最近何かと話題に上がるホッケの資源量について、その変動要因を探るとともに、秋の釣りの特徴や注意点など基本事項を整理。釣果が期待できる釣り場も併せて紹介する。(本紙取材班)

近年のホッケの動向

ホッケは年によって岸寄りする個体数に変動がある魚である。これを如実に実感できるようになったのは平成後期からだ。それ以前はどこでサオを出しても、さほど苦労せずにホッケ釣りが楽しめた。

特に昭和後期にウキ釣りが普及し始めると、その爆発力のすごさに誰もが目を見張った。頭の中は「いかにして3ケタを釣るか」という思いでいっぱいとなり、刻々と減少を続ける資源量に目を向ける人などほとんどいなかったように思える。

しかし平成25年以降、ウキ釣りのサオを持った多くの人が同じ釣り場に押し寄せて大量のコマセを打っても、全体で20匹も釣れないといった事態が年を追うごとに深刻化し、ようやく事の重大性に気付くようになった。

幸い令和に入り、資源量はV字回復しつつある。本紙では、令和に入る前から資源が回復しそうだという予想を立てており(第1010号および第1075号)、それが2019年、2020年とほぼ的中した。

 

ホッケの資源量を保つための条件とは

資源量の変動要因の一つに挙げられるのは、卵のふ化率や仔魚(生まれたばかりの小さな魚)の生存率の変動である。卵からかえる率が低かったり、仔魚が死滅したり、成魚などに食べられたりする率が高いと、その後の資源量は減少していく。ふ化率や仔魚の生存率に影響を与えているものは、おおむね次の通り。

❶産卵に適した水温は15~8℃(10月から12月にかけての水温の変化)。
❷ふ化した仔魚の遊泳能力。
❸エサとなるプランクトンに巡り合う機会。
❹仔魚が過度に他の魚に食べられない環境。

 

資源量が減少する仕組み

どのような状況になると、卵のふ化率や仔魚の生存率が下がるのか。影響があるのは、海水温の上昇である。

産卵は15℃前後で始まり、13℃前後で盛期となり、8℃で終了する。それ以後、卵がふ化するまでの約2カ月間は、水温が8℃以下に下がる必要があるが、暖冬で水温が8℃を上回る日が続くようであれば、卵そのものが死んだり、卵からかえったとしても未熟な状態の仔魚になっている可能性がある。

そのような状態では自力で遊泳する力はなく、プランクトンが豊富なエリアにたどり着けないばかりか、アブラコやソイなどの魚に簡単に食べられてしまう危険性がある。

より生き残れる条件があるとすれば、冬季から早春にかけての低水温だ。2~4℃くらいの水温が続くようだと、プランクトン類が大量発生してそれを食する魚が多くなり、仔魚が食べられる確率は下がっていくことになる。

 

ホッケの動向は?

近年は真冬でも群れが沿岸から離れず、1月、2月、3月と釣れ続け、そのまま春のホッケシーズンに突入するというプロセスをたどるケースが少なくない。これは暖冬で、好天の日が多く、水温も高めだったことによる。そうすると前述の話からすると、仔魚はほぼ全滅しているのではないかという見方が成り立つ。皮肉なことに、岸寄りし続けたホッケに根こそぎ食べられた可能性を無視できない。

 

秋のホッケ釣りが春と異なる点

さて、秋のホッケに話題を切り替えよう。秋のホッケは春と異なる点が多いため、次のことを頭に入れておく必要がある。

❶成魚は産卵目的で岸寄りする。
❷産卵場所は水深15~25m付近の深場。
❸雌は一度に卵の全てを放出するのではなく、数回に分けて少しずつ産卵する。
❹卵は1つの塊として岩のくぼみなどに産みつけられる。
❺卵を放置すると他の魚に食べられてしまうため、ふ化するまでの約2カ月間、雄が卵を守り続ける。この間、雄は原則エサを取らない。
❻雌は産卵と産卵の合間に栄養補給を行うため、産卵場とエサ取り場を行き来する。
❼若魚はエサ取り目的で岸寄りする。魚体は30cm以下と小さい。

 

前記から次の点に注意が必要となる。

❶産卵中の雌は産卵の合間を縫ってエサ取りする。ある程度エサを口にしたら産卵場へ戻るので、雌の群れが釣れ始めたら一気呵成に釣る必要がある。

❷雌の群れがいつエサ取りに来るかは予想できない。入釣のタイミングがよければ、サオ入れと同時に釣れ始めるが、悪ければ群れが寄るのを辛抱強く待つ必要がある。この場合、できるだけ多人数でコマセをまくことが重要となる。

