後志地方では間もなくサクラマスのライセンス制が始まるが、4kgを超える大型のマス、「板マス」と呼ばれる至極の1匹を手にするには、それなり準備とテクニックが必要だ。
(林 誠)

板マスゲットはしっかりとした準備から
日本海のサクラマスが間もなく本格化するが、私がたびたび訪れる神恵内村川白沖は胆振沖などの太平洋よりもポイントの水深が浅く、よりイージーに釣れ、サイズもいい。3月に入ると3、4kg台の大型も視野に入る魅力的な海域だ。ただ水深が浅いとはいえ、マスのジギングで定番のスローピッチジャークジギングは、釣り方がマッチしないと釣果に差が出るのも事実。半面、しっかりとした準備があれば、板マスを手にできるチャンスは大いに広がる。

ロッドは水深とジグのアクションで選ぶ
スローピッチジャークで使用するロッドは専用が好ましい。水深が40〜45mで、タナが水深20mよりも浅く、時には5㍍のタナで釣れることもあるため、その水深に合ったジグをコントロールできるロッドが最適だ。私は150g前後のジグを使用する場合、ディープライナー社のロッド、ロジカル#0を愛用しておりく、さらに軽い100g以下のジグで水深の浅いところを攻めるなら、ロジカルビット#2、#3を選ぶ。
長さは好みによるところが大きいが、ロジカル#0シリーズは55(1.7m)、60(1.8m)、70(2.1m)をラインアップ。55は、より繊細なショートピッチジャークが可能で、魚とのやりとりは短い方がやりやすいと思う。70は大きなジャークでジグをアピールでき、フォールも55より長い時間、演出が可能。60は55と70の中間的なスペックだ。その日のタナを素早く探したいときは70を、活性が低くジグをタナに長く留めたいときは55を選ぶなど、使い分けるのもいい。

両軸リールはロープロ型と丸形の2種類
リールは、スピニングリールにしても両軸リールにしても、PEラインが100mほど巻ける物であればいい。最近カウンター付きの両軸リールが主流になりつつあるのが、川白沖はポイントの水深が浅いため、ロープロ型でも疲労感はあまり感じない。
それでもロープロ型は丸型の両軸リールに比べると、ハンドル1回転の糸巻き量が少なく、丸型よりも多めにハンドルを回す必要がある。ただ1回転の糸巻き量が少ない分、より細かく繊細にタナを探れる利点がある。
どちらのタイプであれ、メリットとデメリットがあるので、ロッドとの組み合わせや、自分の釣り方に合ったリールを選ぶといい。ただし何mでヒットしたのかが一目で分かるカウンター付きリールは、タナを効率よく攻めることができる。
この他、リールにはギア比の高いハイギア、ギア比の低いローギア(パワーギア)といった種類があり、これらもロッドとの相性やその時の状況で選ぶのがベスト。
例えば、ジャークで反応が良く、ジグをもっと横に飛ばしたい時や、ジグの回収スピードをあげたい時はハイギアを、活性が低くジグをあまり横に飛ばしたくない時や、ショートピッチで細かく探りたい時はパワーギアで、といった使い分けをする。
私がメインで使っているのは丸形のSOM(スタジオオーシャンマーク)社ブルーヘブンL30HIで、カウンターこそ付いていないが感度が抜群に優れており、海中の情報をハンドルを通してアングラーに如実に伝えてくれる。



細いラインのメリットとデメリット
メインラインは胆振沖と同様にPE1~1.5号で、メートルごとに色分けされている物が使いやすい。カウンター付きリールであれば単一カラーのPEラインで問題ない。
ラインは細ければ細いほどジグがナチュラルに動き、持ち前の性能を十分発揮するが、ラインが細い分ラインブレイクの可能性が増したり、魚とのファイトしているときに他の人とオマツリしやすくなる欠点も。
そのため4kgオーバーの大物が多数上がるこの海域では、魚とのやりとりによほど自信が無い限り、ラインは上記の強度を参考にしていただきたい。
リーダーは、4〜6号のフロロカーボンラインを使用する。メインライン同様、細ければ細いほどジグはよく動く半面、ラインブレイクの可能性は増す。スローピッチジャークのリーダーはフロロカーボンで、ナイロンラインはあまり使用しない。
特にサクラマスジギングにおいては、ロッドやリールを介して伝わる情報を通じて魚のいるタナを発見しなければならないため、フロロカーボンの方が釣果につながりやすい。

