サケの投げ釣り、通称「ぶっ込み」で用いられるフロート仕掛け。道内のベテラン釣り師はこのフロート仕掛けを手作りする人が多く、経験と実績に裏打ちされた、個性豊かな仕掛けは一見の価値がある。
(澁谷 賢利)

ぶっ込みでは、4.5mほどの投げザオに大型スピニングリールを装着する。糸はナイロン8号程度。近年は1本バリ仕掛け主流だが、まれに2本バリのフロート仕掛けを用いる人もいる。オモリは30〜35号が標準的。エサはソウダガツオを筆頭に、サンマやフクラギ、紅イカなどが使われる。

この釣りの道具で釣り人が一番工夫を凝らすのがフロートだ。フロートは、浮力のある円柱の発泡素材に色とりどりのシートを貼り付けて作られる。その浮力でハリに付けたエサを海中で漂わせてアピールし、サケの食い付きをよくすると共に、その目立つカラーでサケを引き付ける役目を果たす。細かな部品を組み立ててイチから自作するベテランは多く、初心者や中級者も市販の仕掛けを購入する際に気を使う部分だ。

次いで工夫をするのはハリに被せるタコベイトの色。タコベイトもその色と柔軟性のある素材が生み出す細やかな動きで、サケを引き付ける効果があるとされる。

産卵が近く、岸寄りしたサケは消化器官が萎縮して食欲が減退しており、食欲で仕掛けに食い付くことはまれだとされる。ハリ掛かりして釣れるのは、闘争心や縄張り意識、成長期にエサを食べていた時の名残とする意見が一般的だ。そのため通常のエサ釣りと異なり、仕掛けにはアピール力が求められることになる。

サケは魚体が大きく、引きが強い。食べてもおいしい魚だけに、釣り人はなんとか釣り上げたいと切ないまでの執念を燃やす。特にベテランほど釣りに対する探究心が強い傾向があり、仕掛けに人一倍の工夫を凝らすもの。以下に、そんなベテランが工夫を凝らしたフロート仕掛けを公開する。

 

シーズン後半に効く

赤フロート

多くの釣りにおいて赤は特別な色だ。ルアーでも赤系は実績があり、ブラー、ブラクリでも赤は定番色。アブラコ狙いの投げ釣りでも赤く着色したオモリを使う人がいる。赤は血の色、魚のエラの色とも言われる。
●製作者コメント『シーズンが進むにつれて赤系が良くなってくる気がする』(使用エリア/胆振地方)

 

はしりの時季に有効

青フロート

青はルアー釣りにおいて低活性時に効く色だとする説がある。また青は、イワシの背中の色に近く、それを捕食する魚に効果的なことがある。サケも成長時には小型のイワシを食べることがあると思われるので関係があるのかもしれない。
●製作者コメント『走りの時季に実績があるよ』(使用エリア/胆振地方)

 

ベイトをイメージ

イワシフロート

青フロート同様にイワシに関連したカラー。メタリックな地に黒ドットが並び、後部にはオーロラカラーのスカートが付く。製作者によれば、同じデザインで青ベースもあるそう。難点は、このカラーのシートが手に入りづらいことだという。
●製作者コメント『サケは若い頃イワシを食べていたはずだから』(使用エリア/十勝地方)

 

白が驚きの効果を発揮

白無地フロート

白い発泡素材剥きだしのフロートがポイント。十勝地方や釧路地方で流行しているという。フロートには、より目立つように色付きのシートを貼るのが半ば常識だが、これは逆転の発想といえる。これで十分との声も複数の人から聞けた。
●製作者コメント『釧路の知人に教えてもらい手作りした』(使用エリア/十勝地方)

 

定番のシルバー

銀フロート

フロート仕掛けの古典ともいえる色。銀色は太陽光が届きづらい海中でも光をよく反射してサケにアピールすると考えられる。使う人が多い結果、実績も上がるという好循環になっている可能性もある。
●製作者コメント『結局これが一番釣れるのではないか』(使用エリア/十勝地方)

 

朝夕まづめに最適

蛍光フロート

物理的に蛍光色は暗い場所で目立つのは間違いなく、朝や夕まづめでよく目立つのも確か。魚がすれている時は疑問符が付くが、フレッシュな群れには効果がありそう。ピンポイントの状況で使うスペシャルフロート。
●製作者コメント『薄暗い時に目立つはずだよ』(使用エリア/十勝地方)

 

アピール力は抜群

集魚板付きフロート

2本バリ仕掛けで、うち1本の銀フロート上部に銀色の小型集魚板が付く。もう1本は赤と銀のフロート2連結だ。見るからにアピール力がありそうで、製作者が自慢するだけのことはある。半面、製作に手間がかかりそう。
●製作者コメント『俺のフロートはすごいよ。これが釣れるんだ』(使用エリア/十勝地方)

 

偶然の産物

水色フロート

カラーシートが外れた市販のフロート仕掛けに、別売りのシートを急きょ貼り付けたもの。店頭でたまたま目に付いた水色のシートを使った。偶然の産物だが、侮れない実績が上がっている。
●製作者コメント『たまたまこの色にしてみましたが、意外に釣れますよ』(使用エリア/釧路地方)

 

ぶっ込みの最終兵器

虹色フロート

どの色が一番釣れるのかに言及するのは難しい。そんな時には、より多くの色が含まれる虹色にすれば解決するはず、との発想から生まれた。サケとカラフトマスが釣れた実績がある。フロートの色に悩む人にはこれがお薦め。
●製作者コメント『どんな状況にも対応できる。サケ釣りはこれでばっちり』(使用エリア/宗谷地方)

 

結論

 取材を重ねたが、結局どの色でも釣れていた。ルアーフィッシングではカラーセレクトは重要で、色により釣果に大きな差が出ることも少なくない。ただサケのフロートは、ルアーほどには色の重要性は低いのかもしれない。ただし釣り人たちの経験から、色がまったく釣果に関係がないとも言えない。少しでも多くのサケが釣りたければ、各自がさらに研究を深めて究極のフロートを見つけよう。