今やルアーフィッシングの一大勢力として完全に定着したロックフィッシング。シーズンは春と秋の2回あり、特に後者はアブラコの個体数が多く、かつ大型が狙えるハイシーズンだ。(斉藤 壮平)

秋はまさにこれからがハイシーズン

夏枯れと呼ばれる海水温の高い時期は、沿岸域の高水温を嫌って魚は沖へ出る。しかし季節が秋へ移り変わり水温が下がり始めると、エサなどを求めてさまざまな魚が岸寄りするので、いろいろな釣りを楽しむことができる。  産卵期を迎える秋のアブラコは、産卵前後の体力回復と、冬が来る前に突入する荒食い態勢などの影響で、港内を含め沿岸域で積極的に捕食を行う。基本的に昼行性なので、日の出ている日中の釣りがメインとなり、デイロックには最適のターゲットといえる。シーズンはまさにこれからで、港内の中でも比較的深い船道から浅場のシャローまで、さまざまな場所に潜むようになる。水温が下がりきる12月下旬ごろまでは行動範囲が広いが、厳寒期がやって来る前までに沖へ逃げるか、ケーソンなどのストラクチャーの穴の奥に身を潜めるようになる。

デイロックの基本タックル

北海道のロックフィッシュの代表格であるアブラコを狙った釣りは人気の上昇と共にさまざまな進化をとげ、現在では多様多種な釣り方が確立されている。ゆえに最初はどんなタックルをそろえればいいのか分かりにくい側面もあるが、今回は港内や船渡しの沖堤などで有効な、最もベーシックなタックルを紹介する。

ロッド

ロッドはイラストの通り。各メーカーから発売されているリーズナブルなバスロッドやマルチルアーロッド(6フィート6インチ~7フィート)のL、MLアクションも使用できる。

リールとライン

リールはスピニング2500~3000番が適切。メインラインはPE0.6~1号で、PEの扱いに慣れていない人は1号を選んだ方が無難だ。ショックリーダーはナイロンの12Lb。ルアーとの接続にはスナップサルカンなどは使わず、ショックリーダーを直結する。PEとショックリーダーの接続はFGノットやSCノットなど強度のある専用ノットが望ましいが、簡単に結べる電車結びでも代用可能。しかし大物を想定するなら、やはり専用ノットの習得は不可欠だ。

リグ

基本的には大きく分けてジグヘッドとテキサスリグがあるが、デイロックではテキサスリグがお薦め。中でも特殊なシンカーを用いたフリリグが近年は主流になっている。フリリグに使用する主なシンカーは、ジャングルジムの「ビーンズ」、デコイの「テキダンシンカー」の2つがあり、多くの釣具店で取り扱っているので入手もしやすい。フリリグはテキサスリグ同様、誘導式のシンカーを用いるが、その特殊形状により、ロックフィッシュで障害となる根掛かりが発生しにくかったり、遠投性能が向上するなど、さまざまなルアーアクションに対応しているのが利点。シンカーは14~21g(1/2〜3/4oz)がメインで、ポイントの水深や風の強さなどを考え、テンポよくルアーの着底を把握できる重さ、「底取り」しやすい重さを選ぶといい。

デコイ、ジャングルジムから発売されているフリリグ用シンカー
ワーム

2~3インチの甲殻類系(ホッグ系)、もしくは3~4インチのシャッド系が適している。バークレイ「パルスワーム」やエコギア「リングマックス」などのカーリーテイル系やストレート系も有効だ。カラーは一般的にソルトカラーのピンクやチャート系よりも、海底の色や水の色、海藻などに似たよりリアルなグリーンパンプキンやウォーターメロンなどのグリーン系、赤黒い透過系のスカッパノンやソリッドブラックなどのダーク系およびクリア系が有効。装着するワームによってオフセットフックのサイズが変わり、ワームが2インチならフックは#2、3インチなら#1~1/0程度が適している。

アブラコ狙いの定番、エビ類やカニを模した甲殻類系ワーム
状況次第で有効な一手になり得るリング系やストレート系ワーム
ダーク系やクリア系、グリーンパンプキンなどのリアルカラーが有効だ
オフセットフックはワームに合わせてサイズを変えよう

