周囲が雪景色となり、釣りには厳しい季節となったが、ニシンはそんな時季に釣れる人気魚種の一つ。ちょっとした釣り具やアイテムの違いで釣果に大きな差がでるこの釣りで、効率良く釣果を上げるには、正しい知識とアイテムの準備が大切だ。 (北條 正史)
すれたニシンはどう釣ればいいのか?
ニシンは釣り人がまく大量のマキエで食欲が満たされると食い気が落ち、俗に言う「すれ」の状態になりやすいと言われている。そんなすれた魚の釣り方を含め、ニシン釣りの基本を押さえつつ、すれたときに役立つアイテムや対処法、テクニック他を解説したい。
ロッド
磯ザオがいい。投げザオやルアーロッドでも代用できる。投げザオなら極力柔らかめが、ルアーロッドは硬めを選ぼう。ただ硬過ぎると食い込みが悪く、抜き上げ時にばらす可能性が高い。逆に柔らか過ぎると複数匹がヒットしたとき、重過ぎて抜き上げられないことがあるので、バランスを考えて選ぶのが重要だ。
リール
スピニングリールでいい。ただベイトリールは親指1本でクラッチを外してすぐに仕掛けを落とせるので手返しがいい。群れの回遊時にいかに手返し良く釣るかが鍵を握るこの釣りでは、ベイトリールのチョイスもあり。
ライン
感度重視でPEラインがお薦め。ナイロンラインは抜き上げ時のばれが少ないメリットがある。ただし巻き癖の付いたナイロンラインは小さな当たりが取りづらいので、できれば巻き癖の付いていない比較的新しいもの使用したい。
集魚ライト
仕掛けに装着するタイプがあると便利。経験上、これがあるのとないのとでは釣果の差はそれほど大きくないが、海面を照らす投光器の用意がないときは必須のアイテム。
コマセカゴ
仕掛けに装着してアミエビなどコマセを詰め、海中で拡散して魚を寄せるカゴ。パックンタイプは手を汚さず片手でアミエビを詰められ便利だ。ひしゃくでマキエをまくよりもアミエビが少量で済み、仕掛け近辺でダイレクトに拡散するので効率もいい。
集魚ライトとコマセカゴの位置
集魚ライトは仕掛けの上に付けてもいいが、ライト自体の重さや水の抵抗で当たりが取りづらい。基本的には仕掛けの下に付けるのが正解。ちなみに筆者は上から
メインライン
↓
サビキ仕掛け
↓
集魚ライト
↓
コマセカゴ
↓
オモリ
の順。オモリ内蔵のコマセカゴならオモリは不要。
ジグ
あくまで予備的なアイテムだが、18~28g程度のメタルジグをオモリ代わりに付けるのも有効。過去にニシンの食い渋りが起きた際、マキエが見向きもされないことがあり、試しにオモリの代わりにメタルジグを付けると、途端にその仕掛けにだけニシンが食い付いて驚いた経験がある。おそらくジグの動きやフラッシング効果がすれ気味のニシンの興味を引いたのだろう。ジグサビキは最近流行の釣り方でもあり、キャストして探るのも手だ。
すれたときはエサを付けて置きザオで
ニシンがすれてしまい、仕掛けを見切られてしまうことがある。そんなときは一般的なサビキ仕掛けを素バリ仕掛けに替え、スピードエサ付け器でオキアミを擦り付けるいい。仕掛けの投入はエサが落ちないようにゆっくりが基本。基本は置きザオだが、状況次第で誘いをかけることも。
ロッドホルダー
置きザオで様子を見るときはロッドホルダーがあると便利。車止めに据えるタイプもあるが、ロッドを手に取るたびに腰をかがめる必要があり、何度も繰り返すと腰が痛くなるので高さのある三脚タイプがいい。スピードエサ付け器も同様の理由で三脚タイプがお薦め。
投光器
夜釣りが中心なのでほぼ必須アイテムと言っていい。海面を照らし集魚効果をもたらすが、小さな当たりで発生するラインの微妙な変化を捉える際もこれがあれば判別しやすい。
防寒グッズ
立ちっぱなしの釣りなので足元からの冷えには特に注意がいる。長靴は少し大きめを選び、ウレタン製の厚めの中敷きを敷くのがベスト。足元にはつま先用の貼るカイロも有効だが、足に汗をかくと汗が冷えて熱が奪われるのが欠点。靴下を何枚も重ね履きすると締め付けが強くなり血行が悪くなるので逆効果だ。カイロを貼る場合は、足先だけの5本指の綿製インナーソックスを履き、その上から厚めの防寒ソックスを履くと長時間屋外にいても足先が冷えない。
