間もなく待望のブリシーズンが到来する。近年、オフショアのブリジギングは、釣果を得る難しさからテクニカルな釣りを要求され、経験の浅い初心者は「壁」にぶち当たることが多い。そんな「壁」を乗り越えるためのステップアップ術を分かりやすく解説。
(高谷 聡)

 

「壁」を乗り越えるにはレベルアップが必要だ

北海道沿岸を回遊するようになって久しいブリは、魚群探知機にしっかり魚影が映し出されているにも関わらず、船上の誰にもバイトがこない、といった状況が多々見受けられる。船を移動しても魚影はあるのにやっぱり食わないといった経験をしている人は多く、筆者自身もそういったケースが増えていると感じている。その結果、ブリのジギングそのものがテクニカルになってきており、アングラー自身の「引き出し」の多さが釣果の決め手になるケースが少なくない。いざブリのジギングを始めたはいいが、そういったシビアな状況を打開できず、「壁」を乗り越えられない初心者は多い。そんな「壁」を乗り越えるためには、ジギンガーとしてのレベルアップが必須だ。

 

ジャークは「スロー」がトレンドに

もはやブリジギングの王道アクションと言っていい、スピニングタックルによるハイピッチジャーク。ところどころでロングジャークを織り込むこともあるこのテクニックは、オフショアジギングで多用され、魚群探知機に反応さえ出れば、ほぼ確実に釣れていた。

もちろん現在でも通用するテクニックの1つではあるが、ここ数年はハイピッチジャークに反応を示さず、口を使わない魚がいるばかりか、逆にジグを避けるケースが散見される。

筆者の推測ではあるが、ハイピッチジャークがフィールドを荒らしているとするなら、むしろこのアクションは封印した方がいいのでは、と思うことさえある。そんな時に効果的なのがスロー系のアクションだ。

ベイトタックルを使用することの多いスロー系ジギングは、ロッドを軽くフワッとあおってジグを持ち上げた後、フォールしながらリールを1/4ピッチ(※ピッチ=回転)やハーフピッチ、状況によってワンピッチで巻き上げる。

ブリはフォールで食ってくることが多く、そんな時の当たりは手元の重みや、ラインテンションの緩みで判別できる。近年、スロー系アクションを多用するアングラーが増えており実際、釣果も上がっている。

このスロー系アクションはヒラメや根魚にも有効で、リールの巻き重り(注※リールを巻いたときに感じる重さ)が少ないベイトタックルは、身体への負担が少なく、疲れにくいのも長所だ。

巻き上げ速度に関してはスピニングタックルに分があるが、近年はハイギア仕様のスピニングリールと同等かそれ以上のスペックの製品も出てきており、従来ベイトリールでは演出しにくかったアクションも可能になっている。

スピニングタックルを使用しているビギナーは、余裕があればベイトタックルも準備して対応力を上げていきたいところである。

スロー系アクションはヒラメや根魚にも有効である
近年のベイトリールはスピニングと同等かそれ以上のハイギア仕様がある

 

フルソリッドロッドでばらしを軽減

一般的なロッドはチューブラー(中空)構造だが、筆者のベイトロッドはフルソリッドである。ソリッドとは、ブランクに空洞がなく、中身がぎっしり詰まっているロッドを指す。中に空洞がないため外から力が加わってもつぶれにくく、折れにくい。

この特性ゆえ細く繊細に作ることができ、ロッドはしなやかなベンディングカーブを描く。魚の動きに対する追従性にも優れ、よどみなく奇麗に曲がることで魚の首振りや急な反転にも柔軟に対応する。

しばしば「たたかれる」と表現されるが、ファイト中にロッドのティップが「タンタンタン!」と連続して小刻みに刺さり込むような動きは、ばれる可能性が高いもの。この動きは魚の首振りによってルアーが振り回されることで発生するが、フックが刺さった状態で重たいジグが振り回されているので、フックには相当な負荷が掛かる。

そこにロッドの反発力も加わるので、いつ口切れが発生してもおかしくない。しかしフルソリッドのロッドであれば、反発力が軽減されるためばらしが減り、安心してやり取りが行えるのである。

不意打ちのようなバイトがあったときも、ソリッドのロッドは非常に有効だ。通常、フォール中にバイトがあっても気付くことは少ない。大抵はフォール後にジグをジャークした瞬間に重みを感じ、ようやく魚がアタックしていることに気が付くケースが大半である。

