「釣り点描」一覧
つりしんコラム
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知らぬが仏
釣り場で隣の人に軽くあいさつしたあと、何気ない会話を交わすうちに話が弾む、というのは誰しもきっと一度は経験しているはず。ただ、話の弾んだ相手次第では少々やっかいな事態になることもある。 「よく釣れましたねえ」「ああホントによく釣れた。ここのチカは一夜干しにすればとおぉぉぉーってもウマイんだ」と地元のチカに郷土愛を示すのは隣で釣っていた80歳前後のおじいさん。「おおそうだ、ちょどどあるから食べて…
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ニュートリノで宝くじは当たるか?
先日、世紀の大発見があった。CERN(欧州合同原子核研究機構。通称セルン)の実験で、ニュートリノという素粒子が、光よりも速いことが実証されたのだ。「で、それがどうしたの?」と思われる人がもしかしたらいるかもしれない。そんな本紙読者に対しては「今までサケだと思って釣っていた魚が実はリュウグウノツカイだった!」くらいインパクトのある実験結果だと言ったら、理解してもらえるだろうか(かえって分かりにくい?…
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男の牙城
「男くさい分野」への女性の進出がめざましい。たとえば釣りガール。昔は「男の趣味」といえば、まっ先に候補の1つに挙がるのが「釣り」だったような気がするが、近年はそうとばかりも言い切れない。昨年をもって休止となった本紙主催のレディースツアーに同行していたこともあり、その辺りの事情はつぶさにかんさつしていたので肌感覚をしてよく分かる。参加者はもとより、釣りがしてみたい、という女性たちの潜在的なニーズは、…
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それって不要じゃない?
周囲をしげしげと見つめてみると、改めて「無駄だなあ」というものがたくさんあることにげんなりする。 例えば交通安全を促す標語の看板、ノボリの類いがそれだ。よくある「運転中に携帯電話を操作しちゃ駄目」的なものには、いつも矛盾を感じる。運転に集中しろといっておきながら、看板に注意をひきつけるのはおかしくないか?これではまるでアニメのお姫様に扮しドレスで着飾ったコスプレ好きの中年が、「オウ、こっち見てん…
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ラッキーフィッシュ
あっという間に年の瀬が迫った。もう師走である。師でさえも走り回るほど急がしいのが師走なのであって、やっぱり誰も彼もそわそわと落ち着きのない様子で忙しい。周りの状況が忙しいので忙しくないのに忙しそうな人もいるが、それもまた忙しい師走ならでは。師走は忙しいのだ。 元気に過ごすにあたっては、年末ジャンボで大当たりの幸運などというものを引き当てれば大いに元気でいれそうだが、本紙つりしん第438号の連載コラ…
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北の宿から
釣り人を取材する、という仕事に就いてもう何年にもなるが、道内の港の9割は制覇していると思う。そんな日常なので、地方での取材は宿を利用することがしばしば。そこで今回は、そんな宿で遭遇した「食」に関する困った体験談を二つほど紹介しようと思う。 とある宿でのこと。ここでは地元で獲れる特産のエビが夕食の膳に並んだのだが、そのエビが一瞬動いたような気がして小鉢を注視する私。すると、膳を運んできた仲居さんが…
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束の間
深夜0時を過ぎた知床の漁港には人影もなく、静寂に支配された闇の中で、街灯の明かりだけが寂しげに海を照らしていた。肌を刺す冷たい空気は体の周りだけが一瞬暖まり、僕の存在を明らかにする。釣り人は魚の釣れなくなった港に用などない。にぎわいは束の間の出来事。 漁のおこぼれにあり付くためにすみついた野良猫が、エンジンの暖かさを求めて車の下に潜り込もうとする。10月中旬というのに夜はもうとても寒い。オマエは冬…
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ず太い奴ら列伝
出版業界に身を置くようになってそれなりの年月が経過した私だが、その取材遍歴の中でもひときわ強烈な記憶として大脳のひだの奥深くに刻み込まれた「ズ太い奴ら」がいる。 冬、取材が不調に終わった私は、急きょ近くの宿に泊まり明日のチャンスをうかがうことにした。ところが、どこにでもありそうな地方の小都市にも関わらず、目ぼしい宿はいつもの工事関係者で満員だ。単なる浅はかなイメージだけで、「まったく税金を無駄使い…
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逆さまルアー
「隣に入ってもいいが」と声を掛けてきたのは、ガッチリした体つきで180cmを超えていそうな長身の男。少しかすれ気味の野太い声は、夜明け前の暗さの中ではかなり威圧感があり、断わることなど許されない雰囲気だった。間もなく夜が明け、サケたちとのバトルが始まる。 「どうぞ、どうぞ」少しばかり窮屈だが、むげに断わるわけにもいかない。いや、それ以上に彼のガタイのよさに腰が引けた僕には、口が裂けてもいやとは言え…
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娘からのメール
「明かりを消してテレビだけになった薄暗い部屋で『オレは家族全員が死ぬのを見届けてから死にたい』と、突然おやじが言ったからビックリした。ビールを飲んで赤くなっているはずのおやじの顔は、テレビの光で青白くて寂しそうだった」 釣りなんて当たりが止まっちまえばまったく暇だな。磯の周りをうろうろ歩き回ったって、なんか珍しい物が流れ着いているわけじゃないし、すぐに飽きてしまう。潮だまりにイソガニを見つけたとき…