 

❸雌のエサ取りは昼夜を問わない。夜間にエサ取りに来た場合は、夜釣りが勝負となる。夜に釣れているから朝も大丈夫と思うのは早計。夜明け後にサオを出したらボウズということがよく起こるので、チャンスを逃さないことが大切。

 

釣り方と釣りエサ

釣り方はウキ釣り、投げ釣り、ルアーのいずれでも狙える。ウキ釣りとルアー釣りはコマセをまきながらの釣りとなる。投げ釣りは仕掛けの上部または下部にコマセネットかコマセカゴを付けて行う。夜釣りの場合は投げ釣りで行うのが良い。食わせエサはオキアミやアマエビ、カツオやサンマ、マグロの短冊など。コマセは赤アミや白アミのブロック(冷凍)か、天然素材を練ってペイスト状にしたものを用いる。

 

釣果が期待される釣り場

岩場を中心に、秋のホッケ釣りに実績がある釣り場を紹介する。なお、ウキザオがたくさん出ている場所で、ルアー釣りや投げ釣りをすることは、ウキ釣りをしている人の迷惑になるため、厳に慎むこと。互いに迷惑をかけないよう、配慮してサオを出すことが大切となる。

 

神恵内漁港珊内地区(神恵内村)

同港の基部に張り付いている平盤を狙う。漁港基部から防潮堤の胸壁の上に上がり、岩を下りて入釣する。平盤は海面から高さがなく、少しでも波があると、先端部を中心に波かぶりとなるため、波の動きに注意が必要となる。平盤は凹凸が少なく、歩きやすい。 先端の左右が狙い目となっているが、かけ上がりや大岩が沈んでいる荒根となっているため、岩と岩との間の深い溝を狙うのがコツ。ウキ釣りがよい。

兜千畳敷(泊村)

1年を通して入釣者が多い人気釣り場の1つ。旧国道の突き当たりから岩場に入り、設置している木のはしごを下って入釣する。岩場は凹凸があり、歩きにくいので足元に要注意。 A、B、E点はウキ釣り場。小ワンドとなっているため、ホッケの群れを集めやすい。 先端のC点は、投げ釣りがよく、沖正面60m付近にある沈み根の周囲を狙う。D点は足元から深く、ちょい投げや中投でホッケを狙う。主に投げ釣りとルアー釣りのポイント。なお、C、D点はアブラコやクロガシラも釣れる。

政泊海岸(寿都町)

弁慶岬の南(左)側にある大岩場。ホッケの千石場として知られ、シーズン中は多くの釣り人で賑わう。崖下りの釣り場だが、崖に高さはなく、勾配も緩やかなため、入釣は楽である。 この平盤は周囲が荒根で、どこでサオを出しても根がかりが激しい。投げ釣りは不向き。ウキ釣りとルアー釣りで狙う。A点は、沖から深い溝が岩場伝いに伸びているため、ホッケの魚道となっている所。ウキ釣りがよい。B点は、沖方向の至る所に荒根が点在しているため、荒根と荒根の間の溝を狙う。ルアー釣りがよい。

シマロッペ(島牧村)

シマロッペは、2つの木巻覆道のうち南側に位置する覆道前に広がる大岩場。岩場の基部に車が止められる空きスペースがあり、最大7、8台が駐車できる。先端の左右がよく、西寄りの風のときは右側A点、東寄りの風のときは左側B点に陣取ると良い。入釣にあたっては、右側が岩の凹凸が激しくアップダウンが連続するが、左側は凹凸が少なく比較的歩きやすいため、左側から入るとよい。左右とも足元から深く、ウキ釣りがメインとなっている。

栄浜海岸(島牧村)

沖が急深となっているため、潮通しがよく、ホッケの寄りがよい所として知られる。魚影が濃いときはどの岩でサオを出しても釣れるが、寄りやすいのはアルファベットで表示した各ポイント。A点は、漁港に張り付いた大岩場の左側。足元から深く、ウキ釣りがよい。 B~D点の岩は、下り口(コンクリート階段)から大きな玉石を越えて入釣する。平盤状で歩きやすいが、海面から高さがなく、少しの波でも被るため、注意が必要。B~D点はいずれも足元から深く、ホッケの寄りがよい。ウキ釣りで攻略する。 いずれのポイントも、北寄りの風のときが狙い目となっている。