根魚と言えばアブラコやソイ類が代表的。魚種やサイズによって比較的簡単に釣れるものから、釣るのが難しいものまでさまざまだが、日本海で40cmを超える根魚を釣るのはかなりハードルが高い。今回はそんな「40cmを超える根魚」にターゲットを絞り、魚種別の攻略法などを追求してみたい。
(本紙編集部)

 

はじめに

根魚の定義は「岩礁や海藻の間やその周囲の海底近くに生息し、遠くまで移動しない魚」である。「遠く」という定義が曖昧だが、数十kmや数百kmの深浅移動や海域移動をせず、移動してもせいぜい数km程度と考えるのが妥当と思われる。そう考えると、日本海の根魚は、アブラコ(標準和名アイナメ)、クロゾイ(同クロソイ)、ハチガラ(同ムラソイ)、ガヤ(同エゾメバル)、マゾイ(同キツネメバル)、シマゾイ(同シマソイ)、それにクロガシラ(同クロガシラガレイ)などが該当する。
魚体の大きさや釣果などを考慮しなければ、いずれの魚種も根周りを探ればお目にかかることはできるが、例えば40㌢超えを常時釣りたいとなると、話は少々変わってくる。ベテラン釣り師の中には40cmを超える良型をコンスタントに釣る人がいるが、たまにしか釣れない人と何がどう違うのだろうか。以下に、良型をコンスタントに釣るにはどうしたらいいのか、魚種別に話を進めていきたい。

 

アブラコ

押さえておくべきポイントとは

アブラコは日本海の根魚の中で最もポピュラーな魚である。大きさを別にすれば、シーズンとポイントさえ間違わなければ釣るのはそう難しくない。

シーズンは主に4~6月と10~11月。ポイントは、岸波が当たらない岩の真下や岩にある凹みなど。このような所で周囲の根原にいる虫類やエビ類、小魚などを食べている。狙う時間帯は朝夕のまづめ時や夜間が中心だ。

釣り方は主に投げ釣りとルアー釣りが良い。海底に横たわる岩の真下を狙うのが基本で、一般に投げ釣りに分があるが、岩に棚のような凹みがある場合はそこに寝そべっていることも多いため、ルアーで周囲を探るのも良い。

良型攻略の要諦

40cm超えのアブラコは根魚の中では最も狙いやすい。というのも40cmに成長するまでの期間が5年で他魚種に比べてかなり短く、1年で一回り大きく成長するからである。しかも個体数が多く、漁業の対象になっていないため、ほとんどが遊漁の対象になっているところも良型を釣りやすい要因となっている。

良型を釣る条件はずばり「サオが出ていない岩場を狙う」こと。人気釣り場は釣り尽くされている恐れがあるため、良型に巡り合う確率は低いと言わざるを得ない。これは他魚種にも同じことが言える。ただ、たとえ有名釣り場でも、サオが出ていないポイントがあれば良型に巡り合う確率は高い。

要は、誰もサオを出さない自分だけのマイポイントを作ることが良型を得る第一歩となる。さらに重要なのは、ポイントを複数持つこと。そして最も重要なのが「今年はここ」「来年はあそこ」というように輪番でサオを出す“未来志向”の攻略法を確立することである。

アブラコは40cmに成長するのに5年しか掛からないので、例えば40cm未満が釣れた場合はリリースすると決めると、当然のことながら翌年以降は40cm超えが期待できる。すべてキープするのではなく、自分なりにキープの基準を決めておくことが、大物を釣るための基本姿勢になる。

 

クロゾイ

押さえておくべきポイントとは

クロゾイはソイ類の中でハチガラやガヤと並び、なじみがある魚である。成長が早く、6年程度で40cmになることや、あちこちで養殖が行われているため個体数が多い。シーズンは主に5~6月と10月。朝夕のまづめ時や夜間に活動する。

アブラコと違うのは、泳ぎが達者で、1つの根にとどまっている期間が短く、根から根を転々とすること。汽水域を好むことから、河口や滝が流れ込む周辺の根によく集まる。従って近くに川水が流れている周辺の岩を探るのが良い。

釣り方は、投げ釣りやルアー釣り、ウキ釣り、いずれでもいいが、よくヒットするのはルアー釣りやウキ釣り。これはクロゾイの活動域が主に中層で、動くエサを追いかける性質があるためだ。

良型攻略の要諦

30cm級を釣るのはそう難しくないが、40cm超えとなると、頭の切り替えが必要となる。小さいハリに小さいエサを付ける仕様では、大物はなかなか釣れない。

クロゾイは他のソイ類に比べ、成長が早いこともあり、とにかく大食漢。大好物であるガヤの20cm級をペロリと平らげ、大物になればなるほど大きなエサを食べる。従ってハリは太く大きいものが良く、カジカ狙いの親子バリや親子孫バリを用いて、イカゴロや10~15cm大に切ったカツオやサンマの短冊を付けるといい。このような仕様でウキ釣りを行うと、良型が釣れる確率が格段に向上する。

もう1つ重要なのは水深である。最低でも足元で水深8m、できれば10mくらいの深場に陣取ることが重要。沖正面が開けて急深であればヒットする確率はさらにアップする。

 

