日高海岸でマツカワ狙いの釣り人が集う季節がやってきた。狙いは50cmを超える大物だが、これがなかなか釣れない。そこで今回は、このクラスを数多く釣り上げているベテラン釣り師から、その釣り方などを聞いてみた。
(本紙編集部)
はじめに
今回協力してくれたのは、釣り歴35年以上のベテランである札幌在住のY氏。若いときから日高の海岸でマツカワを追い、これまで釣り上げた50cm超えの大物は優に2ケタに達する。過去にはジャスト70cm、6kg弱の大物を釣った実績もある。
マツカワ釣りで心がけていること
Y氏がマツカワ釣りで心がけているのは、しけている時を避け、なぎの時を狙うということ。これまでの経験上、釣果が出るのはしけ時よりもなぎ時の方が多いという。
マツカワはマガレイやクロガシラなどと同様、カレイ類に属する。カレイ類は目でエサを追う。赤、黄、青などの色を明確に区別できる能力を有するだけでなく、かなり遠くからでも(おそらく20m先でも)エサを認識できる能力があるとのこと。従って波にもまれ視界が利かない「しけ」の時よりも、波が穏やかで見通しが利く「なぎ」の方が釣れる確率は高い。
筆者は釣行1週間前から天気の行方を追っている。日高海岸(特に日高町や新ひだか町)は、海岸が南西に面しており、水量豊富な河川が多いことを考慮して、次の点に注意しているとのこと。
❶釣行当日はもちろんのこと、前日から北交じりの風が吹いていること。
❷釣行当日から3日前までに、雨量が多くなるような雨が降っていないこと。
すなわち海水に濁りがなく、あるいは薄く、波がない日を釣行の条件にしているというわけだ。
干満潮の見方
太平洋は日本海に比べて干満の差が大きいことで知られる。ポイントとなるのは、干満の差が特に大きい「大潮」と「その前後2、3日」である。Y氏によれば、相対的に見て「大潮」と「その前後の日」は釣れる確率が高いという。よく釣れる時間帯を聞いてみると、次の通りだった。
❶最大干潮の時刻から潮位が上昇し始める3~4時間
❷最大満潮の時刻の前後1~2時間
ただし、これらの時間帯はリリース級(35cm以下)のマツカワが結構釣れる時間帯でもあるので、注意を要するとのこと。
なお、その他の潮回り(中潮、長潮、小潮)も釣れるらしい。Y氏によれば、何かにつけ潮回りに関連付けるのは短絡的ということで、それよりも川水の流れが及ぼす影響や底荒れの程度、潮が流れる方向など、他の要素との複合で論じることの方が重要とのことだった。
他魚種の動向をチェック
Y氏が最も注目するのは、他魚種の動向である。Y氏の経験上、大物マツカワがヒットする日は、他魚種の動きも活発らしい。ハゴトコやアブラコ、カジカ、ドンコ、キュウリ、コマイなどがよく掛かってくるときは、釣れる確率が高まるとのこと。それらが釣れるということは、仕掛けを投げ込んでいる範囲内に、エサとなるプランクトンやエビ類、虫類などが活性化している証拠。逆に他魚種がまったく掛からない日は、範囲内にエサとなるものがほとんどいないということにつながる。このようなときは、厳しい釣りを強いられることが多いという。
なお、他魚種の中でもウグイ(アカハラ)は別物。これらが釣れても、マツカワが活性化している指標にはならないという。
仕掛けやタックル、エサ
仕掛けについてY氏は、これまでいくつもの仕掛けを考案しバージョンアップを図ってきたが、ここ数年はシンプルな仕掛け=イラスト参照=で釣っているという。
ヒントとなったのは、地元のベテラン釣り師たちの仕掛けだ。地元釣り師はマツカワを狙う人が多いが、その多くはこのような仕掛けを用いていることから、それにならっているとのこと。
なお近投におけるカレイ狙いで定番のコマセカゴやコマセネットの活用についてうかがうと、「効果は期待できる」とのこと。ただし過度の期待を持つのは禁物で、エサはソウダガツオやサンマの短冊がいいそうだ。
サオの出し方
Y氏が特に注意を払っているのは、サオの出し方である。防波堤の先端に釣り座を構えるような場合はイラストの通り、沖正面は遠投、船道はちょい投げで、サオは4~5本出し、飛距離や角度を変えて扇形に打ち込む。投入した仕掛けと仕掛けの間隔は各20m程度。この距離だとこの範囲内に現われたマツカワは、どの位置からも仕掛けやエサの存在を認識できる。
磯で釣る場合も、防波堤と同様にサオを出す。釣り座を構える位置は、川の大小を問わず河口の左右がベスト。河口正面はちょい投げ、河口から離れるに従って仕掛けの飛距離を20m程度伸ばしていき、最終的に防波堤と同じく扇型の陣形をとる。
その他の注意事項
その他の注意点についてうかがったところ、注意を要するのは浚渫(しゅんせつ)船の動きとのこと。日高西部の各漁港は冬季のしけなどにより、防波堤の周辺に土砂が堆積し、航路が確保できなくなるほど水深が浅くなる。このため夏季から秋季にかけて、大型の浚渫船がグラブバケット(※クレーンなどの先端に取り付けて石炭や土砂などをつかみ取る機械)を使って、海底の土砂をさらって取り去る作業を行う。この作業中は防波堤に入釣できないので要注意だという。なお浚渫が終わった漁港は、航路の水深が深くなっているため、魚の寄り付きが格段に良くなるとのことだった。
当たりと引き
最後にマツカワ釣りの魅力について聞いてみた。それは「当たり」と「引き」なのだという。泳ぎながらエサに食いつくため、大物マツカワの当たりは強烈。何の前触れもなく突然、サオ先が大きく湾曲し、サオ尻が跳ね上がる。ライン(道糸)のふけ具合(垂れ方)も10~20mと長い傾向がある。
合わせると「ガツン!」という衝撃がきて、上下左右に激しく刺さり込む。漁港のような水深のある場所では、防波堤の下に何度も潜り込もうとしてグイグイ引っ張られる。とてもカレイとは思えないほどの爆発力、そして持続力がある。一度でも大物マツカワとこのようなやりとりをすれば、みんなとりこになってしまうだろう、とのことだった。
Y氏が長い間、マツカワ釣りにはまっているのは、この強烈な当たりと引き味に魅了されているからに他ならない。
終わりに
最後に、これまで大物マツカワが上がっている釣り場をマップと写真で紹介する。ぜひY氏の経験に基づいた戦術を参考に、大物を狙ってほしい。
マツカワマスターY氏がお薦めする最強釣り場TOP5
●門別漁港周辺(日高町)
●慶能舞川河口海岸(日高町)
●厚賀漁港(日高町)
●静内漁港(新ひだか町)
●東静内漁港(新ひだか町)