まあとにかく今年の夏は、記録にも記憶にも残る暑い夏だった。影響は緯度の高い国ほど大きかったらしく、隣国ロシアは130年ぶりといわれる猛暑になったそう。あまりの暑さに市民は水辺に涼を求めたが、「シベリアでは、400kmは距離じゃない。プラス40度は暑さじゃない。マイナス40度は寒さじゃない。ウォッカ4本は酒じゃない」という国民性だから、ビールやウォッカをしこたま飲んだ勢いで水に飛び込む人が続出。結果、夏の1カ月間に水死者が1200人以上にものぼったという。
ロシア人同様に、私も猛暑に悩まされたクチ。あまりの暑さで運転中、ついウトウトする機会が今夏はやたらと多かった。経験上、そんなときは「堅いものを食べる」のが眠気覚ましに効果的である。運転が長時間になりそうなとき、私は歯応えのあるスナック菓子を必ず用意する。ただ、一般的なポテトチップス程度の堅さでは効果は薄く、できれば「厚切り」や「堅揚げ」がお薦め。通常は「横綱あられ」や「草加せんべい」級の歯応えがあれば十分だが、「芋(いも)けんぴ」のように注意を要するスナック菓子もある。芋ケンピの堅さときたら、「歯が欠けてしまうのでは?」と思えるほど堅いが、私の知り合いであるK氏は、眠気覚ましにこの芋けんぴを選び、とんだ災難に遭遇したことがある。
釣りの帰り、暗い夜の林道を一人車でとろとろ走っていたK氏を強い眠気が襲ったそう。するとK氏は、眠気を覚まそうとすかさず芋けんぴに手を伸ばした。ところが、指でつまんだ芋けんぴを口に持っていったとき、道路の凸凹に差し掛かって車が大きくバウンド。その瞬間、先のとがった芋けんぴが鼻の穴にグサリ! 思わぬ大量の鼻血にあわてふためくK氏。シートまで血に染める大量出血に見舞われたK氏はこの後、2度と芋けんぴを食べないと心に〝堅く〟誓ったそうだ。うーん、どうやら眠気対策には、芋けんぴを食べて大量出血する危険を冒すより、車を止めて素直に仮眠を取った方が賢明のようだ。
(本紙・平田 克仁)