「男くさい分野」への女性の進出がめざましい。たとえば釣りガール。昔は「男の趣味」といえば、まっ先に候補の1つに挙がるのが「釣り」だったような気がするが、近年はそうとばかりも言い切れない。昨年をもって休止となった本紙主催のレディースツアーに同行していたこともあり、その辺りの事情はつぶさにかんさつしていたので肌感覚をしてよく分かる。参加者はもとより、釣りがしてみたい、という女性たちの潜在的なニーズは、われわれ男どもが想像する以上に多いのだ。

そもそも釣りの起源をたどれば、生きていくための狩猟に行き着くと思われるが、これは人類が類人猿だった頃から、たぶん男の役割だったはず。たまにイラストなどで紹介される「原始人の生活」みたいなものでも、ノースリーブの毛皮をまとった眉毛のやたらと太い男たちが、集団でマンモスを狩ったり、魚をモリで突いたりしているではないか。もうこれは本能的に「それは男の役目だろ!」と宿命づけられているとしか思えない。

だが近年は釣りガールに代表されるように、女性たちのDNAにも狩猟本能が目覚めてきているらしい。そしてつい最近、とうとうここまで来たか…と思わずにはいられないニュースに接した。山ガール、釣りガールに続く第3弾は、なんと「狩りガール」だというのだ。彼女たちは猟銃を担いで奥深い山へ分け入り、エゾシカなどを仕留めるという。獲物を追い詰め、照準をのぞいてターゲットをロックし、息を殺して引き金を引く。あんたはゴルゴ13か! と言いたくなるが、そんなことを言ったら撃ち殺されるかもしれないので、やめておいた方がいいだろう。

今まで「男の牙城」だったものが、女性たちによってことごとく征服され、落城していくさまを見ると、なんともいたたまれない気持ちになるは、やはり私が男だからか。もはや「男の牙城」は男子トイレにしかないという印象さえ禁じ得ないが、その聖域でさえ、「あら、お兄さん、ちょっとごめんなさいねぇ〜」と言いながら、おばちゃんたちがわが物顔でズカズカ入ってくるのが現状だ。もはや「男の牙城」など、この世のどこにも存在しない、というのが正しいようである。
(平田 克仁)