小樽運河に大量の「迷いザケ」が現われ、観光客を驚かせている。運河のサケは、流れ込む川に一部が迷い込んで力尽き、あちこちに亡きがらをさらしているそう。地元は「印象が悪くなる」と困惑しているという。

 まあ確かにそうかもしれない。命の営みとはいえ、見た目は決して良くはない。その上、腐敗臭は強烈だから、問題視されるのも理解できる。地元では、サケを遡上させないよう柵を設置する計画があると聞く。だがちょっと考えてもらいたい。年間600万人以上が訪れる一大観光地のど真ん中でありながら、サケの遡上を間近で見られる都市などそうそうない。同市で最も人気のある観光スポットといえば以前、「無用の長物」のレッテルを貼られた小樽運河なのである。今回もサケはじゃま者扱いだが、新たな観光資源になりそうな芽は十分にある。結論を出すのは熟慮に熟慮を重ねた末にしてもらいたい。

 さて、北に魚の遡上を阻む計画がある一方で、南には遡上を促す動きもある。熊本県球磨川にある発電用ダム、荒瀬ダムの撤去である。1955年の完成以来、周辺住民は放水による騒音や、ダム湖が放つ悪臭に悩まされてきた。河口では生態系が変化し、漁業に甚大な被害も与えたという。大型ダムの撤去は国内では例がなく、その行方が注目されている。そしてもう一つの注目は、ダムが発電用だということ。電力不足といわれる昨今、発電用ダムが撤去できるのは、電力が足りている証拠かと勘繰りたくなる。もし今夏の全国的な節電でダムを撤去してもいいと目算がついたのなら、今後も節電には大いに協力していきたい。節電でダムが不要と分かれば、それはすなわち流域の魚族保護につながるからだ。

 ところで、この間実施された道内の節電要請開始に合わせ、わが社のトイレのエアタオルには「節電中の為、停電します」という貼り紙が貼られた。だが、貼り紙はなぜか節電要請が終了した今もそのまま。だから私のジーンズは手ふき代わりでいつもびしょびしょである。
(平田 克仁)