今やウキルアーを凌駕(りょうが)するほど浸透しているウキフカセ釣りは、シビアな状況でこそ真価を発揮する。間違いのない道具を選び、独自の特徴やこつを押さえれば、明日からあなたもサオ頭になれる!? (坂本 寛和)
ウキフカセの利点とは
頻繁に誘いを入れたり、回遊ルートを探したりと、やるべきことが意外に多いウキフカセの釣り。タイミングよく群れに当たれば、ウキフカセでなくとも爆釣可能だが、朝まづめなどのラッシュ時は、やはりアピール性の高いウキルアーが一歩リードする。しかしラッシュというのは得てして長くは続かないもの。決して長くはないその時間を過ぎてしまえば、途端に食い渋りが顕著になる。原因は、ラッシュ時に散々ルアーでたたいたことによるサケのストレスと、日が昇り始めて警戒心が高まるためだと思われる。そうなるとウキルアーで釣果を上げるのは難しく、タコベイトとエサのみのシンプルさで、アピール性に乏しいウキフカセが優位になる。結果的に、ラッシュ時にウキフカセをリードしたウキルアーは、最終的には釣果でウキフカセに劣ることが多い。もちろん常にそうなるとは限らないが、こういったパターンは決して少なくない。ウキフカセは道具もシンプルで、仕掛け1セット当たりの単価もリーズナブルなので経済性にも優れる。
タックルと仕掛け
<ライン>
メインラインはナイロン4号もしくは5号、PEなら1〜2号を使い、PEにはナイロンかフロロカーボン4、5号のショックリーダーを摩擦系ノットで結ぶ。磯ザオを使う場合には、トップガイドの径がルアーロッドに比べて小さいので、結び目を小さくしておくとガイドやロッドへの負担を軽減できる。ショックリーダーは、タナを広く探れるように1〜2ヒロ半あればいい。しなやかな磯ザオは、PEのメインラインと仕掛けのハリスを直接結んでも、合わせたときの衝撃を十分吸収できるが、ウキが通る部分のPEが傷みやすいので注意がいる。さらにウキの周辺でラインが絡まった場合、ほどくのに時間が掛かり、せっかくの時合を逃す可能性がある。最悪の場合は、PEラインを切って結び直すことも視野に入れなければならない。
<リール>
リールは3000〜4000番が適切。サケは突然走り出すケースは少ないが、まれにものすごい勢いで突っ走ることがあり、疾走に追従できるドラグ性能の高い物を選びたい。ギアはハイギアやエクストラハイギアなど、リールハンドル1回転当たりの糸巻き量が多い物を使う。なぜなら、ウキフカセで当たりを待つときは通常、糸がある程度たるんでいるので、なるべく早く糸ふけを取って合わせる必要があるから。合わせのタイミングを逃さないためには、素早くラインを巻き取れるハイギアリールが重宝する。購入する際はあくまでも大型魚とやり取りすることを前提とし、軽さを追求するのではなく耐久性の高い製品を選ぼう。
<ロッド>
ロッドはルアーロッドでも十分だが、ウキフカセはやはり磯ザオとの相性がいい。磯ザオはフニャフニャしていて頼りなさそうに見えるが、実際使ってみるとバットにしっかりパワーがあり、サケを浮かせるだけのポテンシャルを備えていることが分かる。サケ釣りでは不利に思えるサオの柔軟性・追従性のお陰で、魚の突進を制御しやすく、有利にファイトを進めることができる。そのしなやかさで、後ろに胸壁があるような狭い場所でも、コンパクトなキャストで飛距離を出すことが可能。魚に潜られてラインが根に擦れてしまいそうなシチュエーションでも、長い磯ザオならラインブレークを回避しやすい。
号数は2号または3号が適切だが、個人的には2号を薦めたい。なぜならサケは大抵の場合、2号で十分対処可能だから。3号の方が余裕を持ってやり取りできるのは確かだが、3号が必要と思われるシーンは経験上、ほとんどない。もう1つの理由はロッドの重さだ。潮の流れによっては頻繁に打ち直したり、誘いを入れることが多いウキフカセ釣りは、サオを抱えながら釣りをする。長時間サオを持つだけに、疲労を少しでも減らし集中力を保つためには、サオはなるべく軽いに越したことはない。
サオはアウトガイドとインターガイドの2種類あるが、ブランクスの中を糸が通る後者は使い勝手がいい。アウトガイドロッドでも問題はないが、廉価グレードだとガイド形状や使用するラインによっては糸絡みが発生しやすく、まづめ時など大事なときにトラブルが起きて大切な時合を逃しかねない。手元が暗い夕暮れや夜明け前に、ラインがガイドに絡んでいることに気付かずキャストや合わせを行うと、サオを破損してしまう恐れもある。もしもアウトガイドの物を選ぶなら、ガイド面がブランクスに対して90度ではなく、傾斜していてラインが絡みにくい物を選ぼう。
<ウキ>
円錐型の中通しウキ1~2号を使用。食いの渋いサケはウキの浮力に違和感を感じてすぐにエサを離すので、極力浮力の小さな物を使う。それでも食いが悪ければ、カミツブシなどを付けてさらに浮力を減らそう。
