水温も下がり、これから本格化する秋の釣りに備え、主に後志地方や檜山地方で釣れる日本海の魚に的を絞って、知っておきたい魚の習性や攻略の基本、狙いどころなどについて詳しく解説する。 (本紙編集部)
ホッケを狙う
産卵期の成魚の行動形態
後志、檜山の秋の釣りと言えば、何と言ってもホッケが代表格だろう。釣って良し、食べて良しの人気魚種だ。ただ注意しなければならない点が3つある。
1つは、10月下旬から11月下旬にかけて行われる産卵だ。この時季の成魚(主に33cm以上)は、雌と雄で行動形態が異なる。
まず雌だが、産卵は1回で終了するのではなく、数回に分けて行われる。雌は1回ごとに産卵場を離れ、栄養補給のためエサ取りを行う。摂餌が終わったら再び産卵場へ戻り、再び放卵する。これを複数回繰り返す。つまり雌は産卵場とエサ取り場を交互に行き来しながら、産卵期を過ごすわけだ。
一方、雄は産卵場にとどまり、産み付けられた卵を守る。ホッケの卵は岩のくぼみなどに塊として産み付けられ、これを守らないと根こそぎソイ類などに食べられてしまう。産卵場は水深15m以上の深場にある。
この水深はマゾイやシマゾイの生息エリアにあたる。このためホッケの雄とソイ2魚種との間で、卵を巡る争いが行われることになるが、回遊魚のホッケの方が根魚である2魚種より瞬発力、持続力共にレベルが上であるため、卵を食われる確率は低いと思われる。
未成魚の動き
次に注意すべき点は、未成魚(主に32cm以下)の動きだ。未成魚はだいたい1~3歳である。エサ取りを主な目的として岸寄りする。厄介なのは、未成魚同士で群れをつくって岸寄りする点だ。この群れに遭遇すると、釣れるホッケのほぼ全てが32cm以下の未成魚ということになり、良型はほとんど釣れない。
産卵後の雌の動き
注意すべき最後の点は、成魚の雌の動きである。産卵期の雌は脂のりがよく、特に大型になればなるほど脂分が濃厚となる。しかし11月下旬ごろに産卵を終えると、体から脂分が消え、それを補うために水分を多く含むようになり、身体全体が水っぽくなる。いわゆるホッケの「ホッチャレ」だ。12月から釣れるホッケがこれに当たる。型はよく釣り応えはあるが、抱卵物に比べたら味は格段に落ちるので、注意が必要となる。
産卵期の釣りの鉄則
産卵期の成魚の雌を釣るには、何よりタイミングが重要となる。産卵場とエサ取り場を行き来するため、岸寄りしている時間は短い。釣れ始めたら、一息に釣る必要がある。この時季のホッケは夜にエサ取りをすることも多い。よく起こるのは、夜釣りで投げ釣りをしている釣り人が良型を釣っているので、夜が明けた後も釣れると思って朝方ウキ釣りを行ったらホッケの姿がない、という現象。良型が釣れ始めたら間髪入れずに釣る、これが鉄則となる。
クロガシラを狙う
秋のクロガシラは美味
秋のクロガシラ(マコガレイを含む)もホッケ同様、釣って良し、食べて良しの人気魚種だ。春の方が秋よりよく釣れるが、味という点では「春物」は「秋物」より劣る。これは産卵時季と関係がある。クロガシラの産卵は主に2~3月。産卵を終えるとエサ取りを開始するが、これは全て雌である。雄は産卵場に残り、卵を守るからだ。産卵を終えた雌は食欲が旺盛。型がいいのが特徴だ。ただ産卵で脂分を消費しているので脂のりは悪く、全体的に水っぽい。これに対して、秋のクロガシラは身が締まっていて脂分も多く、食べておいしい。
狙い所と釣り方
アブラコを狙う
産卵期の成魚の行動形態
アブラコ(標準和名アイナメ)も秋の人気魚種の1つだ。ホッケ同様、10~11月に産卵する。雄雌の生態もホッケと同様、雌は複数回産卵し、雄は卵を守るため産卵場にとどまる。
