11月ともなると日本海は季節風が強く、深場への出港機会は大幅に減る。だが初冬のヤリイカは港から近い場所で釣れるので、チャンスは決して少なくない。しかもセット釣りなら、根魚やカレイ類も同時に狙えてお得だ。
(伊藤 禎恭)
浅場の釣りがスタンダードに
これからの時季は寒さと波、風に耐えながらの釣りになります。今年はコロナ禍で遊漁船のキャビンに入りづらいのですが、長時間船上で寒さを耐え忍ぶのはかなり過酷です。しかし漁場が近くにあれば、キャビンに入らずポイントまで往復できます。海が多少しけても出港できる可能性が高まります。社会情勢的にも、時季的にも、これからは近い漁場が理想的なのです。 近場の釣り物としてはヤリイカやソイ、ガヤ、抱卵物のホッケなどが代表的です。最近注目を集めるマガレイやクロガシラなども含め、漁港から近く浅場で楽しめる沖釣りを中心に紹介します
美味なヤリイカは「イカの貴公子」
この時季人気のターゲットの1つがヤリイカです。透明な身と美しい魚体から、一部で「イカの貴公子」とも呼ばれています。身は柔らかく甘みはマイカの比ではありません。エンペラやゲソでさえ刺身で食べられるほど柔らかく、イカの中でも高級品として扱われます。マイカと違って通称コメ虫と呼ばれる寄生虫がほとんど付いておらず、知人にお裾分けしても安心です。
ヤリイカ釣りは日中が基本
積丹半島では夏の夜にいさり火の中で釣るのが昔ながらの釣り方です。しかしヤリイカに関しては日中の釣りが基本になります。
確かに夜釣りでも釣れなくはないのですが、この時季の夜釣りは、あまりの寒さに体が悲鳴を上げてしまいます。ヤリイカは朝よりも昼からや夕まづめにかけて当たりが多く、出港時間も朝の9時、10時と遅いので早朝の極寒が避けられます。
周囲が暗くなって急激に気温が下がる前に沖上がりする遊漁船も増えているので、利用しやすくなっていると言えるでしょう。
タックルは当たりの見極めやすさで選ぶ
当たりを取るのが難しいと言われるヤリイカですが、適切なタックルなら微妙な当たりを的確に捉えることができます。仕掛けに抱き付いても強く引き込むことは少なく、サオ先にわずかな違和感を感じたり、サオ先からふっとテンションが抜ける程度の当たりが多くなります。そのためロッドテイップの感度が非常に重要です。
お薦めは先調子のショートロッド。テイップは感度重視のソリッド穂先がいいでしょう。柔軟性があるので、波で大きく揺れたときに意図せず強いテンションが掛かっても、身切れなどによるばらしを軽減することができます。長さは1.8〜2.1m、オモリ負荷60〜100号クラスが扱いやすいと思います。
サオを常に手に持って釣るため、できるだけ短く、軽量なサオであればあるほど、長時間集中して当たりを見極めることができるはず。適切なロッドを使えば、ヤリイカの微妙な当たりを苦労せずに見極めることができます。
基本はプラ角。カンナバリはダブルで
プラ角(ヅノ)仕掛けを使います。マイカでよく使われるオッパイバリは使いません。長さは11cmまたは14cmで、小〜中型のヤリイカが多いときは前者を、大型が多いときは後者を使います。プラ角のカンナバリはダブルがいいようです。ヤリイカはゲソ(足)が柔らかいのでばらしが多く、ダブルのカンナバリを使うと取り逃しを減らせます。
仕掛けのミキ糸は8〜10号で、ハリ間隔は90cm前後。ハリスは6〜8号で、ハリスの長さは5〜10cmほど。潮が速かったり、低活性の日はハリスを細く、長くする方向にシフトすると当たりが増えます。ハリ数は5〜7本。大抵底釣りなので、必要以上のハリ数はあまり効果がありません。プラ角仕掛けの中にスッテやウエートのないエギを交ぜるのも効果的で、筆者も一番下のハリをスッテバリにしています。日によってはスッテバリに当たりが集中することもありますが、スッテバリばかり使っていると見切られてしまうので、付けるとしても1、2本程度にとどめておくのが無難でしょう。
ボトムで当たりが少ないときの対処法
「ヤリイカは大抵底で釣れる」と前述しましたが、ボトム(底)ばかり探った結果、当たりが減ってしまうケースがあります。確かにヤリイカは基本的にボトム周辺を回遊します。しかし同じタイプのハリばかり使っていると、ハリ慣れして見切られてしまい仕掛けに抱き付いてもらえません。
そんなときは一旦、10mほど仕掛けを上層に巻き上げてから再び下ろすと、イカが抱き着くようになります。一時的にイカの視界から仕掛けを消し去ることが、当たりを増やすこつなのです。
