先日、世紀の大発見があった。CERN(欧州合同原子核研究機構。通称セルン)の実験で、ニュートリノという素粒子が、光よりも速いことが実証されたのだ。「で、それがどうしたの?」と思われる人がもしかしたらいるかもしれない。そんな本紙読者に対しては「今までサケだと思って釣っていた魚が実はリュウグウノツカイだった!」くらいインパクトのある実験結果だと言ったら、理解してもらえるだろうか(かえって分かりにくい?)。
かの有名な物理学者、アインシュタイン博士が1905年に発表した『特殊相対性理論』は、現代物理学の基礎と言われている。その理論によれば、この世に光より速いものはないんだそう。死んだ祖母がよく「いいかいカツヒト、よくお聞き。この世に絶対なんてないんだからね!」と口を酸っぱくして言っていたのと相反するが、相手があのアインシュタイン博士じゃあどう考えても勝ち目はない。ところが今回の実験結果は、博士の理論を真っ向から否定するものだったのである。私は思わず「ウチのばあちゃんにもノーベル賞を!」と叫び、線香の一つもあげたくなったが、祖母の位牌は長男夫婦の家にあるので今回はやむなく断念した。
さて、あまりにも衝撃的なこのニュースに対し、懐疑的な学者も多いという。これから様々な研究機関が追実験で誤りがないか検証するそうだから、興味を持ってことの成り行きを見守りたいと思っている。しかし祖母の名誉を考えると、たとえ世の中がひっくり返ることになろうとも「光よりニュートリノの方が速い」という結果に1票を投じたい気分ではある。
ところでこのニュースが流れてからというもの、常識やセオリーといったものを頭から信じ込んではいけないと思うようになった。もちろん釣りも例外じゃない。今では秋の道内の釣りシーンを席巻するあのサケでさえ、昔は「釣れない」と思われていたのだ。今まで私が培ってきたセオリーで言えば、恒例の年末ジャンボ宝くじは6等以外当たらない。だが、ニュートリノが光より速いのだから、今年はもしかして…。
(本紙・平田 克仁)