初夏、南十勝のソルトルアーは海サクラマス一色に染まる。気持ちよく晴れた青空の下、Tシャツ1枚でサーフゲームが楽しめる爽快さはこのエリアならではの特典だ。これから旬の南十勝のショアサクラゲームにぜひ挑戦してみよう

依然として高い南十勝のポテンシャル

サクラマスの放流事業が終わり月日が経つが、それでも南十勝エリアにはヤマメの生息河川が多く、海サクラのポテンシャルは依然として高いままである。

シーズン中は岸寄りで跳ねが多く近距離を狙いがちだが、海サクラは遠くからルアーを追い、波打ち際で食い付くことが多いので、遠投で広範囲を探った方がヒット率は高い。

シーズンの主な流れとしては、まず4月ごろから海アメと海サクラが釣れ出し、ゴールデンウイーク前後に海サクラがぐっと上向く。おそらく海サクラの第1陣がこの頃に来ているのだと思う。

30年ほど前は6月中旬〜下旬がピークだったが、近年は7月によく釣れる傾向がある。最盛期には河口付近に驚くほどの大群が集まることがあるが、こういったシチュエーションに出合えれば、短時間で数釣りできる可能性が高い。

 

サーフフィッシングはハリ先に注意を

貴重な海サクラを釣るにはルアーセレクトも大切だが、フックの存在も忘れてはならない。

よく釣る人はラインはもとよりフックにも気を使う。ハリ先の点検は小まめに行い、ハリ先が皮膚を滑るようなら即交換しよう。

ハリ先の鋭さを保つため、ルアーのピックアップ時は砂浜に擦らないように気を付けたい。

メタルジグやスプーンを砂浜にずり上げると、小砂利などが原因でへこみ、そこから塗装が剥がれるのでこちらも注意が必要だ。

ハリ先は常に確認し、甘ければすぐにシャープナーで鋭くしたい。右は針先が甘くなったフック
サーフではジグやスプーンの取り扱いに注意しないと塗装が剥げやすい

波打ち際でのばらしを減らす方法

サーフフィッシングの海サクラは波打ち際でのばらしが多いが、やり方次第でばらしをかなり軽減できる。

よくやりがちなのがヒット後に後ろへ下がり、強引に魚を浜へずり上げるやり方。これだと余計な力がハリに加わり口切れが起きやすい。

これを防ぐには波打ち際まで魚を寄せ、釣り人自身が迎えに行く感じで波打ち際へ近寄る。そしてロッドのしなりとドラグで魚を疲れさせ、距離を詰めてから波に合わせて魚と一緒に浜へ上がるイメージでランディングすると、ばらしが減る。

ばらしの防止にはドラグ設定も重要だ。普段はきつめでいいが、ヒットした魚が寄ったら緩めにするのがいいと言われている。

伸びが少ないPEラインが主流の現代は、ばらしを最小限にとどめるため、魚の急な動きに追従するしなやかさとバットパワーを併せ持つロッドが求められる。

魚を強引に引き寄せるのではなく、釣り人が魚を迎えに行き、波に合わせてランディングした方がばらしが少ない

根魚ではないサクラマスが根魚に着く!?

日本海同様、南十勝にもサクラマスがたまるポイントがあり、そんな場所では毎年跳ねも多い。

漁師さんいわく、そういった場所には根が点在していると言い、「サクラマスは根に着く」と言う人もいる。

根魚ではないサクラマスが海藻根や岩礁などにつくのは、ヤマベとして川で生活していた時に、岩陰などに隠れていた習性の名残なのかもしれない。

南十勝は海岸の変化が乏しく、広大なサーフが延々と続くが、海岸線を歩くと沖に消波ブロックが設置されている場所もある。

このような場所には魚がつきやすく、消波ブロック沿いに跳ねが見られることも多い。河口周辺だけでなく、海岸線を歩いて新たなポイントを開拓するのもこの釣りの魅力の1つと言えるだろう。

沖に消波ブロックのある好ポイント

遠くからルアーを追うサクラマス

シーズンに入ると休日には河口周辺に釣り人が集まり混雑するが、そんな時は状況把握のため海を広く観察しよう。

広尾町十勝港以北の海岸は比較的ブレークラインが近く、手前でヒットすることが多いので、遠投する必要はないと思われがちだが、実際はかなり沖からルアーを追いかけて来て、手前で食い付くケースが少なくない。