<ハリ、ハリス、その他>
ハリはフカセバリ16号がメインで、食い渋りのときはシャンクが短くワイヤーが太いコイバリ17号を使う。チヌバリの5、6号でもいいが、前述のハリに比べて軸が細く、ファイト中に伸びてばれる危険性がある。
ハリスはフロロカーボンかナイロンの4、5号を使用。タコベイトは1.5号を使い、ハリがすっぽり隠れるようにセットする。潮の流れが速い場所や、川の流れがある河口付近では、仕掛けの浮き上がり防止が目的でシンカーを使う。
シンカーはロックフィッシュ用のバレットシンカーやカミツブシで、タコベイトの頭部にすっぽり収める。その際、タコベイトとハリが分離しないよう、ビーズと小さく切ったチューブでタコベイトを留める。ビーズはダイヤカットを使ったり、目立つように複数(3個程度)入れておけば、誘いを入れたときにアピール力が大きくなる。
<その他の装備>
ウキフカセは、ウキルアーのように重いルアーや、かさばる大きなウキは必要ないので、そういった小物類を収めるバッグは小型で十分。大きくてもメッセンジャーバッグ程度のサイズがあれば十分だ。こういったバッグに魚を収容するビニール袋やエサ、予備のウキなどすべてをコンパクトに収納できるので、機動性が高い。ウキやハリなどは小物入れやケースに入れておくと中で散乱せず、必要なときにすぐ取り出せるので便利。
<シューズ>
足場が安定している岸壁などはゴム底のスニーカーで問題ないが、消波ブロック上などは滑りやすいことがあり、ピンが打ち込まれたフェルト底の専用スパイクシューズが望ましい。
<ベルト>
常にバッグを背負っていると魚とのファイト中に邪魔だし、エサなどを毎回バッグから取り出すのも煩わしい。そんなときは腰に巻いたフィッシングベルトにプライヤーやフィッシュグリップ、エサ箱など、使用頻度の高い物を装着しておけば、煩わしさが解消され手返しも早い。
<タモ網>
振出寸法がおおよそ5~7m程度で、短い物が持ち歩きやすい。柄は5mあれば問題ないが、釣り場や潮位によっては長さが足りないケースもあるので注意。仕舞寸法が長過ぎると単独でタモ入れするときに取り回しが悪いので、70cm前後を基準にしたい。
ウキフカセ釣りの誘い
ウキフカセの場合、ウキルアーと違って漂わせておくだけで釣れるが、すれたサケは仕掛けを流しているだけではなかなか口を使わない。そんなとき、サオをあおって誘いを掛けると、途端に口を使うことがあり、誘いは普段から意識的かつ積極的に使っていきたい。 誘いには「小さな誘い」と「大きな誘い」があるが、サケの回遊ルートが特定できない場合、大きくリフトさせながら誘うと、同時に回遊ルートを探ることができる。誘いを入れるときは、ウキルアーのように巻き続けるのではなく、大きく誘った後で動きを止めてステイさせ、食わせる〝間〟を作ることが大切。大きな誘いにサケが興味を持ったとしても、食いが渋くヒットにつながらないときは、小さな誘いを入れて仕掛けが逃げるような動きを演出するといい。
釣り場別攻略のヒント
①河口導流堤
導流堤では流芯だけでなく、ケーソンや消波ブロックの際をサケが回遊することもあるので、流芯から導流堤の際までを丹念に探りたい。仕掛けを流すときは上流側へ投げ、流れにのせて自然に流す。流している途中で意図的にラインテンションを掛け仕掛けをリフトすると、リアクションバイトを誘発することもできる。反応が無ければ流している最中にロッドを大きくあおってアピールするのもありだ。下流まで流しきったら、仕掛けが水面に浮き上がらない程度の速度で仕掛けを回収すれば、途中でサケが食ってくることもある。仕掛けの着水から回収直前まで、すべての瞬間をフルに活用してサケを食い付かせることを意識したい。
②漁港
港内では岸壁および岸壁が交差する隅や角、斜路などが代表的なポイント。ただ基本的には港内最奥にあることが多い斜路前に魚がたまりやすい。そのため斜路付近は釣り座確保が難しく、港内に入り時間のたった魚が多いので、口を使わせるのも難しい。わざわざ競争率の高い激戦区に無理に入釣するよりは、他の場所でフレッシュな魚を狙うのもありだ。港内に入って来たサケは基本的に岸壁に沿って泳ぐため、
港の出入り口
↓
防波堤の曲がり角
↓
港内最奥の斜路前
という経路をたどることが多い。回遊パターンを把握しておけば、サケが次に現れる場所を予測しやすい。港に進入して間もないフレッシュな群れや個体は、斜路前にとどまらず、そのまま岸壁に沿って港内を回遊するため、チャンスは1度きりではない。岸壁から狙うときは岸壁際から5~10mの範囲にウキを流し、反応が無くても20m先まで探れば十分。もし周囲に釣れている人がいれば、どのくらい先で掛けたのかを見極め、タナの深さやタコベイトの色などを模倣すると釣果につながりやすい。