ジグの肝はスライド幅とフォールアクション
ジグは、アピール力のあるロングまたはセミロングがシーズンを通して有効。ジグによってスライド幅やフォールアクションが異なるので、その日の状況に合わせて変えていこう。
基本的には捕食されているベイトや、ベイトの動きに合わせてジグを選択するのがセオリー。活性が高く、ジャーク時に前当たりが出たり、バイトがあった場合は、スライド幅のあるジグの中でも沈下速度の速いものを選択するといい。
フォール時の反応が多いときは、まずどういったフォールに反応するかを探ろう。弱ったベイトが群れから外れ、ゆっくり落ちていくようなフォールに反応が出るのであれば、ヒラヒラしたフォールとショートピッチジャークを組み合わせてジグをその場に留める演出が有効。
弱ったベイトがきりもみ状態で逃げようとする動きに似た、ハイピッチショートジャークやスパイラルジャークをフォールで演出するなら、スパイラルフォールが得意なショートジグで前後のフックセッティングを変えるなど、その日の当たりパターンを探すのが賢いジグの選択方法だ。
カラーは、早朝はグリーン系のジグに反応が良く、日が高くなるとオオナゴカラーなどのナチュラル系に反応が多い。スローピッチジャークでゼブラカラーのジグは必須アイテムの1つだ。
私がパイロットルアーとして真っ先に使うのは、ディーパーズファクトリーのSPY-N(スパイナロー)のゼブラ系グリーン。これでジャークやポーズからのバックスライドなどを一通り試し、それでも駄目ならジグを交換するようにしている。


おろそかにできないフックの選択
サクラマスジギングにおいて誰しも経験するフックアウトによるばらし。これも少し工夫するだけで軽減することができる。私が主に使用するフックは、がまかつのアシストフック「近海FINE3/0ロング」で、アシストラインにフロロカーボンラインが入ってないタイプをフロントとテールにセットしている。
このフックは軽量でナノスムース加工が施されており、非常に刺さりがいい。サクラマスの当たりはいくつか種類があり、「カツン!」と硬質な前当たりの後で食ってきたり、フォール中にひったくられたり、魚体や尾ビレをジグにぶつけてきたりなど、さまざまなパターンが存在する。
いずれにせよナノスムース加工が施されているこのフックは、カーブポイントでありながらストレートポイント並みに刺さりが良く、バーブレス並みに深く刺さる。しなやかで柔らかいアシストラインが、軽量なこのフックの動きをさらに効果的にしているようだ。ただ軽量な分フックが伸びやすいので、釣れるたびにゲイプが開いていないか確認した方がいい。
その他、私はエゾハチのツインフック「ささらさる」の#1、#1/0を使うことが多い。このフックはささめ針社のシャウト!TCスパークを使用しており、これもフッ素加工が施されているので刺さりがいい。フックの動きをさらに良くするため、ティムコのディバーブプライヤーを使ってアシストラインをしごき、柔らかくしている。これをするかしないかで、ばらす数が変わってくるので、ぜひしごいてから使ってほしい。
フックを自作する人も、アシストラインはフロロカーボンラインを使っていないソフトな物をお薦めしたい。注意したいのは、フッ素加工が剥がれたとき。こうなると刺さりや貫通力に悪影響が出るので、まめにチェックしてコーティングが剥がれていたらすぐ新品に交換しよう。


アシストラインで変わるバイト
市販でも自作でも、アシストラインの長さはジグの動きやバランス、ばらしの確率に関わってくる。長さを調整する指針は、ジャーク時にもう少し横にスライドさせたいときや、ヒラヒラとフォールする時に当たりが多い場合は、テールのアシストラインを長くする。
ジャーク後のフォールで素早くバックスライドさせたり、切り込むようなフォールを効果的に出すようにするには、フロントのアシストラインを長くする。ジグのバックスライドで食ってくるときはフロントフックのヒットが多いので、テールよりもフロントのアシストラインを長くする、といった感じだ。
アクションは、通常のワンピッチジャークやショートピッチジャークも有効だが、バックスライド主体に攻めたいときはジグを暴れさせないようにゆっくりとリフトし、スッとフォールしてバックスライドさせるといい。このとき、冒頭で記した150gよりも重いジグが一層効果的で、狙い通り食ってくることが多いので覚えておきたい。