基本アクション

アブラコは海底を好む底性魚なので、基本的にはボトムを狙う。誰でも実行可能なアクションで最も有効といえるのはリフト&フォールだろう。手順は以下の通り。

この❶〜❸の手順を繰り返すのがリフト&フォールのアクションとなる。このアクションはアブラコ狙いだけでなく、すべてのロックフィッシュを狙う際に基本的なアクションになる。アブラコは縦の動きよりも横方向への関心が強い傾向があり、同じリフト&フォールでも、リフト時にロッドを真っ直ぐ立てると、ルアーがより上に上がりややすくなる。このとき斜め方向もしくは横方向にロッドを動かすことで、ルアーに横方向への動きが加わり、アブラコへのアピールがより強くなる。

他の釣り方を模索する楽しみ

アブラコには多様多種な狙い方が存在し、前述したリフト&フォールだけが最適解ではない。他の釣り方を模索するのもアブラコのロックフィッシングの楽しみ方の1つだ。同じフリリグでもリフト&フォールではなく、等速リーリングで海底をずる引きしたり、反応がありそうなポジションで細かくルアーをシェイクして、しばらくステイさせると急にバイトしてくるといったケースは少なくない。釣り人の多さから魚がすれ気味のときは、シルエットが細めのワームが有効だったり、逆にシルエットは大きいがピンテールで波動の小さいワームが有効なときもある。

秋の醍醐味(だいごみ)、金アブを狙おう

秋シーズンのアブラコは、大型の雌は抱卵し、雄は鮮やかな婚姻色に染まる。この、魚体が丸ごと見事な金色に染まったアブラコは俗に「金アブ」と呼ばれ、ロックフィッシャーに人気が高い。面白いのが、産卵期のアブラコは雄と雌で狙い方がまったく異なる点だ。

メスは抱卵し動きが鈍くなるが、産卵に備えて体力を付けなければならないため捕食も積極的に行う。そのためリフト&フォールでも、よりスローで短いストロークのネチネチしたアクションにバイトしてくることが多い。対して婚姻色に染まった雄の金アブは、より攻撃性が高まり、スピーディーなものによく反応を示す。

なぜ雄の攻撃性が高まるのかといえば、ペアになった雌が他の雄に奪われないように守る習性があるため。産卵行動後、雄は産卵床にとどまって外敵から卵を守る習性があるのも、攻撃性が高まる理由の1つだ。この習性により、オスは早く動くものや派手なものを敵と認識しやすく、頻繁に攻撃してくる。

従って同じリフト&フォールでも、リフトのスピードを極端に速くしたり、3~5回素速くリーリングして止めるといった積極的なアクションが雄には非常に有効だ。

このように、秋のアブラコはルアーのアクションの違いによって、雄と雌の狙い方が異なるのも面白く、魅力の1つに挙げられる。

ロックフィッシャーに人気が高い通称「金アブ」

ハードルアーで狙ってみよう

金アブを狙うためには派手なアクションが有効だが、元々ソフトな素材が採用されているワームの動きには限界がある。そんな弱点を克服するには、ロックフィッシングではあまり使われないハード系ルアーがお薦めだ。筆者のお薦めは、バスフィッシングなどでよく使われるチャターベイトやスピナーベイトなどのハードルアーである。これらはハードルアーの中でもボトム付近を安定してリトリーブでき、かつルアーに装着されているブレードが回転することによって波動を発生。金アブに強烈な刺激を与え、バイトに持ち込むことができる。アクションは、一度ルアーを着底させてから、ブレードの振動がロッドに伝わる程度のリトリーブスピードでリールを巻くだけ。ルアーがボトムから離れ過ぎたら、一度リーリングをストップし、再度ボトムを取り直してリトリーブを繰り返す。これだけで、攻撃性が増した金アブがバイトしてくるので、ぜひお試しを。

バス用に開発されたシンキングのスイミングジグ、チャターベイトはアブラコにも効果的
これも本来はバス釣り用だが、アブラコ釣りに応用できる