ただホッケと異なるのは、卵の生存状況だ。ホッケの産卵場が水深15m以上の深場であるのに対し、アブラコの産卵場は水深10m前後と浅い。この水深エリアは、ホッケの雌やクロゾイが活発にエサ取りを行う範囲。卵は細胞をつくるためのタンパク質が過不足なく含まれているため栄養価が高く、どの魚にとっても喉から手が出るほど欲しい代物。従ってこの両者とアブラコの雄の間で卵を巡る熾烈な争いが起こる。
しかし、この争いはアブラコにとってかなり不利。というのも、ホッケやクロゾイの方がアブラコよりも泳ぎが達者で機敏、瞬発力もあるからだ。アブラコが産む卵の数は非常に多い。にもかかわらず、ホッケの個体数に比べアブラコの個体数がかなり少ないのは、この争いによって食べられてしまう卵の数が多いためだと考えられる。
狙いどころと釣り方
ホッケ同様、アブラコの雌の成魚を狙う。春にアブラコが釣れたポイントが良い。昼夜の別なく、しかも短時間のエサ取りとなるため、タイミングが勝負となる。クロガシラ同様、ホッケの岸寄りが本格化する前に狙うのが良い。イカゴロを食わせエサにして投げ釣りで狙うのがいいだろう。
クロゾイを狙う
狙いどころと狙う時間帯
秋はクロゾイ(標準和名クロソイ)の動きが活発になる季節である。産卵は4~5月ころの春なので、この時季はエサ取りが主体となる。特に25~35cmがよく釣れる。狙いどころは淡水と海水が入り交じった汽水域。河口からの遠投や川水が入り込む漁港などが狙い目となる。狙う時間帯は夕まづめから朝まづめにかけての夜間。特に夕まづめから午後10時くらいまでが狙い目となっている。
ルアーやウキ釣りがベスト
足元から水深がある所を狙う場合は、クロゾイが上層や中層を泳ぐ小魚を狙う性質があることを利用してルアー釣りやウキ釣りを行うのがよい。投げ釣りを行う場合は、イカゴロを食わせエサにすると、当たりの到来が速くなる。
マゾイとシマゾイを狙う
良型を釣るのは難しい
秋のターゲットの中で一番釣るのが難しいのがマゾイ(標準和名キツネメバル)とシマゾイ(標準和名シマソイ)だ。理由は主に3つある。
1つ目は、クロゾイのように上〜中層を泳ぐ小魚を標的とせず、底層に潜む小魚や甲殻類などをターゲットにしているためだ。このためルアー釣りやウキ釣りでは9割方ヒットしない。
2つ目は、水深15m以上の深場を生活域にしている点だ。特に35cm以上の良型は、ほとんどがこのエリアにいる。この水深エリアを見つけるのはかなり難しい。いわゆる「どん深」と言われる岩場でも、足元はだいたい水深10mほど。そういった場所からさらに沖の深場を探る必要が出てくる。
3つ目は、根がかり必至の荒根を攻略する必要がある点だ。そもそもこの両者は、砂地の海底にはいない。凹凸の激しい岩が連なる海底に繁茂する藻場や礫などに潜む。この3点から予想される釣りのイメージは、次の通りだ。
荒根が連なる海岸の中から、足元から深い岩場の先端に釣り座を構え、投げ釣りで角度や飛距離を変えながら水深15mラインを探り、当たりが来るのを待つ。
技術と体力が必要
この釣りにはさらに厄介な問題が存在する。仮に大きな当たりがあり、良型や大型がヒットしても、その飛距離が遠方だった場合、途中の凹凸の海底をかわしながら、果たして足元までターゲットを引き寄せることができるのか、という点である。実際取り込み時に根に潜られてゲットできないケースは非常に多い。従ってタックルなど事前の準備はもちろんのこと、背筋力や腕力、根掛かりを外す技術など、総合的な力を持ち合わせていないと大物や良型ゲットには至らない。
投げ釣りで狙う
マゾイ、シマゾイの産卵はクロゾイ同様、4~5月の春なので、秋はエサ取りが主な目的となる。エサは短冊に切った塩締めのソウダカツオが扱いやすい。サオは負荷重量30号以上、ラインはPE3号、太く丈夫なハリに、約1mの長さのナイロン5号の捨て糸を用いる。夕まづめから朝まづめまでの夜間を狙う。