グローブは防寒防水タイプが最適だが、このタイプはごわついて小さな当たりが取りづらい。私はネオプレーン製のグローブを親指と人差し指、中指が出るようにカットして使っている。手の甲に使い捨てミニカイロ用のポケットがあるグローブは、指先の冷え防止に非常に有効だ。カイロは手首に貼っても同様の効果が得られるが、肌に直接貼ると低温やけどの恐れがあるので、必ず衣服の上から貼ろう。
ハリの外し方
大漁には素早くハリを外す手返しの速さが欠かせないが、実はこの釣りで最も厄介なのが魚をハリから外す作業である。
もたつくと魚が暴れて仕掛けが絡まり、ほどくのに時間がかかる。そうならないためには、まずニシンが釣れたらオモリをつかんでテンションを保ちつつ三脚にサオを立てかける。このとき、ハリに掛かった状態のニシンが三脚に近い場所に来るようにすると魚が宙に浮き、暴れても仕掛けが絡みづらい。
この状態をキープできたら、サビキ釣り用のハリ外しを使って魚を外そう。素手はNG。厳寒の今時季に素手で魚を触ると、あっと言う間に手がかじかんでしまうので、魚をつかむときは必ずトングなどを使おう。
当たりの取り方
大きなニシンが仕掛けに食いつき、底の方へ泳ぎだすとサオが大きく曲がる。これが最も分かりやすい「食い下げ」の当たりだ。一方、「食い上げ」の当たりは、仕掛けに食い付いたニシンが海面の方へ泳ぐため、サオに負荷がかからず、サオに当たりが伝わらない状態となる。この食い上げの当たりを捉えられるかどうかが、釣果を伸ばすポイントといえる。
食い上げの当たりは、それまでオモリの重さで軽く曲がっていたサオ先が、負荷がゼロになることで水平状態に戻るのですぐにそれと分かる。ヒットと同時にサオ先が水平状態に戻ったら、魚が食い上げているので素早く糸ふけを取って合わせよう。同じ理屈で、ピンと張っていた糸が突然緩むのも食い上げの当たりだ。
仕掛けを下ろしている最中に糸が落ちていかず、急に糸ふけが出たときも魚が食い上げている証拠。すぐリールのベールを戻して合わせよう。何か違和感を感じたときは、とりあえず合わせてみるのが正解。こういった食い上げの当たりを捉えるには、やはり感度のいいタックルが有利になる。
おいしく食べるには血抜きが大切
ニシンは群れに当たると大漁が珍しくないが、釣れたニシンを放置するのは考えもの。釣れたらすぐに血抜きして鮮度を保てば、生臭さが減る。血抜きは、ニシンが生きているうちにエラぶたからハサミを入れてエラを切り、海水を入れたバッカンの中で泳がせる。するとどんどん血が抜ける。ただし血で染まった海水をその場で海に捨てるとニシンが警戒するので、釣れている場所には流さないようにしたい。
おいしい「糠ニシン」を作ろう
ニシンの調理には、保存が利く糠(ぬか)ニシンが一押し。筆者は全て調合済みの「糠漬けの元」をよく利用する。手順は以下の通り。
①うろこを取り、頭と内臓を取り除く。
②処理したニシンを糠にまぶす。
③糠をまぶしたニシン容器に並べ、上から糠を少量かけて再びニシンを並べる。これを必要な分だけ繰り返す。
④水分が出るように重しを載せ、涼しい場所に保管する。
5日目くらいから味見しつつ、漬ける日数を調節する。30cm前後のニシンなら1週間ほど漬ければ食べ頃だ。糠ニシンは真空パックして冷凍すると、おいしさを保ったまま1、2年保存できる。中型ニシンは素揚げしてから酢、しょうゆ、砂糖、水を混ぜた漬け汁に、千切りのニンジンやスライスした玉ねぎと一緒に漬け込む「南蛮漬け」がお薦め。魚卵がびっしり入った雌は、塩漬けして身を締めた後、だし汁で塩抜きすればお正月料理に定番の「数の子」が作れる。自分で釣ったニシンをおいしく調理して舌鼓を打とう。
混み合う釣り場の注意点
今季は魚影が薄く不調だが、今時季のニシン釣りは日本海側がメイン。中でも小樽港、石狩湾新港、増毛港、留萌港といったオロロンラインの4港が人気。この時季は釣れていればどの港も混雑するので、混雑時はサオを1人1本に控え、譲り合って釣りを楽しんでもらいたい。