タックルや当たりの出方など、すべてが繊細な氷上のワカサギ釣り。その繊細さゆえに初心者は戸惑うことも多いが、ちょっとしたこつで釣れ方がガラリと変わるのも、この釣りの特徴だ。氷上ワカサギ釣りのスキルをレベルアップする、初心者必読のマル秘テクニック。
(平田 克仁)
釣りはやっぱり平日に限る!?
初めから身もフタもない感じだが、氷上ワカサギも他の多くの釣りと同様、釣行はやはり平日が最適といえる。通常、釣り人が「釣りはやっぱり平日がいい」と言えば、それは“釣り人が少なく自分の好きなポイントでサオが出せるので都合がいい”というのと同意である。
だが氷上ワカサギの場合の「平日がいい」は意味が異なり、“人が氷上で歩き回ることによって振動が水中に伝播し、ワカサギが警戒するのを避けられるから”という意味合いが強い。
空気中で音や震動の伝わる速さは秒速約340mだが、水中でのそれは4倍以上の秒速1500mに達する。それだけ水中は振動が伝わりやすいのだ。それゆえ、釣りに飽きた子供たちが走り回ったりするなど何かと騒がしい週末や休日は、ワカサギが警戒して極端に食いが落ちるケースが珍しくない。
ゆえにもし可能であれば、ワカサギ釣りはやはり平日に行くべきなのだ。
合わせのタイミングを見極める
ワカサギに食い気があるとき、釣るのはたやすい。問題は、活性が低く、魚にやる気がない場合である。
そんなときの当たりは、ほんの少しサオ先を揺らしたり、糸がかすかに動くだけ、といったケースが大半である。これは、ワカサギがエサを吸い込んだときに出る当たりで、この瞬間に合わせることができれば、釣れる確率はかなり高い。
その後に来るやや大きな当たりは、ハリ先がわずかに掛かったワカサギがハリを外そうとして暴れている状態で、食いが渋いとき、通常この当たりは出ないこともある。たとえ出たとしても、フッキングに持ち込める確率は低く、やはり最初の当たりで合わせるのがベストだ。
こういった小さな当たりを見極めるために有効な手段の1つが、オモリを軽量化すること。オモリを1、2ランク軽くするだけで、当たりが見違えたように判別しやすくなり、食いが渋くなったと感じたときに、ぜひ試してみてもらいたい。
小さな当たりの見極めに有効な手法はもう1つある。オモリが着底した状態でほんの少し糸をたるませると、微細な当たりが格段に見やすくなるのだ。テンションのかかっていない糸は、自重が軽いだけに、ほんの少し力が加わっただけですぐに揺れる。
ただし、どちらの手法も水深が深いと使えないのが難点だ。これらの手法が有効な水深は、おおよそ3〜4mが限界。
穴は流れに沿って開ける
湖であれ、川であれ、およそ釣り場と名の付く場所には、必ず水の流れが存在する。氷上釣り場もそれは同じだ。
特に川の氷上釣り場に穴を開ける場合は、基本的に流れ沿った状態、すなわち縦に並んで穴を開けると、効率良く釣ることが可能になる。
なぜなら、ワカサギが川の中を上ったり下ったりするとき、群れは基本的に川の流れに沿って移動するから。
例えば、氷の穴が流れに沿って縦に3つ開けてあれば、タイムラグはあるにせよ、群れが回遊して来たタイミングで、どのサオにもまんべんなくヒットする確率が高くなる。
逆に、流れに正対する形で横並びに穴を開けると、どれか1つの穴にヒットが偏るケースが目に見えて増える。川岸や湖沼の岸際から、どれくらい離れた位置を群れが通るのかを見極めるのであれば、横並びの穴は意味があるが、数を釣る上では、穴は縦に並べるのが良策といえる。
マキエをまく際も、穴が縦に並んでいれば、流れに対して最も上流側に位置する穴にマキエを投入するだけで、下流側の穴に対してもマキエの効果が見込めるので一石二鳥だ。
シャーベットのフタで続くマキエ効果
マキエは氷上釣りを行う上で釣果を左右する重要な要素の1つだが、ではどのようなマキエワークが最も効果的なのか。
マキエは群れの足を止め、少しでも長く釣れるようにするためのもの。群れが寄るまではある程度量をまく必要があるが、一度寄せてしまえば、コンスタントな大量投入は意味がないばかりか、外道の多い釣り場ではかえって逆効果になってしまうことがある。
一般的に正解とされているマキエワークは、群れが寄ってからはコンスタントにちびちびまくこと。マキエの効果がゼロになるかならないか、といったタイミングで少量を投入していくのが適切だ。
