道民にこよなく愛される釣り物、イカ。道内で釣れるイカは主にマイカ(スルメイカ)、ヤリイカ、マメイカ(ジンドウイカ)の3種がいるが、近年は温暖化の影響か、アオリイカも釣れるようになってきた。しかし昨今、日本人が最も好きなイカを挙げるとするなら、それはダイオウイカかもしれない。

ひとたび浜に打ち上げられ、網にかかろうものなら、テレビ各局が即座に伝えるほど、この深海の巨大な住人に対する国民の注目度は高い。国営放送で特集が組まれるほどの人気ぶりである。国内の沿岸各地にダイオウイカが立て続けに姿を現そうものなら、連日テレビでニュースが流れない日がないほどの過熱ぶりだ。

これほどまでに国民がダイオウイカに注目するようになったのは、ずいぶん前に「生きたダイオウイカ」の撮影に成功したところから始まったのではなかったか。テレビでは、これはすごい映像です!」とか「世界初の快挙!」などといった賛辞が相次いだ記憶がある。ほとんど生態の分からない深海の生物だけに、生きた姿を撮影できたのは、学術的には意味があるのだろう。3mあるいは4mを超えるイカの姿は、一般人の目から見ても確かに刺激的だ。

しかし、他のイカに比べて巨大であるということを除けば、取り立てて強調する点はなし。味も、アンモニア臭が強くて食べられたものではないという。強いてアピールポイントを挙げるとすれば、「マッコウクジラと戦う勇ましいイカ」というイメージくらいか。だが一旦その〝巨大さ〟に慣れてしまえば、ただのイカであることに変わりはない。

一連の報道を見ていると、どうもマスコミの「煽り」に乗せられている感じがしないでもない。報道のされ方に、エリマキトカゲやウーパールーパーと同じ「におい」を感じるのだ。食べてもまずいし、例えエギングやウキ釣りでかかったとしても、「まるでタイヤを引っ張っているようにただ重いだけ」という感じのダイオウイカよりも、マイカやヤリイカ、マメイカやアオリイカを釣っている方がおそらく楽しいし、実益も兼ねている。でも、釣りの最中に目の前にダイオウイカが現れたとしたら…やっぱり自分も大騒ぎしてテレビ局に駆け込むかもしれないな。
(本紙・平田 克仁)