サケに限らず、釣りに遠征は付き物だ。だが遠征も泊まりがけとなれば、それなりの出費がかさむのが現実である。そんなとき、コストを抑える手段として車中泊という選択肢がある。車中泊のノウハウや守るべきマナーを解説する。
(平田 克仁)

 

リーズナブルな遠征に最適な車中泊

サケ釣りに限らず泊まりがけの遠征は長距離運転が必須だが、何度も通うとなると毎回ガソリン代や食費、宿泊費、場合によっては高速料金が必要になり出費がかさむ。そんな遠征費用をリーズナブルに抑え、肉体的にも精神的にも余裕を持って釣りに臨めるのが車中泊最大のメリットの1つで。ソロなら人と接触するリスクも減らせるので、このご時世にはぴったりだ。

 

車中泊に適した場所を選ぶのが大前提

車中泊の第一歩は、車を止める場所の確保だ。交通量の多い道路が近かったり、夜も出入りの多い駐車スペースなどでは安眠が難しいし、そもそもその場所は車中泊目的で駐車していいのか、といった問題もある。近年は公共スペースに長期滞在する車中泊が社会問題となっていることもあり、駐車場所には細心の注意を払わなければならない。現在、車中泊が公に認められている場所はオートキャンプ場くらしかないが、現実には釣り場近くの空き地や道路脇の駐車スペースなど多岐にわたる。要するに、車中泊で大切なのは「他人に迷惑を掛けず静かに寝られる場所を探すこと」が大前提なのだ。

 

車中泊お薦めスポット

❶オートキャンプ場

有料だがホテル利用より安く済む。電気、水道、水場が完備されていることが多く、車中泊の筆頭候補地になり得る。割り当てられた区画に車を止め、すぐ横に設営したテントで就寝するスタイルが大半なので、車中泊ではなくテント泊の人も多い。

車中泊に最も適しているオートキャンプ場

❷JRVA提携施設

「くるま旅」を応援するJRVA(日本RV協会)の提携施設は車中泊にもってこい。車中泊専用施設の「RVパーク」、温泉施設の駐車場で車中泊できる「湯YOUパーク」、駐車場や空きスペースで車中泊できる「くるま旅パーク」などがあり、一般的な宿泊に比べリーズナブルな料金で利用できる。道内にはまだ1カ所しかないが、お店での食事利用を条件に店舗の駐車場で無料で車中泊できる「ぐるめパーク」もある。

2024年8月7日現在、道内に31カ所の施設がある「RVパーク」

❸高速道路のSAやPA

SAやPAはドライバーが休憩したり、仮眠を取るためのスペースであり、車中泊はあくまで仮眠の延長線にあることを忘れてはならない。駐車場が混雑していたら遠慮して別の場所を探そう。保冷トラックなどはエンジン掛けっぱなしで仮眠を取るケースが多いので、トラックの駐車場所からは離れた方がいいだろう。トイレに近い場所も車の出入りが頻繁なので避けた方が無難だ。

行楽シーズンを除けば案外空いている高速道路のSAなどの駐車スペース

❹道の駅

24時間使えるトイレがあり、道内各地にあるので車中泊には利便性が高い施設である。しかし近年、長期滞在の車中泊が社会問題化している。管轄する国交省は、「宿泊目的の利用はできないが仮眠は認められる」との姿勢。車中泊が仮眠なのか宿泊なのかは利用者の判断に委ねられており判断は難しい。車中泊で利用する場合は、他人に迷惑を掛けず、静かに利用するのが原則。観光シーズンの知床など混雑が予想される施設の車中泊は避けるべきだろう。期間限定だが、道内には試験的に有料で車中泊ができる道の駅もある。少なくとも利用する際はキャンプ道具を広げたり、バーベキューなどはもってのほか。許可なくコンセントを借用するのは窃盗になる。勝手な給水も厳禁だ。ごみはすべて持ち帰ること。

道の駅を利用する際はマナー厳守。混雑する施設は遠慮したい。

❺公共施設の駐車場

都市圏を離れると、公園や公共施設の駐車場など車中泊できそうな場所は多い。しかしこれらを利用するにはいくつか注意すべき点がある。たとえば「夜間駐車禁止」の看板がある場合は夜に車中泊で利用することはできない。出入り口にチェーンなどが設置してある場所は、夜間閉鎖される可能性があるのでこういった場所も避けた方がいいだろう。付近に住宅などがあるときは迷惑を掛けないよう、静かに利用することを心掛けたい。

