るときの擦過音の違いで、潮の境目が判別できるようになる。

風の強いときはなるべくロッドを海面ぎりぎりまで下げると、ラインスラックを減らすことができる。ラインスラックが大きいと当たりが取りづらくなり、エギの動きを阻害するので注意したい。

 

気難しい難敵を攻略「春イカ」

 

抑え気味のアクションが奏功する

冒頭でも触れた通り、春のヤリイカの摂餌は、基本的には産卵のための体力維持が目的なので必要最低限でよく、釣りやすい秋イカと違ってシビアな釣りになりがち。ただ春イカは夜ではなく日中の方が釣りやすくなるのでありがたい。

この時期の春イカは日中にボトム付近を回遊するので、中層より上はほぼ探る必要がなく、レンジが絞りやすいのも長所だ。  誘い方は、エギのジャーク(跳ね上げ)やダートを抑え気味にして、ゆっくりフォールさせるのがこつ。

跳ね上げる高さは60cmくらいがちょうどいい。着底してから次の跳ね上げまで2~5秒ほどステイさせるのも効果的だ。ゆったりしたアクションやステイの間を作ることで、産卵で体力を温存するイカが抱きつきやすくなる。

春イカは気難しい半面、日中に釣れるのでありがたい

 

エサ巻きエギングで注意すべき点

産卵期なので春イカはペアリングしながら泳いでいることが多いが、そういったイカはエギに見向きもしない。しかし、すべてがペアリングしている訳ではないので、粘り強くエギをキャストすることが肝要だ。エギは1.8〜3号が望ましい。

タイプは状況に応じてゆっくり沈むシャロー、標準的な沈下速度のベーシック、速く沈むディープの3種を使い分ける。カラーはナチュラル系をベースにアピール系を数種類用意。エサを巻き付けられるエギを使うのも手だ。

セットするエサは、塩漬けした鶏のささ身を使用する人が圧倒的に多い。よく用いられる塩漬けのささ身は身持ちが良く扱いやすい上に、アミノ酸による集魚力が高い。大量に含まれるタンパク質が分解すると最終的にアミノ酸に変わるが、このアミノ酸にイカが反応すると言われている。塩漬けすると細胞が破壊されてアミノ酸も海中に溶け出しやすくなる。

塩でささ身の水分をある程度抜き、使用するサイズに切り出して塩をまぶす。昆布茶の粉末やうま味調味料を加えるのは、抜け出たタンパク質やアミノ酸を補うため。使いやすい硬さに調整する意味もある。

ただし、ささ身自体の浮力や、巻き付けることによるエギを含めたシルエットの大型化により、潮の影響を受けやすくなるのがデメリット。そうするとエギ本来のフォールスピードも変わるので、キャスト前に沈下速度を目視で確認しておくと、カウントダウン時にレンジが把握しやすい。

見落としがちなのが、ささ身の巻き付け方だ。エギにささ身をセットするとき、カンナバリ付近にエサが掛からないように巻き付けなければならない。カンナバリ付近まで巻いてしまうと、その辺りがごろんと太く、大きくなってしまい、合わせたときにハリが掛からずにすっぽ抜けかねない。

エサ巻きエギングで難しい春イカを攻略
エギはシャロー、ベーシック、ディープをそれぞれそろえたい

 

分かりづらい春イカの当たりを取るには

秋イカは捕食意欲が旺盛で、エギを抱いたまま引くので当たりが明確だが、春イカはその場で抱きつくだけの場合が多く当たりが取りづらい。

ただ、日中のエギングはラインが目視できるので、ラインの動きで当たりが取れる。集中していればロッドを持つ手元にも「トン…」という微かな当たりが感じられるはずだ。感じられないときは、ラインが軽く「ブルン…」と震えるので判別できるだろう。

合わせた瞬間は「根掛かりかな?」と思うぐらいの重量感がある。ただそこでラインを緩めてしまうとばれてしまうので、テンションが抜けないように気を付けたい。

エギに関してはカラーも重要だ。イカの視力は0・5程度あり、色の濃淡の識別能力も高いと言われている。そのためか、エギのカラーを変えただけで釣れ方ががらりと変わることもあるので、カラー選びは軽視できない。

ラインに関しても太さで釣果が変わってくることがあり、あまり太いラインを使うのは好ましくない。

 

エギングスナップは必須アイテム

最近は道内でもアオリイカが釣れ始めているが、目立った大型は釣れていないので、PEラインは0.4号あれば十分対応できる。ショックリーダーは、マメイカやヤリイカなら6Lbで十分。好みもあるが、ショックリーダーは屈折率が水に近く乱反射しにくいフロロカーボンがお薦めである。

エギとのリンクは、エギ専用スナップを使用したい。スイベル付きだとエギが不用意にヒラ打ちしたり、スイベルが付くぶん重くなるので、エギ本来の姿勢がキープしづらくなる。スイベルによって重量バランスが崩れると、フッキングにも影響を及ぼすので、必ずエギ専用スナップを使うようにしたい。

 

繊細な当たりを捉える『脱力フィッシング』

ヤリイカの当たりは繊細なことが往々にしてあり、釣り人は神経を研ぎ澄ます必要がある。そんなときに実践したいのが『脱力フィッシング』だ。身体に力が入ると神経が圧迫され、繊細な当たりを捉えられないので、できるだけ身体をリラックスさせることが重要。ロッドはできるだけ軽く握り、ロッドティップを上げ過ぎないようにすれば、筋肉の活動量が減り、神経が圧迫から解放されるので微かな当たりを取りやすくなる。