現在、数千万種とも言われる地球上の生物は、元をたどればすべてバクテリアに行き着くと言われていわれています。バクテリアが誕生したのは深い海の熱水噴出口付近とする説が現在は有力。地球最初で最古の生命は、どうやら海から生まれたようです。この小さな生命体が46億年分の進化と生物学上の分化を繰り返し人類へたどり着く訳ですが、私にはこれがどうにもピンときません。“進化”というものが直感的に理解できないからです。
野生の世界は弱肉強食で、それは海も同じですから、食物連鎖の下位にいる多くの魚は敵から身を守るために、生息環境に合わせて目立たない色や模様の保護色になっています。例えば砂地にいるカレイは、表側(有眼側)が砂粒を散りばめたような模様をしていて、じっとしているとなかなか見つけられません。サケやカラフトマスなどの魚の背中が暗い色をしているのは、天敵の鳥に見つからないよう、上空から見た時に海に溶け込むためだと言われています。これらはすべて進化ですが、魚自身が「砂に合わせて模様を変えよう」「鳥に襲われちゃかなわないから背中を暗い色にしよう」などと考えるでしょうか。仮に考えたとして、世代を重れば都合よく色や模様が変わるのでしょうか。
これが習性的な進化ならまだ理解できます。同じ種が何千年、何万年も「敵が来たら岩陰に隠れる」といった行動を繰り返せば、その情報は世代を重ねるごとにより深く塩基配列としてDNAに刻まれ、やがて習性として昇華することはあるでしょう。しかし色や模様に関してはどうか。私にはとても有り得そうに思えません。
そういえば今が旬のカラフトマスも変わった進化を遂げた魚、と言えなくもありません。カラフトマスは約年で成魚となり、奇数年に生まれたものと偶数年に生まれたものは1年ごとに交互に母川へ回帰するため、両者には遺伝子的に混ざる機会がありません。これは環境の激変などで奇数年魚が絶滅しても、偶数年魚が生き延びるための『生き残りを賭けた種の戦略』と聞いたことがあります。しかしこれも保護色と同じ。どうしてそうなったのか私には理解不能です。
果たしてどういうメカニズムで進化を遂げるのか——。私の「眠れない夜」は続きそうですが、さて、私たち“釣り人の進化”はどうでしょう。各地の釣り場で異口同音に聞かれる「ゴミを捨てる」「釣り場を占拠する」「迷惑駐車をいとわない」といったマナー違反、モラル欠如を指摘する地域の声、声、声。魚の進化のなぞを解く前に、もしかしたら釣り人の側の進化が最も必要とされているのかもしれません。
(平田 克仁)