タイプ別
車中泊のメリットとデメリット

車があればとりあえず車中泊は可能だが、車内空間の狭い車両で就寝する場合は、快適な睡眠が取れるよう工夫が必要になる。以下に車のタイプ別に車中泊の注意点やデメリットを解説する。

セダン

人が乗るスペースと荷室が分かれるセダンは、シートがフラットにならないので車中泊には正直あまり適さない。就寝するときは前部のシートを限界まで倒し、腰付近の隙間を毛布などで埋めてなるべく平坦にするといい。ヘッドレストを外して前席を倒した時、前席と後席の段差をクッションなどでなくすと就寝スペースが広げられる。さらに足元も荷物などで埋めて足を真っ直ぐ伸ばせるようにすると疲労軽減に効果大。

SUV

アウトドア志向のレジャーユースと街乗りを意識した近年人気のタイプ。本格的なRVに比べ普段使いが楽々こなせるコンパクトさが受けている。シートを倒して前部座席に寝てもいいが、このタイプは後部座席の背もたれを前に倒すと、荷室と一体になった就寝スペースが作れる。ただ就寝のたびに荷室の荷物を前席などに移動しなければならないのが難点。できる限り荷物を減らすとこういった煩雑さを少なくできる。

ミニバン

一般的に「3列シートのワンボックスタイプ」とされているのがこのタイプ。車格によってSS、S、M、L、LLに分類され、3列目のシートを畳んだ時のスペースは車格が大きいほど広い。LやLLサイズは、荷室を確保したまま足を伸ばせるフルフラットな空間を作ることも可能。ただフルフラットとはいっても少なからず凸凹があるので、エアマットなどを敷けば完璧だ。車高が高い車が多く車内での移動もスムーズ。

ワンボックスカー

車内空間も荷室も広いこのタイプは、一般的なマイカーというカテゴリーの中では最も車中泊に適しており実際、キャンピングカーのベース車両にもなっている。床面がフラットな車種が多く、マットを敷けばかなり快適な睡眠が得られる。後部の荷室に2段ベッドを設ければ、家族4人での就寝も可能。下段に荷物を収納し、上段を就寝スペースに当てれば、釣りの遠征で荷物置き場に困ることはほぼない。

ステーションワゴン

SUV同様、荷室と座席が空間的につながっており、後部座席を前に倒せば広い就寝スペースを確保できる。荷室長が長い車種なら足を伸ばしても頭と足元に余裕があり、就寝時に窮屈な体勢を強いられることがない。ソロ車中泊の場合は荷物の移動も最小限で済み快適だ。ただ車高がそれほど高くないのでヘッドクリアランスが保てず、車内で動きづらい欠点がある。半面、重心が低くミニバンなどよりも走行性能が高い。

軽自動車

「小さいから車中泊なんて無理だろう」と思っているなら認識を改めた方がいい。国内で最も売れているこのカテゴリーは近年、広々とした車内空間をアピールするものが多く、ソロなら十分快適に車中泊できるモデルも少なくない。車中泊を念頭に置いたモデルは快適な就寝が可能だ。半面、車中泊はせいぜい大人2人が限界で、クーラーボックスなど釣り道具を外に出さなければならない必要が生じる欠点がある。

車中泊に役立つ便利グッズ3選

快適な車中泊には便利グッズも欠かせない。以下にあると重宝する車中泊便利グッズを紹介する。

❶遮光カーテン

外からの視線をシャットアウトできるカーテン。遮光するタイプがお薦め  車外からの視線を遮るカーテンは車中泊の必需品といっていい。車内ルーフの内張にカーテンレールを設置して自作してもいいし、自作が面倒なら市販品を購入してもいい。

外からの視線をシャットアウトできるカーテン。遮光するタイプがお薦め

❷マットレス

倒したシートの隙間を埋め、適切なクッション性を備えるマット類は、快適な睡眠を得るために欠かせない。エアマットやウレタンマットなど種類があり、寝心地や肌触り、梱包サイズ、価格などを考慮し自分に合った物を選ぼう。

マットレスがあれば就寝の快適度がぐっと上がる

❸ランタン

暗い車内を照らすのにルームランプだけでは心許ない。お薦めは電池で程よい明かりが確保できるLEDランタン。狭い車内では明る過ぎるランタンは不要。前後に2つ吊せば車内全体を照らせる。火事や一酸化炭素中毒の危険性があるガスやガソリン使用のランタンはNG。

車内の照明に最適なランタン。明る過ぎないのがポイント