近年のようにアングラーが多い状況では、近くで跳ねるサクラマスはすれていることが多いので、遠投して広範囲を探る方が有利だ。

そんな理由でメタルジグは使用頻度が高い。ルアーがよく泳ぐ速さでただ巻きしよう。どちらかといえば海サクラはナチュラルな動きより、ブリブリとした動きに反応がいいと感じているので、海が平穏な時は動きに変化を与えるため軽くトゥイッチを入れることもある。

また、太平洋に面する南十勝はうねりが高く、なぎが少ないので、うねりが強い状況でルアーを速巻きすると宙に飛び出しやすい。そのためうねりに合わせてリールを巻く速さを調整する必要がある。

近くで魚が跳ねているのに反応がない時は、ロッドを立て気味にして手前をじっくりスローで巻くと反応することが多い。周りに人がいないときは、斜めにキャストしてブレークラインをじっくり探ろう。

経験上、あまり潮が動かない長潮や若潮でも爆釣したことがあるので、潮回りに対して過度に神経質にならなくてもいい。経験上、南十勝の海サクラは水温が13℃になると一気に岸寄りすると感じている。

< 南十勝ポイント解説 >

 

音調津河口海岸(広尾町) 「80m先の深みがポイント」

音調津漁港の沖堤のおかげで比較的波が立たない場所。シーズンを通してサクラマスの跳ねが見られる。

河口周辺はゴロタ場で根もありサクラマスが着きやすいが、水深が浅く根掛かりに注意がいる。約80m先の深みが狙い目。

河口から左へ20mほど行くとゴロタ場から砂浜のワンドに変わる。ここは手前から深い見逃せないポイント。サクラマスは港内でも釣れる。

砂と石が入り混じる音調津川河口海岸の釣り場
楽古川河口海岸(広尾町) 「波が立ちにくい幅500mのサーフ」

右の十勝港北防波堤から左の釣りデッキまで500mほどあるサーフ。河口付近まで車で行けるがスタックの可能性があるので無理は禁物。

沖合に同港の沖堤などがあるため波が立ちにくいのが特徴。北防波堤から20mほど左に浄水場からの小さな流れ込みがあり、この周辺でよく跳ねが見られる。

8月20日から11月30日まで両海岸300mの河口規制がある。河口左にある釣り広場は一部が崩れているため立ち入り禁止。

十勝港の沖堤などのおかげで波が立ちにくい楽古川河口海岸
野塚川河口海岸(広尾町) 「河口が閉じていても問題なし」

小規模な川で、まれに河口が閉じていることがあるが、川水は伏流して海に流れ込んでいるので、閉じた河口付近に遡上できないサクラマスがたまることもある。

河口から豊似方面へ進むと小さな流れ込みがいくつかあり、ラン&ガンで探るのも手だ。左海岸約1km地点には、南十勝では珍しい岩場もある。採砂プラント側は駐車禁止。

豊似方面に進むと小さな流れ込みがいくつかある野塚川河口海岸
豊似川河口海岸(広尾町) 「南十勝で最も知られた釣り場」

釣り雑誌などで度々取り上げられることもあり、南十勝で最も有名なポイントの1つ。

水量豊富で、上流にはヤマメも多く、河口海岸はサクラマスの魚影が濃い。ただしアングラーの数も多いゆえ早朝は避け、日中に行くのもありだ。

河口右海岸側は沖に消波ブロックが入っている場所があり、ここでサクラマスがよく跳ねている。

南十勝の随一の人気釣り場に釣り人がずらりと並ぶ
紋別川河口海岸(広尾町・大樹町) 「釣り場広くビギナーにお薦め」

旭浜漁港の右に流れ込むサーフ。駐車スペースから近く、釣り場も広いので初心者にもお薦め。隣の歴舟川に遡上するサクラマスも近辺を回遊していると思われる。

紋別川から広尾側へ1kmほどの場所にある小紋別川の上流にはサケマスふ化場があるためか、シーズンには河口付近でサクラマスの跳ねが頻繁に見られる。距離はあるが行く価値は十分ある。

紋別川河口海岸は駐車スペースから近くビギナーにお薦め
旭浜海岸(大樹町) 「伏流水が魚をおびき寄せる」

大樹漁港(旭浜地区)の左にあり、急なかけ上がりになっている玉砂利のサーフ。

サケのシーズンは投げザオがずらりと並ぶが、サクラマスもここにたまることがある穴場的なポイントだ。

地元の人の話では、淡水が伏流水として流れ込んでいるそう。同漁港内でもサクラマスの跳ねがたびたび見られるが、東防波堤および南防波堤は立入禁止なので注意を。

漁港左の海岸から流れ出る伏流水が魚をおびき寄せる