仕事柄、車に乗っている時間が非常に長い。そんな長時間のドライブに欠かせないのが私の場合、音楽だ。音楽は、ナビのハードディスクにデジタルのファイルとして記録されている。世の中にあふれる音楽は、今やほぼすべてがデジタルなのだ。

しかしつい最近、約30年振りに「アナログの音」に触れる機会があった。母親が、実家で長年ホコリをかぶっていたレコードプレーヤーを処分するというので譲り受けたのだ。コンセントにプラグを差し込むと、ちゃんと通電するし、ターンテーブルも回る。しかしトーンアームの先のヘッド部が丸ごとどこかへ消えていた。

早速ネットでヘッドシェルとカートリッジ、レコード針のセットを探してみる。「今どきこんな物が売られているのだろうか?」と半信半疑だったが、どっこいちゃんと売られていた。デジタル全盛の今もそれなりの需要があるよう。価格も割とリーナブルだ。

早速レコード盤に針を落としてみる。「プチ…プチ…」。ちょっと背筋がゾワゾワするくらいの懐かしいノイズが耳に飛び込んでくる。郷愁を誘うこの雑音で、アナログ音源の掘り起こしにすっかり火のついた私は、レコードを片っ端からデジタル化することに。レコードプレーヤーとパソコンをUSBでつなぎ、アナログ音源をデジタルファイル化する製品もネットですぐに見つかった。

こうなるともう止まらないのが、中途半端に凝り性な私の性。よせばいいのに、車庫の奥に眠っていた大量のカセットテープにも手を付ける。幸い実家に処分寸前のカセットプレーヤー付きコンポがあり、これも譲り受けた。そんな訳で、もともと狭い私の部屋は、レコードプレーヤーとレコード盤、不必要に大きなコンポ、段ボール箱3つ分もある大量のカセットテープ、それらの機器同士をつなぐ入出力ラインが入り乱れ、足の踏み場もない状態。

もうすぐ大晦日だというのに、この乱雑極まりないカオスな部屋が整頓される見通しはまるで立たない。来年、雪が解ける頃までには何とかしたいと思ってはいるのだが、近所の中古レコードを扱う店でアナログレコードを物色しているようでは、予定はあくまで予定のままになりそうである。
(本紙・平田 克仁)