アフリカに生息していたサイの仲間、キタシロサイが絶滅の危機に瀕している。生息していた、と過去形なのは、野生種はすでに絶滅しているからだ。つい先日、チェコの動物園にいた雌1頭が死んだため、地球上に生存しているキタシロサイはわずか4頭だけ。絶滅は避けられない情勢だという(※2024年2月現在、残っているのは雌2頭だけに。事実上、絶滅が避けられない情勢となっている)。
長年繰り返される内戦や紛争で生息地域が減ったことや密猟が原因だが、結局どちらも人間の所業である。だが絶滅の危機に瀕しているのはキタシロサイだけじゃない。米スタンフォード大学など専門家の研究によると、地球では現在、6600万年前に恐竜が絶滅して以降、最も速いペースで生物種が失われているという。ここでも主な原因はやはり人間であるようだ。
そんなニュースを目にしていたら、ふとサケの先行きが心配になった。度重なる河川改修や遡上不能な堰堤の設置で、すでに多くの産卵場が失われている。イルカやトドなど天敵の脅威から逃れ、約4年の長旅をへて命からがら故郷の川に帰って来ても、河口に仕掛けられたウライで行く手を阻まれ一網打尽だ。しかもその大半が人の手によって放流された養殖魚である。果たして今、道内の川に上る天然魚、産卵に適した環境のある川は一体どれくらい残されているのだろう。もしかしたら天然魚はすでに死に絶えているかもしれないと思うと、釣り人としては複雑な気分になる。
毎年夏がくるといよいよ道内釣りシーン最大のお祭り騒ぎ、サケの季節がやってくる。神経をすり減らす得意先への気遣いや、日常的な上司の嫌がらせなど、人間社会は日々ストレスとの戦いだが、ぜひサケとのファイトでそのストレスを発散してほしいと思う。
ただそのサケも、人間から受ける多大かつ多様なストレスにさらされるほど、絶滅の危険性が高まることを頭の片隅に入れておいてほしい。そうすればきっと釣り人による過剰なキープや、資源が枯渇するまで捕り尽くすような計画性のまったくない漁業活動など、サケに対する負の作用が減っていくはず。それはすなわち将来にわたってサケ釣りが楽しめる、ということにもつながる。
もちろん利益を得るのは釣り人だけじゃなく、道内に住む人々がきっとなにがしかの恩恵を受けているのだろう。そういう意味では、サケという魚は単なる釣り物ではなく「北海道の宝物」と言えるのだ。
(平田 克仁)