先日、日帰り釣り体験レディースツアーが留萌港沖堤で行われた。昨年も同じ場所で同じ時期にツアーが行われたのだが、そのときに比べると、釣果はダウンした感が否めない。この日の留萌周辺は、昨年同時期より海面水温が約3度も高く、昨年はあれだけ釣れた良型ガヤが、水の冷たい深場へ移動してしまったのだ。晴天でかつ日中の釣り、というのも追い打ちを掛けた。そんな悪条件にも関わらず、26人中、ボウズが1人だけだったのは奇跡的。これもひとえに、あの極暑の中で一生懸命釣りに励んだ、参加者の頑張りによることろが大きい。しかも彼女たちは例外なく、カメラを向けるとニッコリほほ笑んでくれるのだ。今回ほど、普段の取材との違いを痛感させられたことはない。

普段の取材では、取材対象の大半は男性である。中心はだいたい40代から70代まで。彼らは、魚が釣れていると機嫌がいい。釣れればうれしいのは、釣り人共通の感情だから当然だ。しかし問題は、今回のツアーのように、あまり釣れないときの反応である。釣れていないから、当然、彼らは不機嫌だ。そんなとき、「釣れてますか?」などと声を掛けようものなら、チラと一瞥をくれただけで振り向きもせず、「釣れてない」と不機嫌な声色で返してくる。

しかし、これはまだいい方。背中越しに声を掛けた途端、まるで歌舞伎役者が大見得を切るように大げさに振り返って私をにらみ、「アァ? なんも釣れてねえよ!」と吐き捨て、ついでにツバもペッ!と吐き捨てられたことがある。ああ、ツアーに参加してくれた女性たちの天使のような優しい笑顔に比べ、なんとまあ下品で憎たらしいんだろう。

もちろんこんな非常識な人はごく一部だが、そんなとき、ツアーに参加してくれた女性がこの人の隣で笑顔でいてくれただけで、きっと対応は変わっていたはず。あの笑顔には、おじさん釣り師は誰でも、もうメロメロの秒殺ノックアウト状態になってしまうのだ。釣れない釣り場特有の、あの重苦しい雰囲気をがらりと変えてくれるもの。それは1匹の大物でも、100匹の大漁でもなく、たった1人の釣りガールかもしれない。
(平田 克仁)