釣れない原因を考える
釣りは魚を釣るのが目的です。魚が釣れたときの喜びは何物にも代え難いものがあります。
でも現実には毎回そう上手く釣れるとは限りません。ですが、釣れない原因が釣り人自身にあったとしたらどうでしょう。
自分が知らず知らずのうちにやってしまった行為が原因で、釣れたはずの魚をみすみす逃がしているのだとしたら…。
もしも近くに釣り人がいたら、その人のチャンスをつぶしている可能性だってあるのです。他の人にとっては迷惑以外の何物でもありません。
むやみに立ち込むとチャンスを逃す
例えば湖のルアーフィッシングで、先行者が湖に立ち込まずに波打ち際から釣っている時に、そのすぐ横でいきなり立ち込んで釣るのはマナー違反といえます。
岸寄りを回遊する魚を狙っているのに、水面に釣り人の影を落としたり、立ち込んだりすれば、気配を感じて魚が寄ってきません。こういったケースではなるべく先行者の釣りを尊重するべき。
サケやカラフトマスを釣るときも一緒です。サケやカラフトマスは早朝に岸寄りを回遊する習性があります。ウエーダーを履いて無神経に海に立ち込むと、せっかく岸寄りした群れを遠ざけてしまいます。
場合によってはトラブルの原因にもなるので、こういった行動は慎んだ方がいいでしょう。
仲間の危機を察知する能力
釣り場で魚をさばくときは水くみバケツが必須アイテムですが、魚の血液などで汚れた海水をそのまま海へ捨てるのも、魚を遠ざけている可能性があります。
ある研究によれば、フナやコイは傷ついた仲間の傷口から流れ出した物質を感知すると、警戒心を抱くそうです。同族が傷つき、生命の危機に瀕しているかもしれないのだから、本能的に自身にも危害が及ぶ可能性を察知しているのです。
現に一部のベテラン釣り師は、釣ったホッケを血抜きして一時的に入れておく水くみバケツの海水はその場に捨てず、少し離れた場所に捨てています。彼らはホッケの血が混じった海水をその場に捨てると、魚が逃げてしまうことを経験的に知っているのです。
イカも同様に、危機を察知した時に吐き出すイカ墨が仲間の警戒心を呼び起こすので、エギのカンナバリなどに付着したイカ墨は小まめに取り除いた方がいいでしょう。
優れた魚族の視覚能力
夜釣りではライトが必須ですが、近くに釣り人がいる場面でいきなり海面を照らすのもマナー違反です。魚類は、地球上のあらゆる脊椎動物の中で最も視覚的な能力に優れ、光に対して敏感に反応するからです。
脊椎動物は、色を「錐体(すいたい)オプシン」、明暗を「桿体(かんたい)オプシン」と呼ばれる視物質で知覚します。色を知覚する錐体オプシンは4種類ありますが、両生類は3種類、哺乳類は2種類など、種によって保有するオプシンの種類に差があります。
その中で魚類は4種全ての錐体オプシンを備えており、しかも1種類につき異なる2つのサブタイプを有しています。魚類だけが全ての色型で多様な色覚を発達させてきたのです=表参照=。
他の種族が知覚しづらい色も、魚類ははっきりと認識します。そんな優れた視覚を持つ魚に対して、いきなりライトで海面を照らして無用な刺激を与えるのは得策とは言えません。
魚が光に集まる3つの理由
ただし投光器や集魚灯を使うのが前提の釣りは話が別です。ニシンやイワシ、サバ、サンマ、サヨリ、イカなどは光に集まる習性があるので、ライトで海面を照らして釣る方が効果的です。
魚が光に集まるのは、「エサのプランクトンが集まるから」「本能的な好奇心」「生態的に最も適した明るさを求めている」という3つの説が有力です。
その一方で、ソイ類は光を嫌う傾向があると考えている人が少なからずいて、特に大型になればなるほどその傾向が強いと言います。
もしも夜の港や磯場でソイを狙っている人がいたら、その近くでは不意にライトで海面を照らさないよう配慮した方がいいでしょう。