前述したように、ヤリイカの当たりは小さく微妙です。ですから少しでも違和感を感じたら軽く合わせてみてください。テイップが下に入ったり、逆にテンションが抜けてかすかに上がったりするような当たりでも、合わせてみることが重要です。こういった当たりに対して何度か合わせているうちに、当たりの見極めができるようになるでしょう。
ヤリイカはゲソ(足)が柔らかくばらしの多いイカです。取り込むときはできるだけゆっくり巻き上げる必要がありますが、波のあるときは船が揺れて瞬間的にテンションが抜けるので、状況によりリールを巻くスピードを調整してください。
しゃくりはゆっくり。ステイで食わせる
しゃくり方を説明します。サオ先を50〜60cm幅でゆっくり上下させます。強いしゃくりは必要なく、ステイでイカに抱き付く「間」を与えてやることが肝心です。具体的には、3回しゃくったら3秒ほどステイで間を置いた後、スローで巻き上げます。この動作で10mほどタナが上がったら、再び元のタナまで仕掛けを下ろします。ただし経験上、夕まづめや高活性の日は、ボトムから20m以上上で当たりが集中することもあります。そうなると広くタナを探る必要が生じるので、頭に入れておきましょう。
ライトタックルでヤリイカを楽しむ
最近人気があるのがイカメタルゲームです。ルアーロッドに小型のスピニングリールといったライトタックルでイカを狙う、ゲーム性の高い釣り方です。
ロッドは7〜8フィートのイカメタル専用ロッドを用い、0.8〜1号のPEラインを100m以上巻いておくのが標準的です。リーダーは16〜20Lbクラスが適当。専用ロッドが無くても、ショアで使う一般的なルアーロッドで代用可能です。イカメタルのウエートは40〜80gで、リーダーにノンウエートのスッテバリやエギを1、2個付けるのが最近の主流です。イカメタルだけの場合よりもアピール力が高まり、広いタナを捉えることができます。スッテバリなどのハリスは7〜8cmが適切です。カラーは定番の赤をはじめ、グロー系、ナチュラル系などをそろえておきましょう。シルエットが小さくウエートのあるタングステン製は、潮の速いときに有利です。
釣り方は簡単で、ボトムへ下ろしたイカメタルをスロージャークやシェイクで誘います。大事なのは、ここでもステイで食い付く〝間〟を与えること。微妙な当たりを取りやすいイカメタル専用ロッドなら、わずかなティップの違和感を的確に捉え、初心者でも当たりが見極めやすくなります。「当たりかな?」と迷ったら、とりあえずやや強めに合わせてみて下さい。
セットでしけ後の根物も狙ってみる
この時季、ヤリイカとセットで狙えるのが根魚です。春に産卵を終えたソイ類やガヤは、夏の間はエサを求めて比較的根周りに散らばりながら回遊しています。しかし、しけが多くなるこれからの時季は大きめの根に集まる習性があるので狙いやすくなり、大漁確率もアップします。
対象は、前述のソイ類やガヤの他、アブラコ、ウスメバル、そして最近積丹半島で増えてきているといわれるアオゾイなどです。この時季は抱卵した大型のホッケが狙えるのも魅力です。
タックルは、電動リールに7対3の先調子のサオと、長めのハリスが付いた胴突き3本バリ仕掛けで、エサはイカやサンマなどの身エサの他、オオナゴなどを使います。狙いを大型のソイに絞る場合は、ハリを18号クラスのフカセバリやソイバリに交換し、エサを大きめに付けることでガヤなどの外道が掛かりづらくなります。
ジグやインチク、タイラバなどを使ったライトタックルでも狙えますが、あまり大きくスライドする物やアクションの大きな物は避けた方が無難。あくまでスローで攻められるタイプがお薦めです。
近年は大型マガレイやクロガシラも
積丹沖では春先、大型のマガレイやクロガシラが釣れることが分かってきました。おそらく秋も釣れると思われます。漁場はヤリイカ同様に港から近く、水深30〜40mの浅場です。タックルは一般的なカレイ用が流用できます。仕掛けは片テンビン13号クラス。エサは生イソメや塩イソメです。釣り方は、一般的なカレイ釣りで見られる小突き中心の誘いでよく、春の抱卵した大型のカレイほどはプレッシャーが掛からないので、細かなテクニックも不要です。ただし時季的にフグがいるかもしれないので、予備の仕掛けは十分に用意しておきましょう。
終わりに
ヤリイカを中心に、根魚やカレイ類が近場で楽しめるセット釣りは、この時季ならではの釣りです。朝方にヤリイカが不調なら、根魚やカレイを狙いつつ、夕まづめにヤリイカの活性が上がるのを待つと無駄が無く、効率的な釣りが展開できます。最近はこういったセット釣りに理解を示す遊漁船も増えています。セット釣りでは、根魚以外にヒラメ、サクラマス、ホッケも対象になります。ぜひ船長に相談した上でセット釣りにチャレンジしてみませんか?