秋の積丹沖はタチの詰まったマダラや脂ののったホッケ、美味なヤナギノマイが狙いごろ。同沖の五目釣りに欠かせない三種の神器ならぬ〝三種の神魚〟を賢く釣ろう。 (伊藤 禎恭)

マダラ、ホッケ、ヤナギノマイは秋こそ狙い目

夏の沖釣りはブリ、イカ、ヒラメなど釣り物が豊富な一方、ホッケや大型のマダラは深場に移動するので、ヤナギノマイなどの根魚を除き小休止状態になります。しかしマダラやホッケは9月になると水深120m前後まで上がってきて一気に本格化します。このころのホッケは一年のうちで最も脂がのり、「赤ボッケ」と呼ばれる良型が大半です。マダラはなんといってもタチ(白子)の成熟が進み、寒くなる鍋の季節にぴったりな釣り物といえます。

沖五目用タックル ロッド&リール

沖五目は水深120〜150mと深場の釣りです。水深やオモリのウエートを鑑みれば、ライトタックルでは文字通り「荷が重過ぎます」。リールは電動がお薦めで、PEラインは5、6号を300m以上巻いておきましょう。巻き上げ力は20kg以上あるものが安心でトラブルも少なくなります。ロッドはオモリ負荷120〜200号、長さは240〜270cmが扱いやすいと思います。調子は7対3が最適で、ある程度張りがあり、しゃくっていても負担が少ない物がいいでしょう。取り込みや移動時になくてはならないロッドホルダーは必需品です。

仕掛け

前述したように、この時季の沖五目はメインターゲットがマダラ、ホッケ、ヤナギノマイなどですが、1つの仕掛けで全部釣れるとは思わないでください。その日のターゲットに合わせた仕掛けの選択が、釣果に大きな影響を与えるからです。以下に対象魚別の仕掛けや釣り方、知っておくべきこつなどを紹介します。

ホッケ狙いにエサは不要。夜光玉も外しておこう

ホッケがメインのときは赤、青、ピンクなどのバルーン仕掛けが有効ですが、夜光玉の付いていない物を選んでください。経験上、夜光玉はホッケに警戒心を与えます。ハリは大きめのスズキハリなどで、ハリ数は6〜8本。ハリスは8〜10号を20cm程度。ミキ糸は16号程度で、ハリ間隔は40cmが最適です。

私は沖五目ではエサを使いませんが、他の乗船者に比べ釣果が劣った感じたことはありません。エサを付ける手間が省けて手返しが早く、エサが無い分、ハリがよく躍りアピール力も優れている印象です。

ホッケは群れで中層のベイトを追っているか、根周りでベイトなどを捕食します。数を狙うときは中層の大群に照準を合わせるのがベスト。大型を狙うなら根がある場所でボトム近辺を探るといいでしょう。

初めに当たりがあってもすぐに取り込まず、ハリ数付くまで我慢します。6本バリなら6回、8本バリなら8回当たりが来たら電動リールのレバーを倒し、魚を取り込んでください。ホッケは水面まで来ても元気に暴れるので、スピード感をもって一気に船上へ抜き上げましょう。

ヤナギノマイには白フラッシャーと夜光玉の最強タッグで

ホッケと並び沖五目の代表的なターゲットがヤナギノマイです。ヤナギノマイは根魚で、ホッケのような回遊はせず、根の上で集団で生活しています。狙いはボトム近辺ですが、経験上、大型ほどやや上のタナにいるようです。しかし同じ根を何度も流すと、どうしてもボトムぎりぎりでの当たりが多くなります。

仕掛けは、ミキ糸が14〜16号。ハリは白フラッシャー付きのタラバリ8号やスズキバリ16号クラスで、ハリスは8〜10号を15〜20cm。ハリ間は40cm間隔にしてください。ホッケと違うのは、夜光玉やケイムラビーズが付いていること。こういったパーツに食いが立つようです。ホッケ同様、当たりがあったら軽く合わせて次の追い食いを待ち、ハリ数付いたらリールを巻き上げてください。

取り込みは前半がゆっくり、水面近くになるにつれ速く巻き上げます。なぜなら、ヤナギノマイには浮き袋があり、水圧が低くなると浮き袋が膨張して浮力が増すから。巻き上げ速度よりも速く魚が浮上すると、ラインテンションが緩んでばらしの原因になるため、テンションが緩まないよう徐々に巻き上げ速度を上げるのがこつです。

ヤナギノマイ用の白フラッシャー仕掛け

タチ入りマダラはジグとシャクリでハリは1本!

