地元にいると気が付かないが、実は北海道は運転マナーの悪い地域なんだそう。車で走らないことには仕事が始まらない私は、そんなマナー違反に遭遇する確率がとても高い。そんなとき私は「ちゃんと安全確認しろこのイカが!」とか、「そんなタイミングで出てくんじゃねえこのタコ助が!」などと悪態をつくのだが、セリフにいちいち水産物の名前が入るのは職業病ではなく単に下品なだけである。そこで今回は自戒の念を込めつつ、私がよく見るマナー違反の例を挙げて読者のみなさんには他山の石としてもらいたい。

 ここ数年で急に増えたのがトンネル内を無灯火で走行するケース。運転に支障がないからライトの点灯を横着するのだろうが、こんな車が前にいたらもう最悪。トンネルで前の車がはっきり見えないから、必要以上に長く車間距離を取らないと危なくてしょがない。しかし「トンネルの出入り口の前を横切る歩行者からは無灯火の車が見えていない」という重大な危険に運転者自身が気付いていない点こそ強調したい。わが道を行くマイペースでいつも迷惑がられるこんな外道のような運転手に出会ったら、私はこうつぶやくのだ。「だから危ないんだってばこのエゾクサウオが!」。

 このほか「右折レーンを進み交差点直前で直進レーンの左の車列に割り込む」というマナー違反には、ルアーを猛然と追ってきたアメマスが目の前でプイッと方向転換する様子から「なんて身勝手なんだわがままアメマスめ!」とやや舌をかみそうな感じでヤジり、「追い抜きできない状況なのに前車にぴったりとくっついて常時チャンスをうかがう」といった超ウザイ車には、まるで大型魚のクリーニングを行なう小魚を連想させることから「ウザイんだってこのホンソメワケベラが!」とほとんど知りもしない魚の名前でののしるのである。

 もちろん悪質なマナー違反を犯すドライバーはごく一部。皆さんはぜひイカだタコだエゾクサウオだアメマスだホンソメワケベラだと私にヤジられないよう安全運転に努めて下さい。もちろん私自身も…。
(本紙・平田 克仁)