道東の夏を代表するソルトルアーゲームといえば、海サクラマスと海アメマスが筆頭だ。特に大型が激減したアメマスは最近、魚影が復活しつつあるとの見方もあり、サクラマスと共に大いに期待したいところ。そんな両魚種の魚影が濃い十勝地方にスポットを当て、攻略法と釣り場の特徴を解説。今回は東十勝編。
(白土 髙利)
海サクラマス&海アメマスの魅力とは
冬の風物詩として名高い島牧村の海アメマス。現在は帯広に居を構える筆者も、札幌市民だった十数年前までは早春の海アメとよく戯れていた。そんな島牧など道央日本海に流出する河川は禁漁となっている所が多いためか、海アメや海サクラの魚影が濃い印象がある。ただ5月になると各地でサケマス河口規制が始まるため(※一部例外あり)、最終戦と称して規制直前のサーフへ通った日々が懐かしい。
15年ほど前には釧路地方の河川で大型の遡上アメマスが大ブームとなったが、「それなら遡上前のアメマスをサーフで狙えるのでは」と妄想していた。帯広に移り住んでからはその妄想が現実となり、よく道東のサーフへ通い詰めたもの。そんな日々のファイトで味わった海サクラの強烈な引き味と、海アメのトルクのある首振りやローリングは、何度体験しても飽きないほど魅力的だ。
メーターオーバーの夢を追って
サクラマスは河川残留型がヤマベ、降海型がサクラマスと呼ばれている。河川内でライバルとのエサ取り競争に敗れ、居場所がなくなったヤマベは成長の場を求めて海へ下り、最大70cm近くまで巨大化。4〜6月に産卵のため遡上を始め、9〜10月に産卵する。
一方、アメマスは河川残留型がエゾイワナで、降海型がアメマス。8〜10月に遡上して10〜11月に産卵する。河川で孵化(ふか)してもすぐに降海せず、河川内で2〜3年を過ごす。イワナは腹部や体表が黄色みを帯びていることが多いが、アメマスは白っぽく、白斑も大きいのが特徴。降海したアメマスは80cm以上に成長することもある。
近年、SNSなどでうわさのメーターオーバーの巨大アメマスは、ロシアのカムチャッカ方面から親潮(千島海流)に乗ってやって来たと言われている。栄養豊富な親潮に乗ってやって来たアメマスであれば、メーターを超える巨体に育つのもあながち夢ではないのかもしれない。
東十勝のフィールド攻略
道東太平洋のサーフは特有の大きなうねりにより、波が穏やかな日であっても濁りやすい特徴がある。波も3〜5枚と連続して押し寄せるので、波の切れ目にキャストするのが釣果につながる第一歩だ。ラインが波にもまれ流されると、大きなラインスラックが生じてルアーが操作不能に陥るので、できるだけ早くラインスラックを取るには、HG(ハイギア)か、XG(エクストラハイギア)のリールが必須となる。
海がしけているときは無理な入釣は禁物。近郊の港でロッドを振ろう。海が荒れると魚が港に逃げ込むケースが少なくなく、港内を悠々と泳ぐ姿を目にすることも。タイミングとしては、満潮から干潮へ向けて潮位が下がる朝まづめがベスト。大潮や中潮の日は潮の動きが激しく、魚の活性が上がりやすいのでお薦めだ。
ショアの釣りは幅広く探ると効果的なのでロングキャストが有利である。近ごろは10フィート前後のロングロッドが中心だが、長時間キャストを続けると体力の消耗が激しい。そのため筆者は50gまでをカバーする8フィート台のセミロングロッドを愛用している。この長さのロッドでも30〜40m先から波打ち際までをコンスタントに探ることが可能。ロングロッドより短いぶん扱いやすく、長時間キャストしても疲労感が少ない。急に天候が崩れて漁港などに移動しても、タックルを変えずに釣りができるのも利点だ。
狙い方とコツ
日本海は3〜5月が海サクラのベストシーズンだが、道東太平洋は6月中旬〜7月中旬(シーズン開幕は5月ごろ)と遅く、盛夏に差し掛かるまで釣りができる。
メインベイトはチカで、時季によってはカタクチイワシやシシャモなども捕食する。前項の通り、道東の海は濁りやすく、ごみなどの浮遊物も少なくない。うねりも高いので、強い引き潮の力で砂浜が深く掘れ、波打ち際の1〜3m付近が急に深くなっている場所が多い。そのためか魚の回遊ルートが近い釣り場が多数ある。
遠浅のポイントであればジグは30〜40gが標準的。回遊ルートが近い(=かけ上がりが近い)ポイントは25g前後のミノーで狙うと効果的だ。
広大なサーフで最も重要なのは離岸流を見極めることだろう。離岸流とは、打ち寄せた波が特定の場所で沖に戻るときに発生する強い海流のこと。流れの変化で地形も変化しているのでベイトフィッシュが集まりやすく、フィッシュイーターを狙う上では絶好のポイントといえる。
離岸流にルアーを投げ込むと、強い潮の流れで引き抵抗が増すので判別は比較的容易である。効率的に探るなら、海に対して斜めにルアーを投げてみよう。ルアーを引いているときにグッと引き抵抗が増すスポットがあれば、そこが離岸流だと判別できる。
サーフの釣りでの注意点
広大なサーフでロッドを振るのは気持ちがいいが、うねりの強い太平洋では強い引き潮に足を取られて転倒する危険性があるので十分に注意しなければならない。もしも転倒した場合、そこで離岸流が発生していればあっという間に沖へ流されてしまう。
波打ち際から急に深くなっている場所も多く、不用意なウエーディングは禁物である。水辺の趣味である釣りは、常に危険と隣り合わせであることを理解し、浮力体付きのフィッシングベストを常時着用するように心掛けたい。
晴れた日中や朝夕のまづめ時は偏光グラスがあると重宝する。日が昇ると海面がぎらついて視界が奪われ、強いストレスにさらされるが、そんなとき偏光グラスがあるとストレスなく釣りができる。
最後に、ラインの切れ端やごみは必ず持ち帰ること。身勝手なマナー違反やルールの逸脱を続ければ、いつか大切な釣り場を失いかねない。野生動物にも悪影響を与えるので、マナーを守って釣りを楽しみたい。
東十勝の好釣り場
◆長節海岸三差路(豊頃町)
砂浜のサーフのポイント。濁りやすいが離岸流が発生しやすい好ポイントでもある。波打ち際が深く掘れていて回遊ルートが近いので、魚に気配を悟られないよう波打ち際から少し離れて釣り、ミノーで手前から探りたい。波打ち際で大物がヒットすることもあるので最後まで油断は禁物だ。
着水と同時にヒットするパターンも多い。特に沖合30〜60m付近でかかるパターンが多いので集中は切らさないように。以前はカレイやコマイの投げ釣りでにぎわっていた場所だが、現在はサクラマスやアメマスを狙うルアーマンが目立つ釣り場だ。
◆厚内漁港(浦幌町)
漁港の脇を流れる厚内川の影響で魚が集まりやすい。10年ほど前は港内で巨大なアメマスが釣れ大いににぎわったが、近年は大型がめっきり減り、鳴りを潜めている状態。しかし夏には小〜中型が依然として釣れるので、気軽に出かけてみたい。
大津漁港(豊頃町)
アメマスが生息しサクラマスが遡上する道東の大河、十勝川の河口に最も近い港がここ。しけの時や、雪代や大雨の影響で強い濁りが入ったときの逃げ場としても重宝する。十勝川は6月1日から11月30日までサケマス河口規制(左右両海岸および沖合1km)が設定されているので注意したい。