そんなジャーク中の一瞬にバイトを察知し、そのままフッキング動作につなげられればベストではあるが、通常、ジャークでジグを跳ね上げた後、アングラーはジグをフォールさせるため反射的にロッドを下げてしまうもの。

その結果、テンションが緩んで魚がばれてしまう危険性が高くなる。特に反発力の強いロッドはテンションが緩みがちだが、そんな時もソリッドロッドは優れた追従性を発揮してばらしを軽減してくれるのでお薦めだ。

ソリッドのロッドは追従性が高くばらしが減るのでお薦め
ブリの首振りとロッドの反発力によってジグには相当な負荷がかかる

 

ジグの動きを再確認する重要性

釣果が得られないとき、アングラーはあの手この手で試行錯誤を繰り返す。そんなとき、ジグが水中でどんな動きをしているか常にイメージしておくのは非常に重要である。

特に気を付けたいのは、速巻きやハイスピードのアクションを行うときで、こういったアクションはジグをグルグルと回転させてしまう危険性がある。

ジグが回りだすと魚の食いが急に悪くなるので注意したいところ。それぞれのジグをどの程度の速さで引くと最良のアクションになるのか、事前に把握しておくことが大切である。

といっても、水中のジグの動きを把握するのは困難が伴うので、初めて使うジグに関しては、まず水面近くでアクションさせ、ぐるぐる回りだす直前のスピード感、ルアーを引く速度や感覚を頭にたたき込みたい。

地味だが大切な作業なので、面倒くさがらずに釣行毎に確認しよう。そうすれば自分のイメージと実際のジグの動きの誤差を減らすことができ、思い通りにアクションさせることができる。

ジグが回転しない速度の限界を知るのは非常に重要だ

 

「正解」というピースを埋める面白さ

「今日はこのパターンで勝負する!」という決断は決して悪くはないが、釣れても釣れなくても、あえて違う攻め方を試してみるのは、釣りの視野を広げる上で重要だ。

例えば、あえてジグのサイズを大きくしたり、今まで使ったことのないカラーを試してみたり。好調に釣れている同船者と同じアプローチ、同じアクションを真似ると釣果に結び付くケースはよくあり、筆者自身も周囲の状況は常に確認するようにしている。

いろいろな手法を試していくと、自分がイメージする以上に結果が出ることもあるので、「このサイズのジグでは釣れたことがない」、「このカラーで釣れたという話は聞いたことがない」などといった固定概念は捨て、まずチャレンジしてみることが大切だ。

いろいろな手法を試した結果、何が良かったのか、あるいは悪かったのか、パズルを解くように「正解」という名のピースを埋める作業は案外面白いものと感じている。

さまざまなジグを試してパズルのピースを埋める作業が面白い

 

最後の「あがき」が吉と出ることも

ブリが口を使わない状況に陥ったとき、ジグのアクションやカラーを変えても反応が得られないようなときは、最後の手段としてフックに目を向けてみるのも面白い。

アピール度を上げるため、アシストフックにタコベイトをセットするのはそういった手法の一環である。ジグ本体ではなくフックのアピール度を上げると、フック自体を食わせるイメージになるため、アクションは控えめ。もはやジギングではなくエサ釣りに近いが、「あがきの一手」として試してみる価値はある。

タコバイトをかぶせたフックで魚の興味を引く手法もある
タコベイトをかぶせるとフック自体がベイトに見える!?

 

「慣れ」が生むタモ入れの危険性

タモ入れは近くにいる人にお願いすることが多いが、ブリをタモに誘導する際、ロッドはタモの方に、正確に言うと「タモ入れしてくれている人」の方に引っ張り上げることが多いと思う。

しかしこれだと万が一魚からフックが外れたとき、ジグがタモを入れてくれた人に向かって弾丸のように飛んでいき非常に危険だ。

そのため取り込みの際は、たとえフックが外れても「ジグが人に飛んでいかない角度と距離」を意識することが重要になる。具体的には、ロッドが引き込まれる向きの反対に人がいないか常に注意を払い、トップガイドから出ているラインの長さをなるべく短くするよう心掛けると、たとえフックが外れても事故につながる危険性は低い。

こういった事故は釣りに対する「慣れ」や「油断」が出る頃に起こりやすいので気を付けてもらいたい。

タモ入れはロッドを引き上げる角度と距離に注意しなければならない