190万都市札幌に程近く、シーズン中はアングラーの姿を見かけない日がない千歳市支笏湖は、メーター級の大物トラウトが生息する人気釣り場だ。半面、プレッシャーの高さなどから釣りはシビアだが、そんな『難攻不落の湖』をルアーで攻略するためのヒントを解説したい。
(武川 拓郎)
道内屈指の難易度を誇るフィールド
秋も10月半ばを過ぎると落ち葉が目立ち始め、それが大量に川へ流れ込むことによって釣りは難しい時季に入る。.
一方、落ち葉が漂っていても釣りが可能な止水域は夏場、高水温で深場に身を潜めていた魚が岸寄りに姿を見せるようになり、活発にベイトを捕食する。
札幌近郊から多くのアングラーが足しげく通う人気のフィールド、千歳市支笏湖は道内屈指の難易度を誇るフィールドとして知られるが、そんな湖で大物のトラウトに近づくためのヒントを詳しく解説したい。
「秋がいい」とされる理由とは
秋が支笏湖がいいとされる最大の要因は、やはり水温の低下だろう。夏場は水温が高いため、多くの魚は水温が安定する沖の深場へ去る。さらに小型のアメマスとウグイが大量に発生してアングラーを悩ませるのも夏場の特徴だ。
秋はそうしたマイナス要因がなくなると同時に、ブラウントラウトは水温が10度前後になると産卵を意識してシャローエリアを回遊し始めるので、大型トラウトを狙うには最高のシーズンとなる。
ヒット確率が増す条件を考えてみる
秋は1年の中で最も釣果が期待できるハイシーズンといえるが、そう簡単に釣らせてくれないのが支笏湖の支笏湖たるゆえんである。しかも連日多くのアングラーが足を運んでいてプレッシャーが高く、トラウトの顔を拝むには釣り場へそれなりの回数、足を運ばなくてはならない。
かくいう私も支笏湖で釣りを始めてから2年もの間、魚が釣れなかった。がむしゃらに湖に通いロッドを振り続けるのも1つの手だが、確率が少しでも上がる条件を考えた方が、トラウトを手にできる可能性は高くなる。
荒れているくらいがちょうどいい
支笏湖は国内屈指の透明度を誇る湖である。透明度が高いということは、すなわち魚と釣り人の双方がお互いを認識しやすいということ。ゆえに魚は人的プレッシャーの影響を受けやすく、魚の警戒心も上がりがちだ。
つまり、「無風のべたなぎ状態」では魚と釣り人の双方が丸見えになるため、釣りにはあまり良い条件とはいえない。まずは天気予報で風向きと風速を確認するのが第一歩。入釣場所が向かい風や横風を受ける状態なら、湖面は波が立ちやすくなるので、そういった場所を選ぶといいだろう。
難易度の高いフィールドの基本的な攻め方
波風の強度によっても変わるが、支笏湖の場合、ブレイクラインに魚が着いていることが多いので、まずブレイクラインに沿ってランガンしながら探るといい。
私の場合、まずブレイクラインとその手前を重点的に探りたいので、飛距離は出づらいがアピール力の高いミノーをメインに使用する。その方が手返しよく探ることができ、結果的に釣果につながりやすいと考えている。
さらに風が吹き、波が立っている状況なら大チャンス。魚は想像以上に手前へ寄っている可能性があるので、飛距離が出ないルアーでも十分にチャンスがある。誘い方はトゥイッチやジャーク、ストップ&ゴーなど。いずれにせよ重要なのは必ず「食わせる間」を作ることだ。
リトリーブやアクションでルアーに興味を抱きチェイスして来た魚が「食わせる間」に触発され、勢い余ってアタックする、といったイメージでルアーを操作しよう。
遠投で探る場合は、主にジグとスプーンを使用する。まずは表層付近を回遊する魚に狙いを定め、着水直後にリトリーブを開始。時折ストップを入れたり、フォールさせてみる。ボトムを取ってもいいが、湖底の様子が分からない初めてのポイントでは、根掛かりのリスクが上がるのでお薦めはしない。
支笏湖2大お薦めスポット
美笛川インレット
数ある支笏湖のポイントの中でも屈指の人気を誇るのがここ。冬季、ブラウントラウトは同川に遡上・産卵するので、シャローエリアに入ってきた魚が狙える。流れ込みの影響でブレイクラインは他のポイントに比べて近いため、ルアーの選択肢の幅が広く、やり応えのあるポイントといえる。
旧有料道路