マゾイ、シマゾイ

押さえておくべきポイントとは

良型アブラコやクロゾイ釣りを楽しんでいる人が、マゾイやシマゾイの40cm超えを釣るのは至難の業である。なぜなら、そもそも両者の生活圏が違うからだ。

アブラコやクロゾイの生活圏は主に水深5~15m。これに対しマゾイやシマゾイの40cm超えは、水深15m以上の深場となる。生息するエリアが違うのだから、マゾイやシマゾイの40cm超えを釣るには、頭からアブラコやクロゾイを一掃し、一から攻略法を見直す必要がある。

問題となるのは釣り場の選定だ。日本海の磯は大半がアブラコやクロゾイが生息する「水深5~15m」の範囲にあるので、磯から投げて届く範囲内で「水深15m以上」の深場を見つけるのはかなり大変である。

昭和の時代であれば後志・檜山の海岸に多くのポイントがあったが、トンネル建設や越波対策による護岸工事などにより、入釣できなくなった所が多く、現在は数百mに及ぶ崖歩きや、いくつもの大岩越えなどの難所をクリアしないと行けない釣り場しか残っていない。

本紙としては、危険が伴う徒歩入釣は推奨できないため、遊漁船による磯渡しで、水深15m以上の深場に手が届く岩場でサオを出すことをお薦めしたい。

良型攻略の要諦

シーズンは主に4~5月。6月も釣れるが、クロゾイの動きが活発になるため、その前に狙うのが定石となっている。まづめはほとんど釣れず、すっかり暗くなった時間から当たりが出始める。

マゾイやシマゾイがすみ着いているのはアブラコ同様、大小の岩や藻場がある荒根。海底に潜み、周囲の根原にすむ小魚や甲殻類などを食べる。中層や表層に浮くことはほぼなく、投げ釣りで底を狙うのが基本となる。

クロゾイのようにエサを求めて転々と根を渡り歩くことはほとんどなく、ある程度奥行きがある大きな根に居着いてあまり動かない。そのためアブラコ同様、ポイント狙いが重要。根がかり覚悟で飛距離や角度を変え、当たりがくるポイントを探るのが良型ゲットの狙い方となる。

マゾイ、シマゾイとの向き合い方について

アブラコやクロゾイと大きく異なるのは、その成長スピードである。40cmに成長するのにアブラコは約5年、クロゾイは約6年を要するが、マゾイやシマゾイは何と15年もかかる。

一般に根魚は、棲んでいる所が凹凸の激しい岩場なので、大波や流れが速い潮流などによる岩への衝突によりけがが多い。若魚のうちは回復力も早いが、生まれてから8~10年も経つと免疫力が低下し、けがによる細菌感染が増え、病気による自然死が多くなる。

従って15年も生きて40cmになった魚体はきわめて希少。アブラコやクロゾイの15年物が60cmを超えることを考えると、その希少さは推して知るべしだ。40cmを超える魚体がもつ意味を理解し、未来志向で40cm以下をすべてリリースするなどの基本姿勢を持つことが大切となる。

 

クロガシラ

押さえておくべきポイントとは

クロガシラ(マコガレイ含む)を根魚と位置付けることに違和感を持つ人が意外に多い。カレイ類は根魚ではないと頭から決め付けていることに原因がありそうである。

しかしクロガシラは紛れもなく根魚だ。マガレイやソウハチなどのように、数十km、数百kmに及ぶ深浅移動や海域移動は行わず、数km程度の範囲内にある根原を転々とするからである。

すみ着く根は、岩場や玉石がある所に繁茂している海藻の周辺で、かつ砂地が混じった所。アブラコやソイ類などの根魚と一緒に釣れるのが特徴である。

釣期は主に3~5月と10~11月。釣れる時間帯は朝夕のまづめを中心とした前後の時間帯。底魚なので投げ釣りで狙う。イソメなどの虫類を用い、ハリごとのみ込ませて釣る。

攻略の要諦

投げ釣りが主流だった昭和や平成中期までと異なり近年は、中・表層を狙うルアー釣りが主流となっているため、底魚であるクロガシラは釣られずに生き延びる個体が増え、近年良型化が進んでいる。

かつて日本海ではあまり見ることがなかった40cm超えが、あちこちの磯で見られるようになった。40cmに成長するのに約12年もかかるため、このサイズを釣るのはアブラコやクロゾイよりはるかに難しい。

狙い方は前述のアブラコとほぼ同じ。違うのは、荒根の中から海底が砂地になっているスペースを見つけること。釣果が上がればそこがクロガシラの「マイポイント」になるため、このようなポイントを複数持つことで毎年良型をゲットできる。自分なりにルールを設け、40cm未満をリリースするか否かを判断しよう

 

終わりに

日本海で40cm超えの根魚を毎年コンスタントに釣る人とそうでない人との差は、「マイポイント」があるかどうか、そして「リリース」の基準を持っているかどうかにかかっている。魚は成長するのに時間を要するので、大きくなる前にキープするとそこで「終わり」となる。そのことを踏まえ、魚に対する向き合い方を改めて考えることが大切ではないかと思う。