そんなときに便利なのが、氷の穴が全面覆われるくらいの雪を投入して、シャーベット状のフタを作り、その上にマキエをまいておく手法である。こうしておくと、仕掛けの投入や取り込みで、じわじわマキエが散布され、コンスタントに少量のマキエをまくのと同じ効果を生み出せる。特に魚が頻繁に釣れているときは、釣っているだけでコンスタントなマキエワークになるので非常に便利だ。
一見釣りにくそうだが、仕掛けは意外にすんなり落下するし、取り込みも問題ない。水深の浅い釣り場では、氷の穴から人影を察知されると魚に警戒されてしまうが、シャーベット状のフタをしておけば、釣り人の気配も察知されにくくなる。
深場で当たりが判別しやすい『捨てオモリ仕掛け』
あらゆる釣りの中で、対象魚が最も小さい釣りの1つである氷上のワカサギ釣り。そんなワカサギ釣りでフィールドの水深が深い場合、手返し効率を上げるには、より速く仕掛けを落とせばいい。しかし速く落とそうとしてオモリを増量すればするほど、当たり感度が鈍くなるのが悩みの種だった。
これを解決するのが、ベテラン釣り師の間で常套(じょうとう)手段になりつつある『捨てオモリ仕掛け』だ。0.5g程度の軽量オモリを付け、その30cmほど下にハリスを付けて6〜8gの重たいオモリ、通称「捨てオモリ」を付けるこの手法。
仕掛け投入時は6〜8gの捨てオモリが仕掛けを素早く底へ届けてくれる。捨てオモリが常に着底した状態を保ちながら誘いを掛ければ、ラインや仕掛けに掛かる捨てオモリのテンションは実質ゼロ。誘いを掛けているときは、捨てオモリの上にある軽量なオモリの重量しか乗らないので、繊細な当たりを見分けやすく、深場でも当たり感度を保てる。深場で当たりが取れないときは、ぜひこの釣法を試してみよう。
淡水域でも有効な「掟破り」のコマセカゴで集魚はばっちり
淡水域でコマセカゴを使用するケースは多くはないが、特に深場と呼ばれるフィールドでは、沈下速度の遅いマキエよりも明らかに即効性がある。カマセカゴに詰めるのは、アミエビやイサダが中心で、中にはアカムシを交ぜるケースも見られる。基本的には仕掛けの下に付けるよりも、上に付けた方が効果的が高いようだ。半面、コマセカゴを使う際に困るのが、ウグイなどの外道が寄って来やすくなること。コマセカゴが付くぶん重量も増え、当たり感度が鈍るのも欠点といえる。だが一旦群れを寄せてしまえば、魚は仕掛けに興味を示すのか、なかなかその場を離れなくなるので、コンスタントな当たりが出始めたらコマセカゴは外した方がいいかもしれない。ただし、釣り場によってはマキエやコマセが禁止の場所もあるので、コマセカゴを使う場合は事前のチェックを怠りなく。
暗い水底で効く仕掛けとは
氷上釣りは当然のことながら、水面が氷と雪に覆われているので、水の中は夜のように暗くなる。ましてや水深の深い釣り場の場合、タナがべた底だったりすると、底層はほとんど真っ暗と言っていいだろう。
そんなときに有効なのが、ハリのチモトにぼんやり光る夜光留めが付いた仕掛けの利用だ。川底や湖底で仕掛けがぼんやり光れば、ワカサギが興味を示して寄ってくる。
さらに積極的にアピールするなら、仕掛けにケミカルライトを付ける手も。ケミカルライトは、魚類全般に視認性が高いといわれるグリーン(グロー)系がお勧め。
帰る方向が分からない! 吹雪で帰り道を見失ったときの対処法
氷上釣りは主に川や湖沼で行われるが、釣り場が広大で吹きさらしのときは地吹雪でホワイトアウトに陥りやすく、帰るべき方向が分からなくなってしまう危険性がある。
事実、2014年には網走市能取湖で氷上釣りをしていた男性が、ホワイトアウトで帰るべき方向を見失い、誤って沖側へ進んだ結果、氷が割れて落水。死亡事故が起きている。こんなとき、帰る方向を見失わないようにするためには一体どうすればいいのか?
最も簡単な方法は、釣り道具などを積んできたボブスレー、あるいはアイスドリルなどを、帰るべき方向に向けて置いておく手法だ。こうしておけば、たとえホワイトアウトになっても、帰る方向を見失わずに済む。最近はスマホの普及も進んでいるので、地図アプリなどで帰る方向を確かめるのも手だ。
スマホの電波が届かない圏外では、アプリが正常に機能しないことがあるが、そんなときは衛星の電波を直接補足するGPSナビゲーターと呼ばれるモバイル機器の利用がお勧めだ。
あらかじめ入釣場所を記録しておけば、GPSの衛星電波を元に、どこにいても帰るべき方向と距離を示してくれるスグレモノ。これがあれば帰り道を見失うことはほぼない。