国道453号に面したこのポイントは駐車スペースが近く、釣り場へ簡単にアクセスできる。最大の特徴はブレークラインまでの距離が非常に近いこと。波も立ちやすく水通しも良いので例年、大型トラウトの釣果が聞かれる場所だ。ただし一帯は消波ブロックが積まれているので足元に注意が必要。あらかじめヒットからランディングまでの動線を想定しておかないと、ラインがブロックに擦れてブレークしたりするので注意したい。
基本タックル解説
個人的にタックルで最も大切だと考えているのはロッドである。長さや硬さ、曲がり方などさまざまな要素を含めると非常に多くの種類があり迷うが、秋シーズンをメインにするなら硬さはM(ミディアム)からMH(ミディアムヘビー)が適切。
長さは7〜8フィートが扱いやすい。7フィート以下だと飛距離が出ず、探る範囲が狭くなる。逆に8フィート以上を選ぶと遠投性が上がる半面、操作性が著しく低下して繊細なアクションが不可能になるので、初めに選ぶ1本としてはお薦めしない。
スピニングリールは2500〜3000番が適切。ローギア、ハイギアのどちらにも一長一短があり、一概にどちらが良いとは言えないが、ハイギアの方がラインコントロールしやすいので操作性は上がる。
メインラインはPEとナイロンが主流だが、私はPEラインを使うことが圧倒的に多い。PEは強度が高く、より細い糸を使えるので感度が上がり、飛距離も出る。こすれに弱い面があるが、これはリーダーの太さと長さを調整すれば対応できる。
ナイロンはある程度こすれに強い特長があるが、ガイドが凍るほど気温が下がるとライントラブルが発生するので、私は使い慣れたPEを1年を通して使用する。ただしトップウオーター系のルアーだけを使うといった限定的な状況であれば、魚の食い込みが良く糸ふけが出にくいナイロンでもいいだろう。
支笏湖オススメルアー解説
支笏湖の大定番ルアー
シマノ トライデント
シマノのトライデントはリップレスのシンキングペンシルで、サイズは60、90、115mmの3種類ある。最大の特徴は、AR-Cと呼ばれる重心移動システムが生み出す圧倒的な飛距離だ。このシステムのお陰で沖合のブレイクラインから足元の非常に浅いシャローエリアまで幅広く探ることができる。
ルアーアクションはユラユラしたロールアクションで、フォールはゆっくりとしたレベルフォール。支笏湖では、「ルアーから出る波動は魚を警戒させる要因であまり良くない」という説もあり、激しくアクションさせたり、リップが水流の抵抗を受けて波動を出すリップ付きミノーよりも、リップレスミノーを選ぶ人が少なくない。
操作は、とにかくゆっくりと巻くだけ。私の場合、2〜3秒に1回転程度のデッドスローでリトリーブする。トゥイッチなどのアクションは一切入れず、ひたすらリーリングを繰り返すだけでOKだ。
シンキングミノーの定番
スミス D-コンタクト
川でトラウトを狙うアングラーであれば、誰しも一度は使ったことがあるといっても過言ではないのがスミスのD-コンタクト、通称Dコンだ。サイズは85mmと110mmがお薦め。
支笏湖ではフローティングミノーしか使わないという人も多いが、根掛かりを恐れてシンキングミノーを使わないのはもったいない。シンキングミノーはフローティングミノーに比べて飛距離が出るので悪天候時、遠投を要する沖合でスプーンやジグにはまねできないアピール力を発揮するからだ。
リーリングしながら時折トゥイッチを入れてフラッシングしアピールしよう。横から湖流が当たる状況であれば、スイミングのバランスが崩れて弱った小魚のように見えるので、魚がリアクションで食ってきやすい。ゆっくり誘い過ぎると根掛かりの危険性が高まるので注意したい。
トラウト狙いで超人気
アングラーズデザイン バックス
トラウト狙いで抜群の人気を誇るのがアングラーズデザインのバックスではないだろうか。このスプーンの特徴は、大きく湾曲したカップがしっかり水流を受け止めて泳ぐこと。湖流が効いていない状況でも大きくユラユラしたアクションを繰り出すことができる。
リーリングは2秒に1回転のペースでゆっくり巻くだけ。前当たりがあっても焦らず、ゆっくり巻けるように意識すると釣果につながりやすい。