「あ~あ驚いた」というセリフで牧伸二のウクレレ漫談を思い出す人は、紛れもなく昭和世代である。そんな昭和世代が、ちょっとひょうきんな感じを出しつつ、驚いたことを表現する際に使う言葉として「ぎょっ!」という感嘆詞がある。平成の今ではすっかり死語となり、現在ではタレントで某大学の准教授というさかなクンくらいしか使う人を見かけないが、彼の場合は「ぎょぎょっ!」もしくは「ぎょぎょぎょーっ!」なので厳密にいうと同じではない。しかも、彼の「ぎょ」は明らかに魚を意識した「ぎょ」であり、漢字で書けば「魚魚っ!」もしくは「魚魚魚ーっ!」。それに対し本来の「ぎょっ!」は、中国の『敔(ぎょ)』という楽器に由来しているそうだから、彼の「ぎょ-」は本質的には正しい使い方とはいえないようだ。

 ところで最近、私も「ぎょっ!」となる光景を目撃した。そこは普段から釣り人くらいしか利用者のいない、とある岬の駐車場なのだが、ある日、ガラ空きのその広いスペースの真ん中に、なぜか靴が1足ぽつんと揃えて置かれていた。無人の駐車場にきちんと揃えられた靴が置かれた光景は、ちょっと不気味だ。これがもしビルの外付け階段の踊り場だったなら、間違いなく飛び降り自殺である。だがそこは単なる駐車場である。「さて、これは一体何だろう。気持ち悪りぃなあ」と思いながらそのときはそのまま駐車場を後にしたのだが、後日、それが何だったのか身を持って知ることになる。

その不可思議な光景に出くわしてから数日たったある日の夕方、納竿直前に珍しく良型のサクラマスが釣れたため、興奮冷めやらぬ状態で車へ戻って来た私。すっかりのぼせていたのか、脱いだスニーカーを車の下に置いたことをこのとき、すっかり忘れていた。だから、普段から常備し履き慣れている長靴に足を通しても、何ら違和感はない。スニーカーのことを思い出したのは、100km以上離れた自宅に到着する目前だったのだからもう手遅れだ。翌朝、急いでそこを訪れると、何と先日、例の駐車場で見たのとそっくりな光景が…。ぎょぎょぎょーっ!! (平田 克仁)