魚釣りの醍醐味として「食べること」を一番に挙げる人も多いのではないか。しかし、魚を生で食べるなら、寄生虫という危険が常につきまとう。そして、魚に寄生する寄生虫の代表格と言えるのが通称「アニー」ことアニサキスだ。

 

刺し身の上を這うアニサキス

「魚に付く寄生虫といえば?」と問われれば、釣り人かどうかに関わらず、大半の人が「アニサキス」と答えるだろう。アニサキスはそれほどまでに有名な寄生虫界のトップ・オブ・トップだ。細長く透明で、幼虫のような姿で魚の内蔵や身の中を這い回るその姿を見て、ゾッとした経験がある人も少なくないのではないだろうか。

アニサキスは回虫目アニサキス科アニサキス属の線虫の総称で、長さはおおよそ2~3cm。ロックフィッシングで人気のアブラコやソイ、昨年道東の港に群れが入り世間を賑わせたサンマをはじめ、北海道でもポピュラーな釣り物であるサバやマイワシなど多くの魚類やイカに寄生するのが特徴だ。

 

アニサキス症について

アニサキスは主に魚の内臓の表面に寄生することが多いが、宿主が死ぬと、時間経過とともに身に移る。そしてその身と一緒にアニサキスを生きたまま口に運ぶと大抵は排泄されるが、まれにアニサキスが胃や腸に刺さり、腹痛や吐き気、嘔吐などといった症状を引き起こす。これが「アニサキス症」と呼ばれる寄生虫症の一種で、日本国内で最も多い寄生虫症である。またアニサキスが体内に入ることでアレルギー症状の一種、アナフィラキシーショックを引き起こすことがあり、これはアニサキスの死骸を食べてもアレルギーの出る可能性があるため、生魚だけでなく焼き魚も食べることができない。

 

寄生虫症の対策

この厄介な寄生虫症を引き起こさないためにできることはなにか。それはアニサキスを死滅させることだ。アニサキスは摂氏60度で1分以上の加熱、または70度以上の加熱により死滅する。またマイナス20度以下で24時間以上冷凍しても死滅させることができる。

過熱も冷凍もできない場合、どうしても生食したいときは、食べる前や調理の前に目視でしっかりとアニサキスがいないか確認して取り除くのも手だ。なお、わさびやしょうゆ、食酢、塩といった調味料に漬けても駆除効果は期待できない。

ちまたで耳にする「よくかめばアニサキスにダメージを与えられる」といううわさについては、厚生労働省が推奨するアニサキス対策には記載がない。あくまでうわさはうわさでしかなく、科学的検証もされていないので信用しないように。

前述したが、アニサキスは宿主が死ぬとある程度の時間をへて身に移る。つまり釣った後にすぐにさばけばアニサキスが身に移ることはない、ということ。ただし当サイトの特集「えっ! ここに捨てるの? 釣り場で魚をさばくのは是か非か 」を参照していただければ分かるが、釣り場で魚をさばく行為自体は問題ないが、アラや臓物などの投棄は違法となるので注意したい。

アニサキスを死滅させる最善策は焼き魚にすること
アニサキスはアジをはじめ魚類全般に寄生する