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一人になりたい
つりしんに掲載される釣行写真は、記録的な要素が強い。芸術性がプラスされれば文句なしだが、センスのかけらもない僕にそれは無理というもの。偉そうにぶら下げた一眼レフデジタルカメラは、常に使い捨てカメラのようにシャッターを押すだけのオートにセットしてある。取材は単独がほとんどなので、釣り人が自分のときはオートシャッターを使う。いいオヤジが、誰もいない海で三脚のカメラにニッコリ笑うのはかなり気色悪いが、ほ…
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芋けんぴ
まあとにかく今年の夏は、記録にも記憶にも残る暑い夏だった。影響は緯度の高い国ほど大きかったらしく、隣国ロシアは130年ぶりといわれる猛暑になったそう。あまりの暑さに市民は水辺に涼を求めたが、「シベリアでは、400kmは距離じゃない。プラス40度は暑さじゃない。マイナス40度は寒さじゃない。ウォッカ4本は酒じゃない」という国民性だから、ビールやウォッカをしこたま飲んだ勢いで水に飛び込む人が続出。結果…
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魚心(うおごころ)
魚には「本能」は備わっているが、「心」というものはないらしい。ある学者の研究によれば、大脳構造を持たない生物には、ヒトの「心」に相当するものはないという。だから「哺乳類に心はあっても魚類にはない」という結論にたどりつく。でも釣り人を翻弄するあの狡猾さや用心深さは「本能」だけで説明できるのか。釣るたびに悶え苦しむ表情をされても困るが、どうも私には魚に心があるような気がしてならない。 ところで以前、と…
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罪な魚
3カ月ほど前、サケで有名な十勝地方の港で、こんな経験をした。 肌寒い風が吹きぬけたとある午後、岸壁で釣り人がぽつんと一人、サオを出していた。年は30そこそこ。Tシャツの上に薄手のジャンパーをはおっただけの姿は、6月の十勝にしては明らかに薄着だった。釣れてますか?と彼に声をかける。すると「何が釣れるんですかね?」と逆に聞き返されてしまった。 彼は地元の人間ではなかった。ついこの間まで岩手に住んで…
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緊急事態の宿
道内各地で取材していると、出張先の宿でときたま驚くべき事態に遭遇することがある。以前、ある民宿の玄関に足を踏み入れたとき、いきなり面食らった。吹き抜けの玄関の壁や天井がモゾモゾとうごめくカメムシで埋まっていたからだ。カメムシは部屋の中にもいて、おちおち横にもなれない。確かにリーズナブルだが、いくら安くてもこれじゃ…という感じだ。 虫絡みでもう1つ。とある旅館に泊まったときのこと。そこは大きな露天風…
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30年ぶりのアナログサウンド
仕事柄、車に乗っている時間が非常に長い。そんな長時間のドライブに欠かせないのが私の場合、音楽だ。音楽は、ナビのハードディスクにデジタルのファイルとして記録されている。世の中にあふれる音楽は、今やほぼすべてがデジタルなのだ。 しかしつい最近、約30年振りに「アナログの音」に触れる機会があった。母親が、実家で長年ホコリをかぶっていたレコードプレーヤーを処分するというので譲り受けたのだ。コンセントにプラ…
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夏フェス
先日、初めて「夏フェス」というものに行ってきた。夏フェスとは、アーティストが集まり、それぞれ演奏を繰り広げるライブのお祭りである。2日間にわたって繰り広げられたこの夏フェス。約70組のアーティストが4つのステージに分かれ、朝から晩まで熱のこもった演奏を展開した。私は妻と2人で2日目を観に行ったのだが、私の寝坊で会場入りしたのは夕方。せっかくたくさんのライブを体験できたのに、もったいないことをしたと…
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ヒール・フィッシャーマン
生傷男、銀髪鬼、人間山脈、アラビアの怪人、黒い呪術師…これらの形容詞を並べただけでピンと来るあなたは、おそらく古いプロレスファンだろう。そう、これらはプロレスラーに付けられたニックネームである。生傷男ディック・ザ・ブルーザー、銀髪鬼フレッド・ブラッシー、人間山脈アンドレ・ザ・ジャイアント、アラビアの怪人ザ・シーク、黒い呪術師アブドーラ・ザ・ブッチャー。さらに、これらのレスラーたちには共通点がある。…
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おしゃべりな自販機
毎週、人気のない海沿いを走り、目を皿のようにして釣り人を探す日々を送る私。そんな私のホッとするひとときが、缶コーヒーで一息つくブレークタイムだ。 田舎の国道沿いに広がるモノトーンの雪景色の中、今にも雪に埋まりそうな古びた商店を見つけ即停車。軒先に並んだサビの浮く自販機のディスプレイを見ながらHOTの二文字を探す。が、COLDしかないこともある。こんなに寒いのにHOTがないなんてどういうこっちゃ!ち…
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魚っ!
「あ~あ驚いた」というセリフで牧伸二のウクレレ漫談を思い出す人は、紛れもなく昭和世代である。そんな昭和世代が、ちょっとひょうきんな感じを出しつつ、驚いたことを表現する際に使う言葉として「ぎょっ!」という感嘆詞がある。平成の今ではすっかり死語となり、現在ではタレントで某大学の准教授というさかなクンくらいしか使う人を見かけないが、彼の場合は「ぎょぎょっ!」もしくは「ぎょぎょぎょーっ!」なので厳密にいう…