これからの時季にぴったりな沖五目のターゲットといえば、高級食材のタチが入ったマダラでしょう。産卵期のマダラは警戒心が強く、他の時季のように簡単には釣れません。五目仕掛けでも釣れますが、この時季は産卵に参加しない小型のマダラが釣れる確率が高くなります。大型やタチを有するマダラを狙うのであれば、シャクリやジグがお薦めです。

シャクリやジグは五目仕掛けに比べるとシンプルです。ただし五目仕掛けの下にシャクリやジグを付けるのはいただけません。そもそもジグやシャクリ自体が1kg前後あり、ホッケが1匹掛かっただけでも抵抗感はかなり大きくなります。常にサオをしゃくって誘わなければならないこの釣りでは、ホッケの抵抗が負担になる上に、シャクリやジグの動きが悪化してヒット率が下がるのです。水深が深いのでオマツリも頻発します。ハリ数が多いとそれだけ余分な負荷が掛かり、上げるのに時間も掛かるので、シャクリまたはジグ1本で勝負するのが得策です。

ラインシステムは、PEのミチ糸に14〜16号のリーダー結び、シャクリやジグをセットすれば完成です。ミチ糸にジグなどを直接付ける人もいますが、重いマダラを取り込むときにPEラインでは手元が滑って取り込みに手間取ります。ナイロンやフロロカーボンのリーダーは、マダラ釣りではクッションの役目を果たすだけではないのです。シャクリやジグは、積丹沖では250号前後が標準ですが、念のため事前に船長に確認するといいでしょう。他の乗客とウエートを合わせるのは、オマツリを軽減させるためにも絶対条件です。

シャクリやジグの選択の基準

マダラ釣りはシャクリやジグの1択なので、カラーやフォルムで釣果が変わってきます。この時季のマダラはイカや小型のホッケを捕食していると思われるので、シャクリやジグもイカや小型のホッケがイメージできる物を選んでください。

カラーは、イカの色に似ている赤金などが定番です。コパー(銅)など金属製の光沢色もアピール力に優れます。当たりカラーはその日によってさまざまなので、カラーの異なる物をいくつか用意しなければなりません。筆者の経験ではステンレス系、コパー系の2種類は必須です。

カラーの他、フォルムの違いでもジャーク時やフォール時の動きが大きく変わります。どちらかといえば、極端に細かったり、逆に平べったいものよりも、ナチュナルなフォルムの方がオマツリは少ないようです。極端な形状の物は、フオール時に潮に逆らった動きになりやすく、魚に警戒されてヒット率が下がる印象です。

4本バリ、アシストフック

シャクリやジグには4本バリやアシストフックを装着します。シャクリやジグのカラーやフォルムと同じように、フックの選択も釣果を左右する重要な要素です。夏場のマダラは活性が高く釣りやすい半面、産卵間近になると警戒心が高まって食いが渋くなり、体当たりする習性があります。そのためこの時季はすれ掛かりも多く、4本バリが有利です。

ハリは一般的にサイズが大きくなるにつれて軸が太くなりますが、身切れによるばらしを軽減するにはジグが太い方が有利なので、フックサイズも大きな物を使った方がいいでしょう。ジグも同様で、#5/0または#6/0クラスのアシストフックが必要です。

4本組バリにはタコベイトやイカナゴベイトを付けるのが一般的です。シャクリやジグだけでもアピールできますが、細かなアクションを補うのにタコベイトやイカナゴベイトは効果的です。しかし、あまり大きなタコベイトやイカナゴベイトは余分な警戒心を与える結果になりかねず、ホッケがうるさいときなどは素バリの方がいいときもあります。

カラーはピンク、赤などが一般的ですが、黒や白などの方がいいこともあるので、何種類か用意してください。

獲物に体当たりする秋のマダラは4本バリが適切だ

大型マダラをヒットに持ち込むには

しゃくり方は非常に簡単で、シャクリまたはジグをボトムへ落とした後、2〜3mほど底を切ってしゃくるだけ。あまりボトムにこだわると根掛かりの原因になる上に、大型ほどボトムの5〜6m上でヒットします。

特別大きくしゃくる必要はなく、振り幅は小さくても大丈夫ですが、動きを絶対に止めないことが重要です。どんな疑似餌釣りにも言えますが、止まった疑似餌はすぐに見破られてしまいます。ゆっくりでもいいので、常に動かしておくことが大切です。

マダラの当たりは、ガツンと強烈だったり、フワッと食い上げたりします。いずれも一度強めに合わせてから巻き上げてください。最初の10mほどは慎重に手巻きするのがお薦めです。

ハリ掛かりが十分に確認できたら、電動リールのレバーを倒してください。すると中層辺りで必ず2、3度強い引き込みがあります。ホルダーに付けたままリールを巻き上げると、この引き込みに対応できずばらしの原因になるので、サオは必ず手に持って巻き上げましょう。

しゃくりを止めると見切られてしまうのでロッドは常に振り続けよう
巻き上げ時は置きザオはNG。手に持つことで未然にばらしが防げる

船釣り入門にも最適な秋の五目釣り

秋の沖五目釣りは「釣ってよし」「食べてよし」の釣りです。脂ののったホッケやタチ入りマダラ、人気のヤナギノマイなどが釣れ、ソイ類やガヤ、ソウハチ、オオバなども狙えます。秋は、船釣りの醍醐味を堪能するには最適の季節です。ぜひ家族や仲間と出掛けてみてはどうでしょう。